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ローマ モザイクの旅
15 Marzo 2014

第1回
   カラカッラ浴場、パラッツォ・マッシモ国立博物館


持丸 史恵


1.カラカッラ浴場
ローマの街の、中心部から遠くないところにある、カラカッラ浴場(Terme di Caracalla)(写真A)は、観光で訪れる方も多いのではないでしょうか。 ローマ時代の人々は、現代の日本と同じように入浴を好み、それも庶民は自宅にお風呂などなく、公衆浴場へ行くのが普通でした。その公衆浴場は今でいう、スパ・リゾートとか健康ランドのような、さまざまな湯温のお風呂があるだけでなく、スポーツ・ジムや娯楽室なども備えた、一大娯楽センター。そんなローマの風習は、ヤマザキマリさんのマンガ「テルマエ・ロマエ」や、それを原作にした映画などで、日本でもすっかりおなじみかもしれません。             

  写真トップ:@パラッツォ・マッシモ国立博物館所蔵4世紀前半の「オプス・セクティレ」  
写真上左:Aカラカッラ浴場、外観  写真上右:Bカラカッラ浴場東側ジムで見つかった床モザイク

歴代皇帝たちは、手っ取り早く庶民の人気を得るために、それぞれ闘技場やテルメ(複合浴場施設)を建てました。「カラカッラ浴場」として知られるこの広大な施設は、おそらくセプティミウス・セヴェルス帝の時代に考案され、その息子、マルクス・アウレリウス・アントニヌス・バッシアヌス、通称カラカッラ帝(在位209年-217年)の在位中の216年に完成しました。
改装・改築を繰り返し、3世紀にわたり利用されてきたテルメも、ローマが蛮族の掠奪にあったあと、537年に閉鎖されます。

●廃墟は墓地や邸宅用の建材として「再利用」
廃墟はしばらく、墓地などに利用されていたようですが、12世紀にはすでに、大理石などの「宝庫」として建材が持ち出されていました。古代遺跡として注目されるようになるのは15世紀から。ところが、1545年から47年にかけ、ローマ教皇パオロ3世が、自らの邸宅を建てるために、まだ残っていた彫刻や円柱などを大量に持ち出し、この場は再び、完全な廃墟となりました。

 写真上左:Cカラカッラ浴場の幾何学模様のモザイク  写真上右:Dカラカッラ浴場、地下のドムス跡    


考古学的観点から発掘研究が始まったのは、1824年から。その後、敷地内の南東角の8m地下に、ハドリアヌス帝時代の邸宅が発見されます。20世紀に入り調査が進むと、エクセドラ(柱廊のある半円のテラス)や図書館、そしてミトラ教の聖堂などが確認されました。(写真D)

●細かい四角に切った石を埋めた質素な床モザイク
説明がすっかり長くなってしまいましたが、「モザイク」に関しては、1878-79年に、カルダリウム(湯温の高い浴室)の床から「オプス・セクティレ(Opus sectile)」といういわゆる石の象嵌が(写真@)、そして東側のジムから、通常「モザイク」と呼ばれる、細かい四角に切った石を埋めた床装飾が見つかりました。(写真B) 調査の進んだ今では、広大な施設の中のあちこちで、床モザイクが見られます。

写真下左:E壁にたてかけてあるモザイク   写真下右:F架空の動物を描いた床モザイク 

施設内、ほとんどが幾何学模様のモザイク(写真C)なのですが、白黒で神話の場面や架空の動物などを描いたものも見つかっています。これらは、保存上の観点からか、もとあった位置から剥がし、壁にたてかけてあって、まるで建材の見本市のようです。(写真EF)

同じ大きさに切った石を、モルタルなどに埋め込んで作るモザイクは、絵を描くのとほぼ同じように自由に美しい絵や模様も描けたことから、ローマ時代には、皇帝のそれをはじめ、大きな邸宅などの床を豪華に装飾するのに使われるようになります。が、もともとは石の破片を埋めたもの。手間こそかかれ、一旦できあがってしまうと見栄えよく、丈夫な上に手入れも簡単。はじめはほんとにシンプルで質素なものとはいえ、一般の住宅、あるいは倉庫など、そしてこうした公共施設でも多用されていました。

2.パラッツォ・マッシモ国立博物館
同じローマ時代の、豪華なほうの床モザイクは、南イタリア編ではナポリ国立考古学博物館をご紹介しましたが、ローマではパラッツォ・マッシモ国立博物館(写真G)で見ることができます。 ここには、ローマ内外で発見された、複数の邸宅のモザイクや壁画が展示されていますが、その中で、カラカッラ帝一家、セヴェルス家の邸宅から発掘されたものをいくつか紹介しましょう。

写真上左:Gパラッツォ・マッシモ国立博物館  写真上右:H4世紀前半の「オプス・セクティレ」の部分

こちらも紀元後2世紀末―3世紀前半、いずれも床モザイクですが、テッセラと呼ばれる石の四角片の大きさ、色のヴァラエティ、それらを使った洗練された図案、と前述の公衆浴場とはまったく質の違うことが写真でもおわかりいただけるでしょうか? (写真IJKL)

写真下:IJKLパラッツォ・マッシモ国立博物館所蔵のセヴェルス邸跡の床モザイク

●見逃せない貴重な「オプス・セクティレ」
この博物館は「リヴィアの家」の庭園を描いた壁画や、彫刻などでもまだまだ見どころがたくさんあるのですが、それはまた別の機会に譲るとして、ここはモザイクに絞って最後に1つだけ、見逃せない展示がこちら。(写真@H)

カラカッラ浴場の中で言及した、オプス・セクティレという手法は、さまざまな色石を使って絵や模様を描くという点ではモザイクと同じですが、こちらはあらかじめ、石を必要な形にカットして埋めていくもので、一種の象嵌です。モザイクのテッセラのように、材料だけ先に色分けして用意して、どこにでも使えるのと違い、このために1つ1つ石を切るわけですから、それだけ手間とコストがかかります。 一部に金やガラスも使っているこの「作品」は、床ではなく壁の装飾に使われていたもの。同じ展示室に、ほかにいくつか、貴重な「オプス・セクティレ」があります。


著者プロフィール持丸 史恵(Mochimaru Fumie)
ヴェネツイア在住。横浜市出身。通訳、コーディネート業など。
2000年秋より1年ペルージャで過ごしたあとヴェネツィアへ。日本では縁もゆかりもなかった美術史を楽しくも苦しみつつ学び、ヴェネツィア大学を卒業。在学中より、美術史の中でもとくに古代から中世にかけてのモザイク美術にハマる。イタリアを中心に、各地に点在するまだ見ぬモザイクをいつか制覇したいと夢見ている。
日々の様子は、ブログをどうぞ: 「ヴェネツィア ときどき イタリア」http://fumiemve.exblog.jp


南イタリア モザイクの旅 データ
Dati
■カラカッラ浴場 Terme di Caracalla
開館時間:
10月最終日曜-2月15日 9:00-16:30
2月16日-3月15日 9:00-17:00
3月16日-3月最終土曜 9:00-17:30
3月最終日曜-8月31日 9:00-19:15
9月1日-9月30日 9:00-19:00
10月1日-10月最終土曜 9:00-18:30
月曜日はすべて 9:00-14:00
(いずれも入場は閉館1時間前まで)
入場料:6ユーロ
http://archeoroma.beniculturali.it/siti-archeologici/terme-caracalla

■パラッツォ・マッシモ国立博物館 
Museo Nazionale Romano - Palazzo Massimo

住所:Piazza dei Cinquecento, 67, 00187 Roma
開館時間:
火-日 9:00-19:45
月曜および1月1日、12月25日は休館
入場料:7ユーロ
http://archeoroma.beniculturali.it/musei/museo-nazionale-romano-palazzo-massimo



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