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私の自然紀行 − 読者からの投稿記事 バックナンバー

7 Ottobre 2002


「アルプスの大自然と伝統文化に浸る旅」


ヴァッレ・ダオスタ州 - アオスタとその周辺
Valle d'Aosta - Aosta




JITRA編集部

クネス Cuneaz への道


ヴァッレ・ダオスタ州といえば、クールマイヨール Courmayeur、モンテビアンコ Monte Bianco(いわゆるモンブラン)、チェルヴィニア Cervinia という冬場のスキーリゾートを思い浮かべる人がほとんどだろう。モンブラントンネルを抜ければフランス、グランサンベルナルド Gran San Bernardo を超えればスイス、という国境に接したイタリア最北西の独立州で、11-12-1月ともなればイタリア国内はもちろんヨーロッパ各地からのスキー客でにぎわう。そのヴァッレ・ダオスタ州が春夏秋のシーズンを狙ったアグリツーリズムに力を入れている。州政府観光局と各オペレーターが一体となり、非常に高いレベルのサービスを提供。他の地域のアグリツーリズムとは一味違った、大自然と住民との触れ合いを存分に楽しむことができる。6月末に開催された第四回アグリツーリズム全国集会と平行し、アオスタ州政府観光局企画のエデュケーショナルツアーでの3日間をご紹介したい。また同企画の運営に日夜奮闘された政府観光局の皆さんに誌面を借りて心よりお礼を申し上げたい。

初日、自由集合の場所となったのはサン・ピエール Saint Pierre(アオスタから10kmほど北西)のホテル・ラ・メリディアーナ Hotel La Meridiana。18部屋のこぢんまりとした清潔感あふれるホテル。各部屋の設備も整っており、広々とスペースを取ってあるのがうれしい。また、全室バルコニー付きでアオスタの山々の壮観を目の当たりに楽しむことができる。レストランもこの土地には珍しく、各素材の荒っぽさを程よく隠したデリケートな味。明日より待ち受けるサラミ、ラルド、ポレンタ攻撃に備えるにはうれしい夕食である。  

●6月28日
私が参加したコースは“Dalla Pecora Al Maglione 羊からセーターまで”と題されたもの。アオスタ市内よりグランサンベルナルドへ50kmほど車で北上すると、そこは標高2000メートルのアレイン Allein。時代に取り残されてしまったような小さな集落である。ロ・ラテール Lo Ratele という家族経営のアグリツーリズムに到着。刈り取られた羊毛から糸作りまでの実演と説明を受ける。野生の匂う脂分を十分残したこれら手作りセーター(というより肌着に近い)は、零下20度の環境でも汗ばむほどの保温性を持ち、アルプスの人たちの生活には欠かすことのできない必需品であった。予定ではその後、高山植物の専門家であるガエターニさんの案内で、薬用高山植物ガーデンを訪ねることになっていたのだが、あいにくの天候のため、集落内の散策へと変更。道端の何気ない草花に驚くべき毒性、薬効があることに改めて驚かされる。パオラさんの待つロ・ラテールへ戻ると手作りのパン、サラミ、ブデン Boudin と呼ばれるポテトサラミ(普通のひき肉以外にポテトと血液を加えた赤いサラミ)、パオラさんご自慢のフォンティーナチーズ、ペコリーノチーズ、白ワインなどが用意されていた。環境衛生規制が一層厳しくなる中、薪で牛乳を加熱するという本来のフォンティーナ作りは禁止されているものの、お客さん用に作っている家庭も結構ある。パオラさんいわく本当のフォンティーナは形を整えられるほど硬くならないもので、見かけは不細工。しかし味のほうは説明のとおり街中に出回っている通称フォンティーナとは比べ物にならないまろやかさ。焼きが足りなかったとご謙遜のパンもあっという間に皆で平らげてしまった。この地方では生野菜があまり豊富でない代わりにズッキーニがよく取れる。パオラさんもおばあちゃん伝授のズッキーニスープが得意で“Cuoco D'Oro(金のコック賞)”を受賞したほどの腕前。日本からも2人の女性が研修生としてお世話になったことがあり、そのうちの一人は現在日本でイタリアンレストランを経営しているとご自慢。自家製のパン、サラミ、フォンティーナのおいしさにすっかり魅せられてしまった我々一同は、他のグループとの合流場所であるアルナ Arnad のレストランでの昼食をすっぽかし、ここでご馳走になろうと勝手にテーブルをセッティングしようとする輩もいたほどである。このご自慢の家庭料理が込みで一泊なんと37ユーロ!毎日の喧騒に疲れた方、ここでひと時自分を見つめる時間を持ってみてはいかが?

「やっぱりパオラさんのところでご馳走になるべきだったんだ!」皆でぶつぶついいながら、アルナのレストランを出ると、午前中の雨が嘘のように真っ青な青空が広がっていた。“Viaggio nel tempo (時間旅行)”へ出発。シャンポルシェ Champorcher へ車を走らせるとそこは、心が洗われるような渓谷の里。雪解け水が流れる岩場の上に建てられたアグリツーリズム、ル・ムーラン・デ・ザラヴィ Le Moulin des Aravis を訪問。渓流の上に突き出すように作られたレストランからの眺めが素晴らしい。昔の水車小屋を改装した建物でレストランから地下へおりると粉引き機、パンを焼いたオーヴンが当時のまま残されている。聞こえてくるのは水のせせらぎと鳥のさえずりのみ。朝食と夕食付きで30ユーロ。ハイシーズンは37ユーロ。

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ムーラン・デ・ザラヴィの室内
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木靴サボ作り

ポンボセ Pontboset の市長の案内で渓谷の散策に出かけるが、「先日この辺でポルチーニ茸をたくさん採りました」という市長の一言で、参加者全員黙々と足元を見つめての行進となり、同氏の説明など上の空。市長さんすみません!そして再びジープに分乗し、今夜の宿泊先ホテル・エーデルワイス Hotel EDELWEISS のあるチェルヴィニアへ。2000メートル近い標高差を幾度となく繰り返し、そのたびに30度前後の気温差にさらされ、若干疲れ気味。最近の大気汚染の影響はこの地方でも深刻で、冬場一日のうちに40度近い気温差が出ることも珍しくなくなったとのこと。都会の生活ではほとんど気付くことのできない環境の変化を肌身に感じさせられる。

本日用意されていた他のパッケージを簡単にご紹介したい。今回はスケジュールの関係ですべて1日コース。
@“Montagna...non solo 山のほかにも...” 西ヨーロッパ最高峰モンブランの発見コース。アルプス専門ガイドの案内で氷河の散策も予定されていたが、悪天候のため中止。正式なパッケージは金曜日出発3日間コースとなっており、氷河散策の他にロープウェイを使った山小屋トリノ Torino の訪問、ロッククライミング講座など内容は盛りだくさん。
A“Scusi, abboccano? 喰い付きますか?” いわゆる釣り三昧のコース。氷河流の渓谷にて釣りの名人ジュリオ・シーニョ Giulio Signo 氏とともに過ごす3日間。最終日にあたる日曜日は獲物を屋外でバーベキュー。
B“L'asino a spasso sui sentieri del cielo 天の細道をロバと散歩” 羊毛用、搾乳用山羊、散策用のロバなどと触れ合い、伝統的なチーズ工房訪問のパッケージ。
なお、私が参加した“Dalla Pecora al Maglione 羊からセーターまで”は、本来土曜日出発の1週間コースとなっている。

●6月29日
Scappo dalla città 街を飛び出し・・・”。マイクロバス、オフロードなどに分乗し、一同チェルヴィニアのホテルを出発。雲ひとつない快晴でチェルヴィーノの勇壮な姿に全員歓声を上げシャッターをしきりに切る。気温0度。サン・ヴァンサン St.Vincent のカジノ、温泉の前を通過しての渓谷越え。1時間ほどの道のりで別の谷あいの町シャンポリュック Champoluc へ到着。“L'ovovia”と呼ばれる卵形のロープウエイに4人ずつ分乗してクネス Cuneaz と呼ばれる高山の集落へ。20世帯ほどの小さな村には教会、病院、学校すべての施設が整っている。子供達、村の人たちに暖かく歓迎され典型的なヴァルツェル Walser 建築、サボ Sabots と呼ばれる木靴製作の見学。2人の山男が丸太を引き、研ぎ澄まされた斧で形が作られ、大型の手回しドリルで中がくり抜かれてゆく。一日に30足ほど作られるこの木靴のサイズ、我々が日ごろ使っているものとちょっと異なり、靴の外側の全長で中のサイズも決まる。1足30ユーロ。

見学のあとはいつものお楽しみ。手作りのサラミ、チーズなどをつまみながらここで作られる白ワインの味見。朝食を済ませたばかりだというのに全員の食欲は旺盛。山の澄んだ空気の成せる技なのだろう。村の皆さんのおもてなしにお礼を述べ、一行下山。シャンポリュックより再びジープに揺られ、標高2300メートル、アルプ・メザン Alpe Metsan のアルペッジョ Alpeggio(高山放牧場)ラ・チャヴァーナ La Tchavana を訪問。「ここでは標高1500メートル以下では食事をさせてもらえない」との某記者の発言に一同爆笑。モンテローザ Monte Rosa が眼前にそびえる高原には鱒の泳ぐ池がある。フォンティーナの製造および熟成過程を見学後、アグリツーリズム内のレストランで昼食。前述のブデン、生ハムなどに加え、テテゥン Teteun と呼ばれる牛の乳部のサラミ(当然ながらミルク臭い)などを体験。なかでもブロッサ Brossa をかけて食べるポレンタには驚いた。ブロッサとは搾りたての乳に酢を加え表面に脂肪分と若干のプロテインが浮くまで加熱して得る一種のクリームで、上質のバターを作ることができる。その他、ここで取れる蜂蜜を添えたトーマチーズ、山羊のフレッシュチーズなども珍しい。このラ・チャヴァーナ、宿泊施設は現在計画中で2004年には2つのアパートメントが完成予定。食後は思い思いに草原に寝そべりのんびりと日光浴。若干ハードスケジュールが続いていたところで全員大満足の半日だった。

いったんホテルに戻り午後のツアーに出発。今回は2つのコースが用意されている。蜂の養殖アグリツーリズム訪問とワイン蔵の訪問である。しかしながら、いったんホテルへ戻るというアイデアのせいで何人の脱落者が出たことか、午後の参加者は両コース合わせ半減してしまった。 

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ラ・チャヴィーナ
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フォンティーナ貯蔵庫

夜はアグリツーリズム ラ・グランゼ・イン・ツィ・インコンニュ La Grandze in Tsi Inconnu にて意見交換をかねた夕食会。観光局の担当者から国境の町でのアグリツーリズム展開の難しさが切々と訴えられる。フランス、スイスなどの隣国は同地のアグリツーリズム発展を歓迎しておらず、EU衛生基準に照らし合わせた反対活動が盛んになりつつある。そのような状況下、アオスタ衛生局も対内外的に敏感な体制を見せざるを得ない。極端な例をとれば、夜間野良猫の被害を避けるためにごみ袋を厨房に置いていたあるアグリツーリズムは、早朝立ち入り検査を受け、現在休業の窮地に立たされている。各施設も特に神経を使い、他の地域と比べ衛生面の安心度もAクラスと言える。

●6月30日
最終日は大会参加者大集合のもと、チェルヴィニアのふもとにある小さな湖、ブルー湖 Lago Blu に張られた大テントにて、特産品の紹介と試食会、伝統木彫り作品の表彰なが行われ幕が閉じられた。厳しい冬の生活に戻る前の短い春と夏。降り注ぐ太陽と人々の暖かい微笑みに触れるバカンスを是非体験していただきたい。

【JITRA編集部 スタッフA】  




私の自然紀行 紹介データ

■アクセス
アオスタ Aosta 市までは、列車でトリノからキヴァッソChivasso(30分)で乗り換え、イヴレーアIvreaまで約40分。イヴレーアからバスで約1時間。
自動車なら、高速道路A5 (トリノ−アオスタ−モンテ・ビアンコ)でアオスタ出口。グランサンベルナルドまでは、国道でさらに約40km。

■本文中の宿泊施設
◇ホテル・メリディアーナ Hotel Meridiana
所在地:Loc. Chateau Feuillet, 11010 Saint Pierre (AO)
電話:(国番号39) 0165-90362、904149  Fax: 0165-903626
Eメール:info@albergomeridiana.it
HP: www.albergomeridiana.it

◇ロ・ラテール Lo Ratele
所在地:Frazione Ville, 11010 Allein
電話:(国番号39) 0165-78265
2月と9月10‐20日を除き営業

◇ル・ムーラン・デ・ザラヴィ Le Moulin des Aravis
所在地:Frazione Savin, 11020 Pontboset
電話:(国番号39) 0125-809831  Fax: 0125-834982

◇ラ・チャヴァーナ La Tchavana
所在地:Loc. Alpe Metsan, Comune di Ayas
電話:(国番号39) 0347-7347523

◇ラ・グランゼ・イン・ツィ・インコンニュ La Grandze in Tsi Inconnu
所在地:Frazione Prailles, 11014 Etroubles
電話:(国番号39) 0165-78216 

■インフォメーション
◇農業・天然資源局 Assessorato Agricoltura e Risorse Naturali
農業振興課 Direzione Servizi di Sviluppo Agricolo 
アグリツーリズム担当課 Ufficio Agriturismo
所在地:Loc. Grande Charriere, 66, 11020 Saint Christophe Aosta
電話:(国番号39) 0165-275218  Fax: 0165-275204

◇お問い合わせご予約は
ヴァッレ・ダオスタ州HP: http://www.regione.vda.it/  または http://www.anagritur.it/




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