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私の自然紀行 − 読者からの投稿記事 バックナンバー

21 Ottobre 2002


「夫婦でのんびり過ごしたティヴォリでの一日」


ラツィオ州 - ティヴォリ
Lazio - Tivoli




佐々木 清和

ヴィッラ・アドリアーナ遺跡風景


リストのピアノ曲「エステ荘の噴水」であまりにも有名なエステ荘 Villa d'Este に惹かれて、初めてティヴォリ Tivoli へ行ってきました。エステ荘へはローマから半日ツアーがたくさん出ていますが、どれも現地滞在は約1時間程度。それでは充分に楽しむことができないので、私と妻は郊外バスで行くことにしたのです。地下鉄B線の終点下車。ティブルティーナ街道を長い地下道で抜けた所のバス停から、COTRALバス“Tivoli-Roma線(約10分毎)”に乗りました。バスの運転手に確認して、全ての観光客が下車するエステ荘に近い広場 で降りずに、終点まで行きました。ティヴォリは小さな町なので“全部を歩いてみよう”ということにしたからです。

●ティヴォリ散策
終点のバス停はグレゴリアーナ橋 Ponte Gregoriana のたもとの小広場にあります。渓谷にかけられたグレゴリアーナ橋は、第二次大戦で完全に破壊されたのを復元したもので、周囲景観との調和もよく、一見の価値がある美しい橋です。橋を渡ってすぐ左にあるヴィッラ・グレゴリアーナは、深い渓谷の両斜面に設けられた別荘庭園の遺構です。谷底から轟音をとどろかせている豪快なアニエネの滝(落差120mほど)、深い緑、断崖上のスカイラインに見え隠れするローマ神殿の遺構。確かに心休まる魅力はありますが、苦労して急な道を上り下りした挙句にたどり着く神殿は、かなり痛みが激しいので、時間のない方にはお勧めしません。

そこから「旧市街」を縦断してエステ荘に向います。緩やかなカーブが続くかすかな上り坂で、何泊かしてみたい趣の深い静かな石畳の道です。中世のたたずまいを残した街路の途中には、市の立つ広場や独特の古い塔屋が点在しています。中世そのままの姿を残すエルベ広場の市場で、品のよい老婆に勧められて2種類の杏を試食。とても新鮮でおいしかったので500gを買いましたが、食べながら歩くのがとても似合うような気さくな町です。

●エステ荘 Villa d'Este
別荘建築の内部はかなり趣味の悪いバロック様式で、特に鑑賞に値するとは思いませんでしが、噴水庭園は豪快な滝や繊細な滝、賑やかな滝が、典型的なイタリア庭園の随所に点在し、互いに干渉しあうことなく、充分な自己主張を損なわずに、それらが大きな樹木に映えて輝く有様は、リストならずとも詩情をそそられる雰囲気をもっています(ただ、周辺部の小滝に水の出ないものが多いのが残念でした)。かつては、近郊からの発掘品などで豪華に飾られていたのでしょうが、今では素晴らしい噴水庭園と庭園からの眺望しかありません。でもそれだけで十分という感じでした。

photo2
ヴィッラ・デステ噴水風景
photo3
ヴィッラ・アドリアーナ遺跡風景

●ヴィッラ・アドリアーナ Villa Adriana
それから、ハドリアヌス帝別荘 Villa Adriana に向かいました。途中、突然バスが停車し、屈強な男たちがバスの全ての入口から一人ずつ乗り込んできました。一瞬何事かと思いましたが、それが「検札」だったのです。 乗客一人一人の乗車券と刻印を調べてまわるのです。初めての経験だったので驚きました。 無札でいくらでも乗れそうなローマのバスですが、たまにはこういうこともあるのです。特に「タイムオーバー」には気をつけましょう。相当な罰金をとられてしまうようです。

町並みの最後の建物であるバールの角の停留所でバスを降りたのは、私たち2人だけでした。一面緑の中の広い道を1〜2分歩くと、そこに入口が。ただ一軒のキオスクと切符売り場以外には何もないところです。キオスクで遺跡の地図を買い入場しました。遺跡までは松並木の道をさらに500mほど歩きます。期待で胸が膨らむ美しい導入路です。左手はるかに、ティヴォリの全貌が見え隠れしています。人影は全くありません。突然、巨大な城壁状の壁が行く手に立ちはだかります。有名な Pecile(ストア・ポイキレ:彩色回廊)の外壁です。その手前にこの遺跡で唯一のバールがあり、その隣の模型展示室で遺跡全体の模型を見て、地図とあわせて頭の中に焼き付けておきました。 

この遺跡は、ハドリアヌス帝の別荘とはいうものの、直線距離でおよそ1.5km x 800m ほどもある広大なものです。当時のローマ世界の文化を集約した小都市と云ってよいものですが、ポンペイ Pompei やオスティア・アンティカ Ostia Antica など方形街区の都市遺跡と違って、この遺跡は複雑な地形に合わせて建築や施設の配置も複雑で、案内図には見学者のために2種類の動線設定(1時間と3時間コース)が示されています。しかし、実際にこの広大な遺跡の巨大な建築遺構や複雑な地形の中に入り込むと、自分の位置すら見失ってしまいます。遺跡の中はほとんど無人状態ですが、ときどき10名程度の大学のセミナー集団に出会います。それらの集団は教授を中心に遺構の中に座り込んだまま、教授の説明に耳を傾けたり、建造物のディテールを写し取ったり、かなり真面目に勉強をしている様子です。冷たいようですが、我々観光客にとって困ることは、彼らが写真のモティーフの中に座り込んだままで動いてくれないことです。あるセミナーの中に日本人の若者の姿を見だし、陰ながらのエールを送ったものです。

この遺跡の個々の遺構についてはとても書ききれませんので、興味のある方は旅行案内を読んでください。カノープス Canopus や海の劇場(マリタイム・シアター Villa dell'Isola)などはよく紹介されています。 出口近くの “ヴィーナスの小神殿” の列柱越しに見るチヴォリの街は最高の眺めでした。結局、私たちはこの遺跡に約4時間半ほどいましたが、とても全部を見たとは云えません。連日ローマからティヴォリ・ツアーがたくさん出ているのですが、観光バスにも観光客集団にも出会いません。ごくたまに静かに探勝を楽しむ個人旅行者に出会い、会釈を交わす程度です。ツアーの人たちは一体どこへ行くのでしょう? あちこち町を散策していて、日本人にはついに一人も出会いませんでした。広大な遺跡の陰に消しこまれてしまうのでしょうか?ともかく、ポンペイや他の遺跡群に比べて、とても静かで巨大な遺跡です。貴重な1日を割く価値は充分にあります。エステ荘に2時間、ヴィラ・アドリアーナに3時間を当てることをお勧めします。それを午前と午後に分ければ、満足な一日を過ごせると思います。また、余談ですが、遺跡の中には入口のバール以外に売店はありません。 詳しい案内や地図は切符売り場の横で、飲み物はバールで仕入れていきましょう。これを忘れると遺跡の中で迷子になったり、干からびてしまったりしますから・・・。

【寄稿者:佐々木 清和  東京藝大卒。商品デザインの仕事で米・カナダ数都市に滞在。89年の定年中締めを機に夫婦で西欧を巡り、若い頃から憧れていたイタリアが世界で最も文化密度が高く、歴史も遺跡もスケールも大きい国であることを実感。以来、隔年を目標に夫婦で訪伊。NHKの伊語講座でものんびりと独学中。イタリアの文化だけではなく、他愛のないコミュニケーションも楽しみの一つになっています】  




私の自然紀行 紹介データ

■アクセス
◇行き方
エステ荘までは、本文にある通り。ハドリアヌス帝別荘までは以下をご参照ください。
  @ A線 Tivoli - Villa Adriana - La Botte - Guidonia
 A B線 Tivoli - Villa Adriana - Bagni - Guidonia (A・B線ともに fermata(停留所) で下車すれば目の前が入口です)
  B Roma - Tvoli 線
    で下車して20分ほど歩くか、ティヴォリから来るCOTRALの黄色いバス“04”番に乗り換え、で下車。そこから徒歩1〜2分。

◇帰り方(遺跡付近からの直通バスはないようです。一旦、ティブルティーナ街道(Via Tiburtina SS5)に出なければなりません。
 @ A線、AB線、C04番ともに(Bar の角)より乗車(切符を買うときに、バールの人に聞けば親切に教えてくれます)。街道の交差点で “Roma - Tivoli”に乗り換えれば 駅に着きます。運転手にポンテ・ルカーノで降りることを伝えておくと安心です。

 ※そののバス停から100mほどアニオーネ川の下流に、ローマ時代の姿をそのままに伝える、5連のアーチがことさらに美しい“ルカーノ橋 Ponte Lucano”があります。時間があれば是非立ち寄ってみてください。また、ルカーノ橋のたもとにある巨大な石の塔“Tomba del Plause”はローマ貴族の墳墓。日本の旅行案内書には書かれていません。

■アドヴァイス
旅を能率的に楽しむためには旅を能率的に楽しむためには、事前の情報をできるだけ消化しておき、現地での行動に戸惑わないことが重要です。行き当たりばったりの旅を誇らしく語る方がいますが、私は感心しません。ホテル探しに半日、切符の購入に半日なんて事では、冒険を楽しむことはできても、決して内容の充実した旅にはならないと思います。このレポートを役立てていただければ幸甚です。




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