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新・ヴァイオリンの町クレモナから
15 Luglio 2019

中編 クレモナの歴史を歩く  



  安田恵美子


1.古代ローマ時代に生まれたクレモナ
クレモナが生まれたのは、紀元前218年の事です。カルタゴのハンニバル将軍がローマ領土を攻めにアルプス越えを決行、その攻撃に備えて古代ローマ人により、北イタリアの西から東へと流れるイタリア最長の川・ポー川の北岸にクレモナ、南岸にピアチェンツァが建設されました。

●今も残る古代ローマ時代の遺跡
そうした古代ローマ時代の軌跡が残るのが、前回ご紹介した「ヴァイオリン博物館 Museo del Violino」のあるマルコーニ広場 Piazza Marconiです。この広場の地下に駐車場を建設する最中に、紀元1世紀の古代ローマ時代の邸宅「ニンフの家」が発掘されたため、現在駐車場に取り囲まれた形で、遺跡の一部が保存されています。発掘されたローマ時代の遺品の数々については、2009年に新改築された「クレモナ考古学博物館 Museo archeologico di Cremona」に展示されています。博物館の建物自体が、13世紀の元サン・ロレンツォ教会を利用したもので、奥の方には教会の発掘現場もそのまま残され、非常に興味深い博物館です。
 

写真トップ@美しさではイタリア一とクレモナっ子が自慢する大聖堂広場(左側がトラッツォ、中央がクレモナ大聖堂、右側が八角堂の大洗礼堂  
写真下左Aマルコーニ広場地下駐車場に残されたローマ遺跡   写真下右Bソルフェリー二通りのお洒落なショー・ウインドー前に横たわるローマの舗装道路。上からは見にくいが、道路脇には鉛管が通され、雨水を受けるように出来ていた。  


●ローマ時代の舗装道路も
マルコーニ広場から歩いてすぐの大聖堂広場まで行き、大聖堂を正面に見て左手に伸びるソルフェリーニ通りVia Solferinoを進んですぐ左側に、透明アクリル板で覆われたローマ時代の舗装道路を見る事が出来ます。古代ローマの町には、東西に延びるデクマノDecumanoと呼ばれる道と、それと直角に北南に延びるカルドCardoと呼ばれる道が通っており、碁盤縞の様に道が出来上がっていました。この道は北南を通るカルドですが、わざわざ遠いブレーシャから運んで来た石で舗装されている事から、いかに町の中心を通る主要道路として重視されていたかがうかがい知れます。

2.中世自治都市として発展していったクレモナ
ポー川のすぐ側という地の利を生かし、クレモナは商業的にも軍事的にも常に栄えた町でした。1107年には町を司る聖職者達により集会所として機能すべく大聖堂 Cattedrale が建設され、その約100年後の1206年には町の行政を執り行うための市庁舎 Palazzo comunaleも建設されました。

●市庁舎広場にはクレモナの栄華を反映するモニュメント
正式には市庁舎広場 Piazza del Comune、市民の間ではドゥオーモ広場 Piazza Duomoと言う名で親しまれている町の「へそ」に当たるこの広場では、カッラーラとヴェローナから運ばれたピンクと白の大理石で出来たファサードの美しい大聖堂と、その横のレンガの時計塔としてはヨーロッパ一の高さ(112m)を誇るトラッツォ Torrazzo、そしてそれらと相対する様に配置されたゴシック建築のレンガの市庁舎、間に建てられた八角堂の大洗礼堂 Battistero(全体の調和を図り、大聖堂側は大理石で覆われ、市庁舎側はレンガで覆われています)と言った、まさにクレモナの栄華を反映するモニュメントを一気に望むことが出来ます。(写真トップ)    

写真下左:Cレンガの時計塔としてヨーロッパ一の高さを誇る「トラッツォ」と農民にとって季節を知る導となっていた天文時計 
写真下右:D見晴台まで、全502段の階段が続く「トラッツォ」。


●息をのむトラッツォの上からのパノラマ
お天気の良い日にはぜひトラッツォに上ってみて下さい。北はアルプスから南はアペニン山脈まで見晴らす事が出来、真下にはまるでヴァイオリンのニスの色のような赤レンガ色の瓦屋根で覆われたクレモナの町を眺め渡す事が出来ます。なおトラッツォ内の階段の途中には、1582年より現在まで休む事なく時を刻み続ける天文時計の仕掛けを眺められる、「トラッツォ直立博物館 Museo verticale del Torrazzo」も開館しています。    

写真下右:E見事なパノラマに、疲れも吹き飛ぶ。  
写真下左:Fトラッツォから眺めるクレモナの町並み 


●教皇派対皇帝派の対立から生まれた「新市庁舎チッタノーヴァ」
12世紀に町の規模が拡大されるに伴って、町を囲む城壁も新たに造り直され、その結果以前は城壁外に住んでいた住民達が城壁内に取り囲まれる様になりますと、以前から城壁内に住んでいた聖職者や有力貴族達との間に確執が生じるようになります。当時北イタリアでは、教皇派対皇帝派の真っ二つに分かれて争いが続いており、クレモナの町も旧地区の住民は教皇派、新地区の住民は皇帝派について血みどろの争いが続きました。

   写真下左:G1206年に大聖堂広場に建てられた市庁舎。現在も町の行政が執り行われている。  
写真下右:H新市庁舎として1265年に建てられた「チッタノーヴァ」  


その結果、新地区の真ん中に新たなクレモナ市庁舎が建てられ、2人目の市長が選出された時期もありました。ストラディヴァリが結婚式を挙げたサンタガタ教会の真正面に1265年に新市庁舎として建てられた「チッタノーヴァ Cittanova (新しい町と言う意味)」は、まるで大聖堂広場に建つオリジナルのクレモナ市庁舎のミニ・ヴァージョンのようです。現在は、イベント、演奏会会場として活用されています。

3.ルネサンスの花開くクレモナ
1441年にクレモナ郊外の小さな教会サン・シジスモンドで結婚式を挙げたミラノ公国領主フィリッポ・マリア・ヴィスコンティの一人娘ビアンカ・マリアとフランチェスコ・スフォルツァの治世により、クレモナにも華やかなルネッサンス時代が訪れます。町を美しく整えるための大工事が行われ、無数に建てられた教会内や貴族の邸宅の室内には、クレモナの画家達による美しいフレスコ画や名工達による精巧な木工飾で華やかに装飾されました。現在でも町中には幾つかの貴族の館が残っていますが、残念ながら一般公開はされておりません。 

●大聖堂内の見事なフレスコ画
その一方、町に点在する大小様々な教会の中では、1500年代の巨匠によるフレスコ画や彫像を通してルネサンス芸術を鑑賞することが可能です。特に町一番の権威である大聖堂内は、目の拠り所に困るぐらい見どころで満ちています。中央身廊上の壁面は、20数年かけて幾人もの画家達が描いたマリア(左側面)とキリスト(右側面)の生涯を描いたフレスコ画が絵物語の様に並び、祭壇中央にはB.ガッティによる「聖母の被昇天」、その上にはB. ボッカッチーノによる「父なる神と聖人達」「受胎告知」が配されています。

写真上左I大聖堂正面向かって左上方に描かれた「マリアの一生」。母アンナの結婚、受胎告知、マリアの誕生と続く
写真上右J大聖堂中央祭壇。B. ガッティ「聖母の被昇天」の上には、B. ボッカッチーノ「父なる神と聖人達」そして「受胎告知」が配されている。  


正面入り口を入り振り返って見上げると、天の雷により真っ二つに裂かれたゴルゴダの丘と十字架にかけられたキリストと驚き戸惑う人々の姿が劇的に描かれているフレスコ画が見られます。イル・ポルデノーネの手による力作です。

  写真上K「パラッツォ・バルボPalazzo Balbo」 市立博物館と同じ通りVia D. Ugolani に位置する。  


町を散策していますと、建物の正面玄関が開けられている事も多く、中に入れないながらも前を通り過ぎながら、手前の天井装飾や奥の庭園、噴水等を楽しむ事が出来ます。

4.ファシズム時代のクレモナ
イタリアのファシズムと言いますと、何といってもムッソリーニの名が挙げられますが、実はファシズム時代のクレモナの市長ロベルト・ファリナッチも、ムッソリーニに煙たがられるぐらい強力な力を持つ政治家でした。そうした彼の指揮の下大々的な町の整備が行われ、当時幾つものファシズム建築が建てられました。

●アーケード建築「ガッレーリアXXVアプリーレ」
前回ご紹介した通り、1930年代にはストラディヴァリ、グァルネリ、アマティ等の工房があった工房地区が一掃され、現在まで残っているアーケード建築「ガッレーリアXXVアプリーレ(当時は「ガッレーリア23 マルツォ Galleria 23 Marzo」と呼ばれていました)が建てられましたし、現在ヴァイオリン博物館の入っているパラッツォ・デッラルテ Palazzo dell’Arte も、元々は地域の芸術活動を振興するために建てられたファシズム建築でした。その他ストラディヴァリ広場 Piazza Stradivariにも、中世のゴシック建築クレモナ市庁舎のすぐ横にシンプルさと合理性を追求した「合理主義建築」様式のファシズム建築を見る事が出来ます。

写真上左L「ガッレーリアXXVアプリーレ」入り口。 
写真上右M「ガッレーリアXXVアプリーレ」内の床にモザイクで描かれたクレモナの紋章  


●第二次戦争末期の銃痕も残る中央郵便局
第二次戦争末期、クレモナも連合軍の爆撃を受け、多くの死傷者が出ました。ヴェルディ通り Via Giuseppe Verdiにあります中央郵便局は、ベル・エポック様式のステンドグラスの天井と装飾が美しい建物ですが、正面に向かって右側の外壁には連合軍の兵士が、逃げるドイツ兵に向けて連射した銃痕が今でもはっきりと残っています。

写真上左Nベル・エポック様式建築の中央郵便局は内装も美しい(撮影不可)  
写真上右O同郵便局右側外壁にはっきりと残された銃痕  


地の利の良さのため、クレモナはミラノ公国、スペイン、フランス、ヴェネツィア共和国、そしてオーストリアと言った外国人の支配を常に受け続けてきました。1082年、神聖ローマ帝国の圧政に耐え切れなくなったクレモナの屈強の若者ジョヴァンニ・バルデシオは、税金の免除を賭けて皇帝の息子に決闘を挑み見事に勝利を得ます。それまで税金として帝国に納めていた金の塊を納めなくてよくなった事を祝い、その後金塊を掲げた腕がクレモナの紋章に描かれるようになりました。「ガッレーリアXXVアプリーレ」の中心部の床には、モザイクで描かれたこの紋章を見る事が出来ます。(写真M)

クレモナっ子の間ではうっかり踏むと、翌日学校の授業で先生にあてられてしまうと言い伝えられています。自由と独立を愛するクレモナ市民の心意気を尊重しなさい、と言うクレモナの大人たちの教えかもしれません。


ヴァイオリンの町クレモナから   著者プロフィール
安田恵美子 Yasuda Emiko

住めば住むほど、知れば知るほど、クレモナの魅力に惹かれてしまいます。気がついたら在20年を超えました。現在ヴァイオリン博物館のスタッフの一員として、日本のお客様を中心に来館される方々のお手伝いをさせていただいています。楽しく・わかりやすく、がモットーです。少しでも多くの方にこの町を訪れて、クレモナを大好きになっていただければ、と願っています。


データ
Dati

■交通アクセス
<クレモナへのアクセス>
ミラノからマントヴァ行き列車で約1時間 (ほぼ1時間に1本)
https://www.trenitalia.com/

■各種情報
クレモナ考古学博物館 Museo archeologico di Cremona

Via San Lorenzo 4, 26100 Cremona
tel.: (+39) 0372 407269, fax: (+39) 0372 407268,
e-mail:
museo.archeologico@comune.cremona.it
https://www.musei.comune.cremona.it
オープン日: 火曜日から日曜日まで(1月1日、12月25-26日を除く)
オープン時間: 火曜日から金曜日: 9:00-13:00、土曜日から日曜日、祭日:
10:00-17:00
入館料: 3ユーロ(毎月第一日曜日は無料)

クレモナ大聖堂 Cattedrale di Santa Maria Assunta
Piazza del Comune, 26100 Cremona
https://www.cattedraledicremona.it
オープン日: 月曜日から日曜日まで
オープン時間: 月曜日から土曜日: 8:00-12:00,
15:30-19:00、日曜日、祭日前日、祭日: 8:00-12:00, 15:00-19:00
(ミサの邪魔にならない様にご注意ください)

トラッツォTorrazzoと洗礼堂Battistero、トラッツォ直立博物館 Museo verticale del Torrazzo
Piazza del Comune, 26100 Cremona
オープン日: 月曜日から日曜日まで
オープン時間: 10:00-13:00, 14:30-18:00 (入場は17時半まで)
入場料: 6ユーロ (トラッツォのみ 5ユーロ)

クレモナ市庁舎 Palazzo comunale di Cremona
Piazza del Comune 8, 26100 Cremona
tel.: (+39) 0372 407291
https://www.comune.cremona.it

1206年から現在に至るまで、クレモナの行政が執り行われて来た建物です。フレスコ画に囲まれた会議場や「絵画の間」、かつて市立弦楽器コレクションが展示されていた「ヴァイオリンの間」等を見る事が出来ます。
オープン日: 月曜日から日曜日まで
オープン時間: 月曜日から土曜日: 9:00-18:00、日曜日: 10:00-17:00
入場料無料(会議中は入場不可)

クレモナ市立博物館 Museo civico “Ala Ponzone”
Via Ugolani Dati 4, 26100 Cremona
tel.: (+39) 0372 407770, e-mail: museo.archeologico@comune.cremona.it
www.musei.comune.cremona.it

クレモナ市立博物館は、クレモナの商人アッファイターティの依頼で1561年に建てられた建物の中に、市立博物館、国立図書館、自然史博物館等が入っています。市立博物館ではカラヴァッジョ「サン・フランチェスコの瞑想」アルチンボルド「庭師/野菜」他、ストラディヴァリ家のお墓のあったサン・ドメニコ教会内のフレスコ画等の絵画コレクションや、ギター・リュート・マンドリン・コレクションが見られます。
オープン日: 火曜日から日曜日まで (1月1日、12月25-26日を除く)
オープン時間: 10:00-17:00
入館料: 7ユーロ (毎月第一日曜日は無料)



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