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アスティへようこそ! Benvenuti ad Asti
15 Maggio 2014

第5回  田舎時間 − ぶどうと共にある暮らし


  高梨真江 



●この丘が、海の底だった頃・・
アスティから路線バスに揺られ15分もすれば、上り坂が続き景色は一変!美しい丘が連なります。「ここはみな500万年ほど前には海の底だったんだ。近くではナガスクジラの化石も発見されているんだよ。」 − この地でぶどう栽培を手掛ける友人が、ある日こんな話をしてくれました。
 
トップ写真:@ロヴェロ農場:草花や果樹も育つぶどう畑周辺、養蜂も行っている
写真下左A博物館−地域の有志が発掘に貢献、今も様々な場所で化石の発見が続く  写真下右:B博物館−色分けされた地域の土壌


現在の海岸線からずいぶんと離れているので、ちょっと信じられないような話ですが、ぶどう畑の造成中などに発見されたクジラやイルカ、貝殻などの化石は、アスティ中心部にある「古生物学博物館 Museo Paleontologico」で間近に見ることができます。土壌の違いはぶどうやワインの個性につながると言いますから、丘の上で、そしてグラスを傾ける時、ちょっと思い出してみてください。

1. ぶどうと共に息づく毎日
●食卓にのぼるワインは、ぶどう畑から

アスティ周辺のぶどう畑広がる丘には、農場内にある住居と家畜小屋や干し草置場が一緒になった「カシーナCascina」と呼ばれるレンガ造りの大きな農場が残っています。その地下には夏場もひんやりと涼しい「カンティーナCantina」と呼ばれるワイン貯蔵庫が広がり、醸造の時季はもちろん、いつも独特の良い香りが漂っています。この地域には家族経営でぶどう栽培・ワイン醸造を手掛ける生産者が多く、旅行者も立ち寄って試飲や購入、また醸造・貯蔵施設や畑の見学をさせてくれるところもあるので、ぜひこの機会に訪ねてみてはいかがでしょうか?    

写真下左Cぶどう畑に広がるカシーナ(農場)  写真下右D葡萄の収獲:急勾配の畑も多く、手摘み収獲が薦められる
 (CD写真提供:Sig. .Bello Franco) 


●余すところの無い、ぶどう
長命と言われる、ぶどうの木。その実は食用や醸造してワイン、アルコール発酵前の果汁は他の果物と一緒に煮詰め「クニャ Cogna」と呼ばれる地域特産のジャム、醸造後に取り出された果皮は蒸留されてグラッパGrappa、冬から春にかけ剪定される蔓(つる)は焚付け用の柴、古株や醸造樽は暖炉に薪としてくべられ、その灰や蒸留後の果皮は畑の肥やしとして再び土に還されます。

2. ワイン作り農場やカンティーナ訪問
●見晴らしの良い丘の麓に広がる「チリオ農場」

アスティから路線バスで南へ約30分。ピエモンテ州内で最もぶどうの作付面積が広いと言われる、コスティリオーレ・ド・アスティ Costigliole d’Astiについては第4回で詳しく紹介しました。この町の中心からさらに車で約10分、最も見晴らしが良いと言われる丘「ブリッコ・ルー Bricco Lu’」の麓に広がる「チリオ農場 Cascina Cirio」のぶどう畑では、お父さんを中心に、家業を受け継ぐルカさん・キアラさん兄妹が、白・赤のぶどう品種から10種類以上のワインを醸造しています。

写真下左Eブリッコ・ルーの丘から、チリオ農場周辺の眺め (写真提供:Cascina Cirio)  
写真下右F同農場:色付き始めたぶどうの実(8月下旬)


地元のお得意さんの多くは、「ダミジャーナ」と呼ばれるワイン保存用大瓶を携えて購入に訪れるそう。ハイヤーなどを利用して周囲の丘を巡るドライブと合わせ、試飲に訪れると良いでしょう。 (「コスティリオーレ・ド・アスティ」については、第4回で詳しく紹介しています。)

●郷土料理のレストランもある「ロヴェロ農場」
アスティ駅前からバスで南へ約10分。街道裏手に入ると、木立ちの美しい開けた谷が広がります。この地で農業を営む「ロヴェロ農場 Rovero」は、5代目のエンリコさんとお父さんの3兄弟が中心となり、主にぶどう栽培を手がけています。

写真下左G様々なグラッパが生まれる、大きな蒸留器 (写真提供:Fratelli Rovero)  写真下右H食後酒やカッフェに数滴たらして楽しむ人もいる、グラッパ  

様々な品種から10種類以上の白・赤ワインを醸造、その後ぶどうの果皮を品種ごとに蒸留し「グラッパ Grappa」などを30種類以上も生産しています。カシーナ向かいの丘の中腹に建つ、カンティーナ。周囲に広がる心地好いぶどう畑を散策しながら、ワインと地域の食文化などについて聴かせてもらうのも、とても興味深いでしょう。

写真下左I毎週末地元客や旅行者でにぎわうレストラン  (写真提供:Fratelli Rovero)
写真下右J優しい味付けが嬉しい、細麺パスタ「タヤリン Tajarin」  

敷地内のレストランではマンマが手掛ける郷土料理のコースと共に各種ワインを味わえるので、より思い出深い訪問に。近くには宿泊施設も備えているので、さらにのんびりと滞在することもできます。

●小さな駅前の、大きなカンティーナ「ベルサーノ」
アスティから列車で南東へ約40分のところにある、ニッツァ・モンフェッラート Nizza Monferrato。鉄道が主な輸送手段だった頃の名残で、各地に畑を持つ大きなカンティーナ「ベルサーノ Bersano」が駅前に建っています。

写真下左K駅舎を出てまさに目の前に立つ大きなカンティーナ「ベルサーノ」   写真下右L貴重な図録や華やかなポスターなどが並ぶ博物館  


ここでは隣接する2つの博物館も見学できるので、時間に余裕を持った訪問を。牛や馬の動力を利用した大型のオリーブ圧搾機や婚礼用馬車のエンブレムなど、かつての農民たちの暮らしぶりが感じられ、ワインに関するポスターなど印刷物のコレクションも豊富。戦で近隣を訪れたナポレオン直筆サインもあるので、お見逃し無く! 
(「ニッツァ・モンフェッラート」については、次回詳しくご紹介します。)

●ワインにまつわる、様々な産業
ぶどうの苗木栽培やワインボトルのエチケット(ラベル)印刷をはじめ、アスティ周辺ではワインにまつわる多くの産業が発展してきました。アスティからバスで北へ15分ほどの「ガンバ樽製作所 Fabbrica Botti GAMBA」は、醸造や熟成に欠かせない樽を製造、各国へ輸出も行っています。

写真下左MNガンバ樽製作所:熟練技術を必要とする樽の製造工程     


敷地内では山と積まれたフランス産のオーク材から、すでに芳香が漂います。火加減によってワインに移る香りなど大きく異なると言う樽の内側のロースト作業や、日本の和太鼓を思わせる大樽も間近に見られる、またとない機会。地下の博物館では、作業工程をより理解できるでしょう。

4. 食の話題や郷土料理のレシピも地域で蓄積
●紙面を飾る「小さなぶどう畑」

おしゃべりが大好きなイタリアの人々。その中心には、いつも「食」の話題があります。アスティ周辺のイベントやレストランなどを訪ねると、食やワインをテーマにしたユーモラスなイラストを見かけるでしょう。手掛けているのは、建築家でもあるアントニオ・グアレーネさん Arch. Antonio Guarene。 毎週日曜の「LA STAMPA」新聞アスティ版ページにも連載があり、紙面を飾る「挿し絵」のことを、イタリア語では「小さなぶどう畑」と同じ、「ヴィニェッタ Vignetta」と呼ぶんですよ!

写真下左O「わが家の昔レシピ集」表紙(Disegno di Guarene)
写真下右P「冗談好き」なアスティ気質が感じられる、グアレーネさんの作品 (Disegno di Guarene)  


●「わが家の昔レシピ集」も出版
ワインと共に発展をつづける、郷土料理。アスティでは町の有志が思い出の味を残そうと、各家庭のレシピを持ち寄った『A CASA DI .. Le ricette “ d’na vota”』 (アスティ方言で、わが家の昔レシピ集)が出版されました。グアレーネさんのステキな挿し絵が彩るこの一冊をお土産に、旅から戻ったらぜひ郷土料理を再現し、この地のワインと共に旅の余韻をじっくり味わってみてください!

5. 町時間・田舎時間
長く厳しい冬、開花と共にあっという間に葉桜を迎える短い春、そして夏至の頃には夜9時頃まで高く明るい夏空の広がる南ピエモンテ。日陰の無い急斜面に広がるぶどう畑での作業は大変厳しく、ぶどう栽培を手掛ける友人らは早朝から畑へと向かい、暑さがピークを迎える頃には十分な昼寝休憩。

写真下左Q収穫後、人気のない葡萄畑に本格的な紅葉が訪れる(写真提供:Sig. .Bello Franco)
写真下右R鐘の音:ゆっくり流れる、静かな田舎時間  

町の人々が帰路に就き、アペリティーボ(食前酒)や夕食を楽しむ頃、彼らは涼しくなった畑へと再び出て、遅くまで作業を続けます。風に乗り遠くまで響く教会の鐘は、時を忘れて作業に精を出す彼らにとって、今も大切な存在なのです。



アスティへようこそ!   著者プロフィール
高梨真江(Takanashi Masae)

個人旅行手配業を経て、2004年初渡伊。アスティ近郊の Costigliole d'Asti (コスティリオーレ・ド・アスティ) でひと夏を過ごし、ぶどう栽培・ワイン醸造「土地に根差して世界とつながる人々の暮らし」に、ひと目ぼれ。この地をもっと日本に紹介し案内したい夢を抱き、その後介護や通勤の合間を利用してイタリア語を独学。現在はアスティにて「地域振興を目的とした観光の講座」を受講し、その修了論文を書きながら畑を訪ね、土地の人にインタビューを重ねるなど「おもしろ地図」を広げる毎日。ある日突然「ひと目ぼれしました、よろしくお願いします!」とやって来た私を優しく受け入れてくれた地域の人々に感謝しながら、ピエモンテ弁交じりの冗談に笑い転げる今日この頃。 個人ブログ「Asti大好きーぶどうと共にある暮らし」 http://lavitaasti.exblog.jp/

データ

Dati

<タクシー、ハイヤー>
アスティの駅前タクシー(第1回のデータ部分参照)、
コスティリオーレ・ド・アスティのハイヤーサービス(ヴァルターさん:340 0574 905)

アスティ古生物学博物館 Museo Paleontologico di Asti (
別称:化石博物館 Museo dei fossili)

Corso Alfieri, 381 ? Asti (0141 592 091) 、Palazzo del Michelerio内、入口は建物右奥1階。
月-木:10-16時、日・祝:10-13、16-19時(冬季午後:15-18時)、金・土休館。
入館料:3ユーロ

■ワイン作り農場・カンティーナなど
チリオ農場 Azienda vitivinicola Cascina Cirio (コスティリオーレ・ド・アスティ)

Strada Fornace, 2 ? Costigliole d’Asti (0141 966 621) 、
http://cascinaciriovinibio.blogspot.it
10日ほど前までに要予約。料金はひとりあたり、2-5名のグループ:30ユーロ、6-10名のグループ:25ユーロ。 畑(天候次第)やカンティーナの見学と、チーズ・サラミ・ドルチェなどと共に試飲できる。

ロヴェロ農場 Fratelli Rovero s.n.c. (アスティ市郊外)
Frazione San Marzanotto, 216 (Localita’ Valdonata) - Asti
Tel: 0141 592 460
http://www.rovero.it/
見学・試飲は、なるべく予約を。ひとり8ユーロ。
宿泊およびレストラン「Il Milin」(金・土のディナーおよび日曜のランチ営業、その他曜日は応相談)は、要予約。食事はコースのみ、30ユーロ(飲み物代込)。
アスティ駅前「Piazza Marconi」から市内循環バス「ASP」の「1 - Loc. Trincere」行で約10分、「トッラッツォ Torrazzo」下車。来た道を戻り2本目の通りを左折後、二又を右に15分ほど進む。マリア様を祭った小堂の先、小さな教会のある建物。時刻表は往復路共に、http://asp.asti.it/servizi/trasporti/trasporti.html内、「LINEA1-1/ RITORNO」の「Torrazzo」参照。 日・祝運行無し。
「Tabacchi」と呼ばれる売店などで往復分の乗車券を事前購入。復路も同バス停から乗車。「1/ -San Marzanotto」行と、お間違え無く!

カンティーナ・ベルサーノ Cantina Bersano (ニッツァ・モンフェッラート)
Piazza Dante, 21 ? Nizza Monferrato
Tel: 0141 720 211
火-土:9:30-12:30、15-19時(土曜は9時から)、日:9:30-13時、月・祝・夏季・冬季(12-2月)休館。 2つの博物館およびカンティーナの見学・試飲は、電話かメールで要予約 enoteca@bersano.it アスティから「アクイ・テルメ Acqui Terme」行の列車、「ニッツァ・モンフェッラート Nizza Monferrato」下車、駅舎向かい。列車は日・祝運休、帰路のチケットは駅舎内売店でも購入可。

ガンバ樽製作所 「ファッブリカ・ボッティ・ガンバ Fabbrica Botti GAMBA」 
(カステル・アルフェーロ)

Via Statale, 110 - Castell'Alfero 
Tel: 0141 405 930
月-金:9-12時、14-17:30、土・日・祝日、8月中夏季休暇あり。樽のトースト作業は、10時頃終了。
見学料金 5ユーロ
メールで要予約 mariella@bottegamba.com
路線バスはリクエストストップで分かりにくいため、タクシーなどの利用をおススメします。

■その他の情報
ピエモンテ・オン・ワイン PIEMONTE ON WINE アスティ観光局などが運営する、地域の一部カンティーナ(ワイナリー)検索サイト。 2014年4月現在、予約無料代行サービス。見学・試飲料や支払い方など、確認を。 http://www.piemonteonwine.it/

VINISSAGE 2014-Vignaioli e vini biologici, biodinamici e naturali」
アスティ中心部が会場の、イタリア各州から生産者が集うワインのイベント
2014年は、5月24-25に開催  
http://www.comune.asti.it/pagina901_vinissage.html
注:ワインボトル持ち帰りの際は、袋や箱の底にガムテープを貼ってもらうと良いでしょう。

「わが家の昔レシピ集」取り扱い店
ティポグラフィア・アステーゼ Tipografia ASTESE(アスティ中心部)

Piazza Medici, 28 ? Asti
Tel: 0141 594 028
月-金:8-12/15-19 (土曜は午前のみ)、日・祝・夏季休業有
約40家庭のレシピがつまった「A CASA DI .. Le ricette “ d’na vota”」は限定印刷。
書店での取り扱い無し。価格25ユーロ。

上記いずれの情報も、2014年4月現在

※アスティへのアクセスなど一般情報は、第一回のデータ部分をご参照ください。  



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