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15 ottobre 2008

第1回  鍋一つで、2品も作れる「ナポリ風ラグー」

長本和子



イタリア製お鍋の雑誌広告に出ることになった。そのお鍋を使って料理し、イタリアのお鍋に対するコメントを言うというのが趣旨だが、さあ困ったのが紹介する料理を選ぶこと。だって日本に紹介したいイタリア料理は選びきれないほどあるし・・・さて、どんな切り口から選ぶか。

イタリア料理の特徴は「簡単」「旨い」だと私は思っている。それは今郷土料理といわれるものが成立したのが、およそ100年ほど前で(実は延々と歴史はつながっているのだが、100年前のペッレグリーノ・アルトゥーズィの料理書「食の芸術と厨房の知識」で郷土料理が初めて文章化されて認識されたといわれている)、その当時のマンマたちの生活環境は、料理する時間はほんの少し、食材もほんの少し、台所は粗末で、使える用具もほんの少し。今から比べると"ほんの少し"づくしのオンパレード。しかしながらそこは古代からの文明国イタリアの女の意地がある。なんでも"ほんの少し"だからって、まずいものを食べさせているなんてプライドが許すはずがないのだ。 その半面"たっぷり"あったのが、料理を食べる人つまり家族に対する「愛情」。そこから出来上がった料理は当然「簡単」「旨い」になる。

さて、数日後にお鍋は送られてきた。イタリアらしくほれぼれするデザインで、しかも底が多重構造になっているので熱の吸収が抜群、経済的なすぐれものだ。
さあこのお鍋を使ってどんな料理を作ろうか。すぐ頭に浮かんだのが、鍋に材料を入れて蓋をしオーブンで加熱するだけというもの。トレンティーノーアルト・アディジェ州の豚肉のリンゴ煮は、一口大に切った豚肉とスライスしたリンゴを鍋に入れ、レモン汁少々をたらしてオーブンに入れるだけ。またはカラーブリア風羊の煮込みは、羊の肉にオレガノを散らし、ワインビネガーをふりかけて、オーブンに。もしくはアルトゥーズィの豚肉のミルク煮、豚肉とジャガイモの薄切りに牛乳をかけてオーブンに。どれもが「簡単」「旨い」。

ところが編集者から「もちろんこのお鍋は直接オーブンに入れられるのですが、やはり広告なので美しくないと・・」とのお達し。ではお鍋一つで2品も出来てしまうというのはどうだろう。
ということで選んだのが「ナポリ風豚肉のラグー」
この料理では豚肉の塊をトマトソースの中で煮込み、肉はセコンド・ピアット、ソースはパスタと和えて、プリモ・ピアットになる。

早速レシピを探して訳しにかかるが、まず最初の数行で???がでてきた。なになに「形が崩れないように、ひもで縛った豚肉を鍋におき、みじん切りにしたラルド(豚の背脂の塩漬け)とラードを入れて、水で覆ってから蓋をして1時間煮る。水がほとんど蒸発したら・・・・」私の料理経験から言うと、蓋をした場合水分の蒸発量が少ないので、1時間煮たとしてもなくなるはずがない。案の定、汁は少しも煮詰まってはいないじゃないですか。となると次の工程のワインをふりかけて風味をつけることもできない。その上指定の肉は豚のモモ肉となっている。腿肉は煮込み過ぎると固くなって、そのあとでバラバラになってしまうはずだ。だとすれば使える部位はロース、それも脂の多い肩ロースが最適だ・・・とまあこんな試行錯誤を繰り返しながら、出来上がったのが巻末のレシピ。

2度ほど試作して、その度に友人たちを招待して我が家での昼食会を催した。お味の方は、もちろん皆さん「おいしい〜!」と言ってくれた。(他にどのように言ったらいいのだ!) 
煮込み時間はかかっても、お鍋一つで2品もできるなんて、イタリアのマンマの知恵に感心しませんか。
そうイタリア料理は「簡単」でも、その後ろに背景があり、景色があり、幾人ものマンマたちの知恵と「愛情」が、いっぱい詰まっているので「旨い」のです。

 [カンパーニア州]

豚肉をつかったナポリ風ラグー
Ragu' napoletano alla carne di maiale
ラグー ナポレターノ アッラ カルネ ディ マイアーレ

材料:4人分
豚肉 800g、トマトソース 400g、ラルド(豚脂の塩漬け)30g、オリーヴ油 大匙2杯、
辛口赤ワイン カップ2杯、塩、水 カップ2杯

作り方
@ 豚肉をタコ糸で縛り形を整える。
A 豚肉と包丁で細かく叩くように切ったラルド(豚脂の塩漬け)*、水カップ2杯を鍋に入れ、蓋をして弱火で、時々ひっくり返しながら約1時間煮る。
B 水分が煮詰まったらボールにとり、上に浮いた脂を取り除いておく。
C 肉は鍋に残してワイン半量を振りかけて風味をつける。
D 残りのワインを少しずつ振りかけながら、さらに30分間煮続ける。
E ワインが蒸発したら、Bの汁をトマトソースに加えたものを鍋に入れ、さらに30以上煮る。
F ソースが煮詰まってきたら肉を取り出し、肉はセコンドピアット、ソースはパスタを和えてプリモピアットとする。
*ラルド:または豚背脂を塩漬けにして2日間冷蔵庫で置いたものでもよい。もしくはラード大匙1杯で代用できる。


著者プロフィール
長本和子 (Nagamoto Kazuko)
仕事で外国に行き、イタリアに魅了される。イタリア料理を学ぶために国立ホテル学校に留学。その後イタリア料理関係の通訳等を経て、1997年、ict食文化企画を設立。イタリア・トリノにあるICTと共に、現地でのイタリア料理・ワイン研修を企画。国内ではイタリア食文化に関する講演、執筆活動を行う。2006年東京白金台にリストランテ カシーナ・カナミッラをオープン、その後2008年中目黒に移転。著書に「イタリア野菜のABC」(小学館)「シチリア海と大地の味」(文化出版)などがある。2008年11月30日に「いちばんやさしいイタリア料理」(成美堂出版)を刊行予定。
ictホームページ:http://www.ict-ict.com
リストランテ カシーナ カナミッラ http://www.canamilla.jp

参考資料:ナポリの特産品 サン・マルツァーノ
この料理になくてはならないのが、ソース用のトマト、それがサンマルツァーノsan marzanoならば最高。サンマルツァーノは、サレルノのサンマルツァーノ村を中心とした地域でのみ栽培されるトマトで、1996年ヨーロッパ共同体にDOP(原産地保護呼称)認定された特産品だ。形は独特な洋ナシ形、果肉が厚く、水分が少なく、煮込むとコクが出て、多くの料理人に絶賛されるが、栽培と収穫を全て手で行われなければならないなどの規定があり、量的生産には限界がある。日本にも数社が輸入しているが、すぐに売り切れてしまう。もしPomodori S.Marzano DOPの表示があるホールトマトを見つけたら、絶対に購入する価値あり。

写真:サンマルツァーノ収穫−栽培から摘み取りまで、すべて人の手で行われる。

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