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北イタリア モザイクの旅
15 Maggio 2012
第7回
  ヴェネツィア
サン・マルコ大聖堂 その2

持丸 史恵 



●本堂の縦のラインを飾るモザイク
前回は、大聖堂のナルテックス(前室)が「旧約聖書」の物語を描いたモザイクで飾られていることをご紹介しましたが、今度こそ、いよいよ本堂に入っていきましょう。大勢の観光客がスムーズに堂内を見て回れるよう、今はロープを張って、順路が作られています。そのために全体の形が少々わかりづらくなっているのですが、平面図と見比べて、この大きな聖堂が十字の形をしていること、そしてその十字がクロスする中央と、4辺とにそれぞれクーポラが乗っかっていることに、ぜひ注目してください。
そして、形としては、上下と左右とほぼ対称ですが、教会の構造として、とくに重要なのは縦のラインです。今回は、この縦のラインを飾るモザイクをご紹介していきます。


写真トップ@サン・マルコ大聖堂本堂の奥を臨む
写真左A4つのクーポラを持つサン・マルコ大聖堂外観   右の図Bサン・マルコ大聖堂平面図(パドヴァ在住の建築家、板倉満代氏作成)    

●一番奥は「王座のキリスト」
聖堂一番奥、後陣の半円蓋に見えるのは(図F)「玉座のキリスト」。(写真@ 奥)これは1506年に作り変えられたもの。スタイルがルネサンス風になっているだけでなく、とくに金色のテッセラ(モザイクの1つ1つの片)をまっ平らに埋め尽くしているために地に変化がなく、残念ながら、モザイクらしい味わいが消えてしまっています。金色のモザイクは実は、数ミリ四方のテッセラを、あえて少しずつ向きや角度を変えて埋めていくことによって、光の乱射を呼び、それが独特の効果を出すためです。

●12世紀前半のビザンチン様式モザイク「合唱のクーポラ」
そのすぐ手前、天井を見上げるとそこにあるのが(図G)12世紀前半のモザイク、「合唱のクーポラ」。中央はエマヌエレ(キリストの幼名)。両手を広げた祈りのポーズの聖母マリアの両側には、旧約聖書の預言者たちが並びます。彼らが手にする巻物には、救世主(「エマヌエレという名の子」)の出現と犠牲、復活が「預言」されています。
クーポラの4隅(ペンデンティブ)には、4人の福音書家のシンボルたち、すなわち、聖マルコ(ライオン)、聖ルカ(牛)、聖マタイ(天使)、聖ヨハネ(鷲)が描かれています。
http://www.basilicasanmarco.it/ita/basilica_mos/patrimonio_interno.bsm?cat=1&subcat=2#

●「キリスト昇天のクーポラ」
縦と横が交差する部分のクーポラは(図H)、中央にはキリストが天地の上に腰かけ、それを4人の天使が支えています。その周りを囲むのは、両手を胸の前で開いた、やはり祈りのポーズの聖母マリアと、2人の天使、そして12人の使徒たち。


写真上Cサン・マルコ大聖堂の「キリスト昇天のクーポラ」    

「キリスト昇天のクーポラ」、12世紀四半後半のモザイクです。(写真C)
4隅のペンデンティブは、今度は同じ4人の福音書家たちが、シンボルではなくて、それぞれが人間の姿で、書き物をしている格好で描かれています。

http://www.basilicasanmarco.it/ita/basilica_mos/patrimonio_interno2.bsm?cat=1&subcat=2#

キリスト出現の、前と後を示したこの2つのクーポラは、こうして、似ていて違う相対関係にあります。ぜひじっくり、比べて見てください。

●3つ目は「ペンテコステのクーポラ」
そしていよいよ、3つめのクーポラに移りましょう。
一番入口に近いクーポラ(図I)は、12世紀中盤、「ペンテコステ(聖霊降臨)のクーポラ」。(写真DE)


写真上Dサン・マルコ大聖堂の「ペンテコステ(聖霊降臨)のクーポラ」


もはや完全に昇天したキリストはすでに人の体の形をなさず、聖霊、すなわち鳩の姿で中央の玉座にとまり、周りに座る12人の使徒へ向けて、ナントカ光線のごとくビビビっとその聖霊を送りこんでいます。こうして救世主キリストのメッセージは、使徒たちへと受け継がれていきました。
使徒たちの足元、窓の間にいるのは、さまざまな民族・国民たち。キリスト教がやがて、そうして世界各地に普及していったことを示しています。
福音書家たちは、すでに仕事(福音書、つまり新約聖書を書くこと)を終えたのか、ここではペンデンティブには天使たちが描かれています。
http://www.basilicasanmarco.it/ita/basilica_mos/patrimonio_interno3.bsm?cat=1&subcat=2#

キリスト(救世主)の誕生の預言から昇天、聖霊降臨と続いたキリスト教の最大のテーマを描いたプログラムは、さらにこの手前、「最後の審判」で完結します。が、入口天井に「最後の審判」は、19世紀にその大半を直したものであり、ここまでの紹介に留めます。

●身廊の壁やヴォールトにはキリスト受難の物語
キリスト教の最大かつ壮大なテーマを、一筋通して描いたのが縦のラインのクーポラだとすると、新約聖書のキリストの受難の物語を描いているのが、その身廊の壁やヴォールトです。正面に向かって、左半分はルネサンス期以降に直されているものが多いのですが(図M, Kなど)、右半分と中央は12世紀のもので(図L, N, O,Jなど)、上記3つのクーポラともども、典型的なビザンチン様式です。「キリストのエルサレム入城」や「最後の晩餐」、「磔刑図」など、わかりやすい図像もあるでしょう。

http://www.basilicasanmarco.it/ita/basilica_mos/patrimonio_interno2.bsm?cat=1&subcat=2#

キリスト教に馴染みのない私たち日本人には、少々たいくつする図像かもしれません。ですが、同じ黄金のモザイクのように見えても、前回ご紹介した、よりロマネスク風のナルテクスと、こちらの典型的なビザンツ様式、そしてルネサンス後に直されたモザイク、など、時代や目的によって変化が見られる様子など、観察していただけるといいのでは、と思います。

次回はあと少し、それ以外の見どころなどをご紹介しましょう。


著者プロフィール
持丸 史恵(Mochimaru Fumie)

ヴェネツイア在住。横浜市出身。通訳、コーディネート業など。
2000年秋より1年ペルージャで過ごしたあとヴェネツィアへ。日本では縁もゆかりもなかった美術史を楽しくも苦しみつつ学び、ヴェネツィア大学を卒業。在学中より、美術史の中でもとくに古代から中世にかけてのモザイク美術にハマる。イタリアを中心に、各地に点在するまだ見ぬモザイクをいつか制覇したいと夢見ている。
日々の様子は、ブログをどうぞ: 「ヴェネツィア ときどき イタリア」 http://fumiemve.exblog.jp


北イタリア モザイクの旅 データ

サン・マルコ大聖堂 
Basilica di San Marco
ヴェネト州 ヴェネツィア市

■サン・マルコ大聖堂 
Basilica di San Marco,
所在地:Piazza San Marco, Venezia
Web: http://www.basilicasanmarco.it
開館時間 9.45-17.00
サン・マルコ博物館 (Museo di San Marco)
時間 9.45-16.45
入場料 4ユーロ

■交通アクセス
ヴェネツィア・サンタ・ルチア駅(Venezia S.Lucia、水上バスの停留所名はFerrovia)、またはローマ広場(Piazzale Roma、バス・ターミナル)から、水上バス1, 2番でサン・マルコ(San Marco)下車。
ACTV社サイト www.actv.it (水上バス時刻表など)

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