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15 dicembre 2008

第2回 「グラッソダルペの揚げ物」 貧しいものがおいしい

長本和子



もう10年以上続けている、イタリアでのプロ向け料理研修でイタリアに来ている。参加しているコックさんたちは、朝早くからの授業と、夜遅くまでのレシピの訳や授業のノート整理など、日々のハードなプログラムに果敢に挑戦しているようだ。だってイタリア料理にのめり込めばのめり込むほど、理解できない事柄が出てくるし、それが「イタリアのレシピで作っているのに、何でイタリアの味がしないんだ」「なぜこんなに貧しいものが、イタリアでは人気なんだろう」という疑問になって渦を巻き、ある日とうとうわが研修へと飛び込んでここに来ている訳だから、その情熱はなみたいていではない。

でもそんな彼らの疑問の一つ「貧しいものがおいしい」理由が、今日の授業で出てきた一つの揚げ物からわかってきたかもしれない。
その料理は「グラッソダルペの揚げ物」。パン粉に細かく切ったチーズ、残りものの肉、香草類と卵を混ぜて、小さくまとめて揚げた物。なんて手軽な材料でしょう。台所の戸棚にあるのをかき集めたとしか思えないものばかり。しかしながら、この揚げたてを食べたら、そんな偏見はすぐに引っ込んでしまうだろう。カリッとした外側と、トロリと溶けた中のチーズ、かみしめると出てくる肉の旨み。

ちょっとこの料理の背景をのぞいてみよう。
アルプスの山の生活は厳しい。夏こそ高山植物に囲まれてカウベルの音を楽しむ時があるが、それでも冬の間の食料をため込んでおく仕事の手は緩められない。優先するのは牛の飼料である乾草で、人間様の分は後回しになる。牛がいて、牛乳があって、そこからバターとチーズを作るのが生業だから、ほし草が足りなくて牛が飢死にしてしまったら生活の基盤がなくなってしまうのだ。
やがて寒い冬がやってくると、雪に閉じ込められてひたすら家で過ごすことになる。そんな時にアルプスの女たちは見事な刺繍をやってのけ、副収入に当てている。男たちは出稼ぎと、夏のための道具の手入れや家の修理に精を出す。

毎日の生活の中でうれしいのは食事の時間だ。 主食はトウモロコシの粉を長時間煮込んだポレンタ粥だが、副食はチーズやただワインをかけて食べるだけなので、それもまた単調にならざるを得ない。
そして登場するのが「グラッソダルペ」の揚げ物だ。寒い山の中、外では木の枝に積もっていた雪がドサリと落ちる音、家の中ではパチパチと暖炉で小枝の燃える音以外何も聞こえない。そんな時にかすかに響く「グラッソダルペ」の揚げ物を食べた時の「カリッ」という音。つまんだ指先が熱くて火傷しそうになっても、それがかえって幸福感を沸き立たせてくれる。

ね、料理って材料の豪華さじゃないんですね。もちろん食べるのは口だけれど、心でおいしいって感じないと、なんだか腑抜けのような感じがしてしまう。
もちろんコックさんたちも揚げたてを手に、アルプスの山が見える外に出て「カリッ、サクッ」それは長年の疑問がひとつ解けた音かもしれない。そんな経験を重ねて帰国したら、おいしい料理をいっぱい作ってくれるんだろうな。

 [ピエモンテ州]

グラッソダルペの揚げ物
Frittelle al grasso d'alpe
フリテッレ アル グラッソダルペ

材料:4人分
パン粉 400g  チーズ(グラッソダルペまたはフォンティーナ)200g
ゆで肉のみじん切り 約100g 卵 2個  牛乳 大匙2杯 
香草類(イタリアパセリ、タイム、セージなど)  塩・コショウ 揚げ物用油

作り方
@ ボールにパン粉、小角切りにしたチーズ、卵、肉、香草のみじん切り、牛乳、塩、コショウを入れてよく混ぜ合わせる。にぎってまとまるほどの硬さが理想的。足りなければ牛乳を足し、水分が多すぎるならばパン粉を足して調整する。
A 30分ほど寝かせてから、一口大にまとめた物を、高温の油で揚げる。


著者プロフィール
長本和子 (Nagamoto Kazuko)
仕事で外国に行き、イタリアに魅了される。イタリア料理を学ぶために国立ホテル学校に留学。その後イタリア料理関係の通訳等を経て、1997年、ict食文化企画を設立。イタリア・トリノにあるICTと共に、現地でのイタリア料理・ワイン研修を企画。国内ではイタリア食文化に関する講演、執筆活動を行う。2006年東京白金台にリストランテ カシーナ・カナミッラをオープン、その後2008年中目黒に移転。著書に「イタリア野菜のABC」(小学館)「シチリア海と大地の味」(文化出版)などがある。2008年11月30日に「いちばんやさしいイタリア料理」(成美堂出版)を刊行。
ictホームページ:http://www.ict-ict.com
リストランテ カシーナ カナミッラ http://www.canamilla.jp

参考資料:グラッソダルペ(チーズ)
アルプスの山の中で作られている半硬質チーズ。製法はフォンティーナと同じだがフォンティーナの名前は、DOP(原産地保護呼称)に認定されているため、ほかの地域では使うことができない。夏の間に山の上で放牧された牛からとった乳で作られているので、かみしめると高山植物の風味がするとも言われている。グラッソダルペはほとんどが地元で消費されているため、この料理を作る場合はフォンティーナを利用するとよい。

写真:半硬質のチーズ、「グラッソダルペ」

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