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200周年 ミラノ・ブレラ美術館の楽しみ
 

15 giugno 2009

第3回 ナポレオン像の帰還

石橋 典子


●カノーヴァ作「平和をもたらす戦いの神マルス」
1809年4月、「新王立ギャラリー(Nuova Galleria Reale)」(ブレラ美術館は、ナポレオンがイタリア王だった当時、こう呼ばれていた)の中央の部屋に、高さ3メートル、重さ1.5トン以上のアントニオ・カノーヴァ作、「平和をもたらす戦いの神マルス」と題されたナポレオンの石膏像が運ばれた。それはナポレオンの40歳の誕生日、同年8月15日の美術館開館式典のためだった。カノーヴァが自ら、この重いモニュメントの設置方法の指示をしたという。


ナポレオンがイタリア王となり、首都ミラノの大聖堂で戴冠式が行われたのが1805年。それから1809年までの5年間はミラノが社会的革新を経験した時期だった。ナポレオンは、住民15万人のこの街に新しい風を吹き込み、道路は石畳で舗装され、街灯が燈され、公の馬車サービスが開始し、ドゥオモ大聖堂のファサードが完成した。スフォルツェスコ城周辺の湿地帯を整備し、新しい都市計画で建物が建設され、フォロ・ボナパルテは、何とか散歩もできる道になった。

この石膏像の基になった大理石像は、1802年にナポレオンが、カノーヴァをフランスに呼び寄せ、依頼して作らせたもので、ナポレオンのお抱え彫刻家であった新古典派のカノーヴァは、ローマのアトリエで、ギリシャ神話の神の姿、つまり裸体の英雄の姿、「平和をもたらす戦いの神マルス」で、皇帝を表現しようとした(1803-1806)。左手に指揮棒をもち、右手に「羽のある勝利の女神」がのった玉を持っている。この大理石像は、しかし、ナポレオンがワーテルローの戦いに負けると、英国政府に買い取られ、勝利者ウェリントン公の手に渡り、今も彼のロンドンの私邸Apsley Houseに保存されている。



●美しく蘇った「石膏像」が200年前の同じ場所に
一方、1808年、カノーヴァは、美術学校(ナポリ、ローマのフランス・アカデミー、パドヴァ)へ教材として贈る目的で、大理石像から石膏像5体をヴィンチェンツォ・マルピエーリに作らせ、そのうちの1体が、パドヴァからミラノのブレラに運ばれた。また、ナポレオンの養子でイタリア副王のウジェーヌ・ド・ボアルネが、首都ミラノに置くため、発注した複製のブロンズ像も、この石膏像を型にしてローマで作られた(サンタンジェロ城の大砲が溶かして使われた)。しかし、このブロンズ像は、ミラノに到着してまもなく1814年に、美術館の下の階にある美術学校の倉庫に、石膏像とともに移された。
このナポレオンのブロンズ像が、ブレラの中庭中央に設置されるのは、その後、ナポレオン3世の時代の1859年。それ以後、この像は、ブレラ美術館のシンボルとなっている。
一方、美術学校に移された石膏像は、やがて第5教室、今の装飾科の教室へ移され、玉に乗っていた勝利の女神は紛失した。学校でデッサン教材として使われていたものの、破損が激しくなっていたため、昨年、200年記念のイベントとあわせて、フィレンツェのダニエレ・アンゲッロットの元で修復が行われた。そして、今、みごとに美しく蘇り、200年と同じ場所に戻ってきたのである。


データ

ブレラ美術館
Pinacoteca di Brera

Via Brera 28、20121 Milano
http://www.brera.beniculturali.it/
tel. 02722631 - fax: 0272001140
開館時間 8:30から19:30 (入場は閉館45分前まで)
休館日 月曜、1月1日、5月1日、12月25日
入館料 10ユーロ  年間入館券 20ユーロ

ブレラ美術館 200周年記念 今年のイベント
●1月18日〜3月29日、カラヴァッジョ特別展
●3月19日:ラファエロの『マリアの結婚』修復後のお披露目
●4月7日〜6月2日:ロンバルディアの風景画展(1817〜1822)
●5月5日:修復されたアントニオ・カノーヴァ作のナポレオンの石膏像
●6月11日〜9月20日:初代館長ジュゼッペ・ボッシの時代展
●10月15日〜2010年2月5日:クリヴェッリ展
●11月11日〜2010年1月10日:第1次、第2次世界大戦時代のミラノ(写真展)


石橋典子(Ishibashi Noriko)
東京大学薬学部、文学部イタリア文学科卒。イタリア語通訳、翻訳家、
訳書:「無意識の証人」「眼を閉じて」(文春文庫)。ミラノ在住

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