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私の自然紀行 − 読者からの投稿記事 バックナンバー

15 Gennaio 2003


「古代都市オスティア・アンティーカを訪ねて」


ラツィオ州 - オスティア
Lazio - Ostia




佐々木 清和

ローマの女神とアウグストゥス神殿


5月下旬、私たち夫婦は思い立って、以前から是非一度は訪ねたかった「オスティア・アンティーカ Ostia Antica」へ行ってみました。 ティヴォリやポンペイ遺跡と同様に、ローマから便利な半日ツアー(所要・約3時間)がたくさん出ていますが、私たちはもっと充分な時間で自由に見て回りたいので、8時半ごろローマのホテルを出発し、 地下鉄B線をマリアーナ Mariana 駅で F.S.オスティア・リド線 Ostia Lido に乗り換えて、自分たちの足で行くことにしました。

マリアーナ駅での接続が悪く、リド線の列車が30分近く来ません。乗車券は日本の旅行案内には B.I.T.(75分券)と書いてあるのですが、私たちは残りの時間が逼迫してきたので、身近な人に聞いて買い足しました。よほど接続がうまく行かなければ、BIT で行き着くのはとても無理です。帰りのことを考えると B.I.G. (一日乗り放題券)を買っておくと安心です。

落書きだらけの列車をオスティア・アンティーカ駅で下車。そこは郊外の何もないところでした。 周囲はぶどう園と畑で、前方の近くに城が見えます。 1483年法王ユリウス2世が枢機卿の時に建てたものです。あとで知ったのですが、この城にはアグリツーリスムがあるということです。

◆ Cos'è Ostia Antica オスティア・アンティーカって何?
古代都市オスティアは、昔のテヴェレ河 Tevere の河口にあって、伝説によれば起源前6世紀に古代ローマ4代目の王アンクス・マルティウスが初めてこの街を建設したとのことですが、考古学的な確証は何もないそうです。歴史的には、前4世紀ごろから古代ローマの重要な軍事拠点として建設されたのです。 ローマ版図の拡大につれて貿易量が増大し、ローマの外港として大いに繁栄したのですが、テヴェレ河が運ぶ土砂の堆積によって徐々にその機能を失い、現在のフィウミチーノの地に建設された新港に施設が移転するとともに、土砂に埋もれるままに打ち捨てられ、4世紀末には完全に廃墟と化したのです。現在ではポンペイ、エルコラーノやティヴォリのヴィッラ・アドリアーナなどとともに重要な古代都市遺跡の一つとなっています。中世からルネッサンス期には、他の遺跡同様に建築資材の調達場となってしまいましたが、砂に埋もれていたために、埋没部分は非常によく残されています。 それが他の都市遺跡には見られない格別の面白さをもつ所以なのです。

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劇場の外観
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劇場のアーチから落下した装飾彫刻

◆ Come arrivare 行きかたは? 駅から遺跡入口までは600mくらいで、途中オスティア街道の歩道橋を渡ります。 一本道なので迷う心配はありませんが、歩道橋の手前に小さなレストランがあるので、ここで飲料水と食料を仕入れておきます。 これから先は遺跡の中にも外にもレストランやバールはありません。

◆ Come visitare 見学の仕方は?
オスティア・アンティーカは都市の遺跡ですから、想像をはるかに越えて広大で、およそ 1.6km×900m もあります。中央の直線路(ローマ街道・約1km)の周辺が見学の中心部分です。 建物の床を飾る華麗な “ローマンモザイク” を丹念に探し歩くとすれば、それだけで4〜5時間は必要でしょう。大きな松並木が美しい導入路の先が切符売り場で、「ローマ門」までの左右が「古代の墓地」です。ここはすでにオスティア・アンティーカ遺跡で、ローマ門から先が「オスティアの市街遺跡」になります。

まず、博物館の横の売店で遺跡地図つきの案内書を購入します。 そして、地図に自分たちなりの路順を設定して、納得しながらきめ細かに歩かないと、結局何がなんだかわからなくなってしまいます。 何度も来るところではないので、後で説明書を読んで臍(ほぞ)をかむことがないようにしたいからです。当時のローマの都市に見られる施設は、円形闘技場を除けば一応全てを観ることができます。 街区や建物だけでなく、当時の都市のインフラや機能、市民の職業、宗教などの生活までよく見て取れる面白さがあります。 ここには当時すでに5階建ての庶民の集合住宅(インスラ)があったのです。 また、ポンペイやエルコラーノの重苦しい灰色の世界に比べて、赤いレンガが美しいとても明るい遺跡です。この遺跡はローマに近いせいもあってか、小中学生の校外授業や大学のセミナーがとても多く、遺跡の前半部域は非常に賑わっています。 先生に引率された子供たちは、どの集団もとても熱心に先生の話を聴き、熱心に質問をしています。徒に騒ぎ立てる子供を見たことがありません。 でも話しかけると、とても明るく応答してくれます。 同年代の日本の子供たちに比べて、社会的なマナーのよさに感心します。子供の頃から自分たちの歴史と文化遺産の素晴らしさに触れることで、郷土愛や愛国心が育っていくのでしょう。 うらやましく思いました。 そういえば、この国でよく見かける野良犬すらも、吼えたり走り回ったりしているのを見かけたことがありません。

この直線路が尽きる当たり(五叉路になっている)から、急に人影がまばらになり、雑草が繁茂してきますが、その中にもモザイクが美しいシナゴーグ(ユダヤ教会)や七賢人の浴場、魚屋、肉屋、穀物倉庫など興味深い遺跡がたくさん点在しているのです。 もし女性一人で行く場合には、暴漢や危険を避けるために中心部だけに止めるか、中高年のカップルやセミナー集団(インストラクターが引率している)について歩くなど、充分に安全への配慮をしてください。 遺跡の陰や草むらから突然人が出てきて驚かされたりしますし、たまには事件も起きているようですから。

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エバフロディティアーナの穀物倉庫
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シナゴーグ(ユダヤ教会)とモザイク

まず最初に劇場の最上段のテラスから、遺跡の全貌を観察しておくことをお勧めします。遺跡の説明書には、短時間で見学できる主な見所として、次の場所が示されています。
●オスティア博物館
●ルクレッツイア・マナンドロのミトラ教礼拝堂
●製粉業者の家
●ダイアナの家
●ゼウスとガニュメーデスの地区
●飲食店
●公衆便所
●フォーラムの公衆浴場
●円柱のある別荘
●ファルトウーナ・アンノナーリアの別荘
●洗濯・染物屋
●諸皇帝祭事役人の事務所
●劇場
●同業組合のフォーラム
●前4世紀の城砦

この他遺跡案内図には 実に124箇所の見所が示されています。私たちは遺跡の中に4時間半ほどいましたが、まだまだ見残しが多く、折を見てもう一度行きたいと思っています。帰途についた午後3時半ごろの入口付近で、到着したばかりの集団の中に日本人の若いカップルを見つけました。 声をかけると、新婚旅行ツアーの途中、半日フリータイムを利用して、ローマからの現地ツアーに参加したそうです。 今日一日、日本人に出会ったのはそれだけでした。2千数百年前の都市と文化がそっくりそのまま目の前にあり、その中を歩き回る自分がいる。決してバーチャルではなく現実なのだと思うと、木と土の文化の “はかなさ” と、石の文化が持つ “凄さ” に感動した一日でした。私個人の考えでは、都市と建築の完成度の高さは、有名なポンペイをはるかに凌ぐと思っています。遺跡の保存状態はとてもよく、廃墟というよりもついさっきまで人が住んでいたような錯覚に陥ります。ローマからも、空港からもすぐ近くですから、団体ツアーでも半日のフリータイムがあれば、ぜひ訪ねてみてください。

◆ Attenzione! 注意
余談ですが、遺跡の探索中に、女房が瓦礫を飛び移ろうとして足の小指の第三接を骨折してしまったのです。 親指でカバーしながら旅を続けたのですが、帰国しても痛みが取れないので医者に見せたところ、よく我慢できましたね、骨折しています・・・と云われました。 事故から1週間もたっているので、そのままテーピングで直しましたが、靴の底が薄かったことが原因の一つでした。 所によって遺跡歩きは瓦礫の山を跳び歩くことでもあります。 履物は充分に注意して選びましょう。教訓です。
さらに、遺跡歩きには日除け帽、サングラスと飲み水は欠かせません。くれぐれも忘れることがないように。 また、遺跡の中では絶対に「日傘」は使用しないでください。 なぜか特に大和撫子に多いのですが、真面目な見学者にとっては大変な迷惑です。存在感が人間の数倍もあり、色彩もひときわ派手ですから静かな景観の中では許しがたい存在になるのです。 それに、写真を撮ろうとするときに限って?無遠慮に画面に入り込んでくるので怒鳴りつけたくなります。 あまり気付かないことですが注意しましょう。
もう一つ・・・。 帰路、マリアーナ駅での乗換えでのこと。 連絡地下道で突然の検札です。 通路の中央で屈強な男たちが、一人一人の乗車券の刻印をチェックしているのです。観光客の甘えもあり、ちらっと見せて通ろうとしたら、いきなり腕を掴まれ、切符をもぎ取って時間を確認されました。 何も問題がないのですぐに返されてOKでしたが、腕を掴まれた時の感じは、突然いわれのない逮捕を受けたような不愉快なものでした。 時にはこんなこともあるという報告です。 皆様も切符の時間切れにはご注意ください。 

【寄稿者: 佐々木清和 東京藝大卒。商品デザインの仕事で米・カナダ数都市に滞在。89年の定年中締めを機に夫婦で西欧を巡り、若い頃から憧れていたイタリアが世界で最も文化密度が高く、歴史も遺跡もスケールも大きい国であることを実感。以来、隔年を目標に夫婦で訪伊。NHKの伊語講座でものんびりと独学中。イタリアの文化だけではなく、他愛のないコミュニケーションも楽しみの一つになっています】    

※佐々木さんには2002年10月の『夫婦でのんびり過ごしたティヴォリでの一日』にも寄稿していただいています。ティヴォリの遺跡の素晴らしさを詳細に語って下さっていますので、是非一緒にご覧ください。
※近郊のフィウミチーノの考古学博物館については、『知られざる美術館・博物館』の第1回『古代ローマ時代の船の博物館とクラウディオ帝の港』でも扱っていますのでご参照ください。


私の自然紀行 紹介データ

■アクセス
ローマからの行き方は本文をご参照ください。

■インフォメーション
オスティア・アンティーカのHP:www.ostiaantica.net

ローマのオスティア考古学保護監督局
Via Ostia Antica (RM)
電話:06-56358099 Fax:06-5651500 ,br> インターネット:http://itnw.roma.it/ostia/scavi Eメールアドレス:ostia.scavi@agora.stm.it




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