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16 febbraio 2009

第3回  サリーナ島の海風を届ける「エオリア風パスタ」

長本和子



「イル・ポスティーノ」という映画を憶えているだろうか。その撮影地になったのはプロチーダ島と紹介されているが、実はシチリアのエオリア諸島、サリーナ島でも撮影されていた。いまだにあの詩人の家は健在で、その気になれば夏の間借りる事もできるそうだ。でも、撮影地を一目見ようとする輩が忍び込んできて、とっても落ち着いて休暇を楽しめる状況ではない事は確かだけれど。そうそうあの映画の中で、郵便局で老婆がアメリカに小包を送るシーンがあった。日本語訳は出ていなかったけれど、確かケッパーを送ろうとして、局長が「相手が喜ぶよ」と言っていた。何故ケッパーなのか。これはまさに監督のサリーナ島に対するオマージュにちがいない。だってサリーナ島はパンテッレリーア島と並ぶ上質なケッパーの産地なのだから。

ケッパーはよくスモークサーモンの上に飾られていて、その形から豆かと思っている人もいるようだが、実際は花のつぼみだ。イタリアではケッパーは決して珍しい植物ではなく、ローマでも石垣の間からその枝が垂れ下がっているのがよく見られる。これはケッパーの実を食べたトカゲが石の隙間でフンをし、そこから芽が出たとかで、無愛想な石垣のなかなか美しいアクセントになっている。

しかしサリーナ島のケッパーが有名なのは、昔火山の火口だった場所に植えられよく手入れされた栽培種の風味が抜群で、その上食感が良いからだ。口の中でにゅうっとつぶれてしまうスモークサーモンの飾りものとは雲泥の差で、歯応えさえ感じられる。舌先で転がしてから噛みしめてみれば独特な芳香がたち、くせになってしまいそうな味だ。
収穫は5月から。早朝になるとつぼみを摘む人々の姿が島のあちこち見受けられる。袋状になった前掛けをつけて、のびた枝先から驚くほどの速さで摘み取り、暑くなる前に集めて午前中に塩漬けする。さもないとすぐに発酵してしまうからだそうだ。

さて、このケッパー、サリーナ島ではサラダとして食べるという贅沢な方法もあるが、(日本での価格を見たら無理無理)独特な風味から、刻んで肉に味をつけたり、アックアパッツァに入れて風味をつけたりする。しかし、最高の使い方は何といってもパスタのソース。美味しくって、簡単で、言う事なしだ。

作り方は、例によってイタリア料理のきまりごとである「家の周りにある食材を使う」方式で、材料は塩抜きしたケッパー、バジリコ、アーモンド、トマトとオリーヴ油、これをみんな乳鉢ですり潰すだけ。(日本ではみな買ってこなくてはならないが、サリーナ島では家の周りで簡単に手にはいいるものばかり)もっと簡単にしたければ、フードプロセッサーのスイッチを入れて数秒間で出来上がる。
しかし誰がケッパーを食べる事を思いついたのだろう。生のまま口に運べば、苦くってしばらくはほかの味が分からなくなるほど強烈なのに。

今ではこの島は観光地として栄え、マルヴァズィーアという名ワインも輸出されて豊かにはなっているが、その理由は過去の島の貧しさによるのかもしれないと思う。以前島の墓地に行った時に墓碑に刻まれていた人たちの年齢の低さに驚いた事がある。10歳になる前に葬られた人の数のなんと多かった事か。もちろん医者がいなかったこともあるだろが、何よりも充分な水と満足な食料が得られなかったからに違いない。そんな時代に島にいくらでも自生している、ビタミンたっぷりで、料理の味に深みを与えるケッパーはありがたい食材だったのだろう。

サリーナ島は、イタリアの中でも私が特に好きな土地だ。休日の昼、イタリア料理を作ろうと思うと、どうしても行きたい土地の料理が頭に浮かび、「エオリア風パスタ」を作る機会が多々ある。
パスタを口に入れると、あの海風が流れてくるような、いつもそんな気がしている。

 [シチリア州]

エオリア風パスタ
Pasta all’eoliana
パスタ アッレオリアーナ

材料:4人分
塩漬けケッパー 50g トマト 100g バジリコ  8枚 アーモンド 40g オリーヴ油 40g
ペコリーノチーズ  30g パスタ 320g

飾り用  トマト 50g ケッパー 10g バジリコ 少々

作り方
@ ケッパーを水に浸けて、適度に塩抜きしておく。
A トマトは半分に切り、種を抜いてざく切りにしておく。
B アーモンドは熱湯に通し、皮をむいて、軽くトーストしておく。
C アーモンド、ケッパー、トマト、オリーヴ油を入れてフードプロセッサーにかける。
D ボールにとったら、粉チーズと合わせる。必要ならばオリーヴ油を加える。
E アルデンテにパスタをゆでてソースと和える。
F 盛り付けたら、その上にケッパー、小角切りにしたトマトをちらし、バジリコの葉を飾る。


著者プロフィール
長本和子 (Nagamoto Kazuko)
仕事で外国に行き、イタリアに魅了される。イタリア料理を学ぶために国立ホテル学校に留学。その後イタリア料理関係の通訳等を経て、1997年、ict食文化企画を設立。イタリア・トリノにあるICTと共に、現地でのイタリア料理・ワイン研修を企画。国内ではイタリア食文化に関する講演、執筆活動を行う。2006年東京白金台にリストランテ カシーナ・カナミッラをオープン、その後2008年中目黒に移転。著書に「イタリア野菜のABC」(小学館)「シチリア海と大地の味」(文化出版)などがある。2008年11月30日に「いちばんやさしいイタリア料理」(成美堂出版)を刊行。
ictホームページ:http://www.ict-ict.com
リストランテ カシーナ カナミッラ http://www.canamilla.jp

参考資料:ケッパーCapperi
シチリアのサリーナ島、パンテッレリーア島が有名な産地。花のつぼみを塩漬けにしたものが売っている。使う時に流水に浸け、作る料理によって適量の塩を抜く。そのまま酢漬けにしたり、酢を切った後オリーヴ油漬けにして保存食にしたりする。蕾の成長によって大きさが違うが、大粒のものはすり潰してソースに、中位のものは料理に、小粒のものは飾り付けに使う。2〜3年は持つので、イタリアに行った時に多めに買っておくと便利。

写真:ケッパーの花

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