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ローマ モザイクの旅
15 Dicembre 2014

第5回
   黄金の12-13世紀


持丸 史恵


ローマのモザイクの歴史の中で、名実共に黄金時代と言えるのが12-13世紀でしょう。

1.サンタ・マリア・イン・トラステヴェレ聖堂
●ロマネスク様式のファサードにガラスのモザイク

前回、トラステヴェレ地区にあるサンタ・チチェーリア教会に残る9世紀のモザイクをご紹介しましたが、この地区で、ガイドブックなどでも必ず紹介されている、より有名なのがサンタ・マリア・イン・トラステヴェレです。
起源は古く、3世紀に建てられた教会ですが、現在の建物は12世紀に、イノケンティウス2世の時代に改築されています。広場に面したファサードは、アーケードの前室を擁したロマネスク様式。ローマのほかの大きく豪華なバロック様式の教会に比べると、こじんまりと地味に見えるかもしれません。(写真A)             

 写真トップ:@サンタ・マリア・イン・トラステヴェレ聖堂の聖母戴冠のモザイク  
写真上左:Aサンタ・マリア・イン・トラステヴェレ聖堂 外観    写真上右:B同、内観全体

そのファサード、小さいので見逃してしまいがちですが、バルコニーの上の方をよく見ると、その横一列のフリーズの部分、ガラスのモザイクが使われています。中央に玉座の聖母子、その両側は、彼らに捧げものを捧げる聖女たち。(写真C)
同じ、金地にガラスのモザイクでも、前回ご紹介した9世紀のモザイクは、聖母もキリストも聖人達も太い輪郭で、目を大きく見開いて不動に立つ、どちらかというとたくましく描かれていましたが、そのときに比べるとずいぶん線が細く、優美になっています。

写真上:C同、ファサードのモザイク、玉座の聖母子と聖女たち  写真上右:D同、後陣のモザイク 


●聖母マリアの物語を描く連続の絵巻
その傾向は、本堂の中に入ると、より明確になるでしょう。内部は度重なる改築、改装を加えられていますが、幸いなことに後陣のモザイクは12世紀のまま、残されています。半円蓋の中央は、聖母戴冠。(写真@)
聖母マリアに捧げられた教会らしく、聖母が主役です。その豪華な衣装はいわゆるビザンチン風。その両側はいつものように、聖人達が控えています。その下には、このモザイクの旅ではおなじみの、12使徒を示す12匹の羊たち。(写真D)

勝利門と呼ばれる、円蓋の手前の部分は、一番上に、4人の福音書家たちを示す動物たち。半円の両側は預言者たちです。
一番下の段は、この勝利門の部分から後陣のカーヴまで、聖母マリアの物語を描いた、連続の絵巻になっています。向かって左端が、「マリアの生誕」(写真E)。そして「受胎告知」・・・と続き、最後が「聖母マリアの御眠り」(写真F)。これもやはり、当時の東ローマ帝国、すなわちビザンツ帝国のギリシャ正教会では必ず描かれた主題で、天寿を全うした聖母は寝台に横たわり、弟子たちが周りを囲んでいます。中央に立つのは「お迎え」にきたキリスト。彼が抱いている赤ちゃんのようなものは、聖母の「魂」です。この部分は1291年に追加されました。

写真上左:E同、受胎告知のモザイク   写真上右:F同、聖母の御眠りのモザイク

こうしてテーマとしてははっきりとビザンツの影響を受けていながら、その表現は完全にイタリアの、ゴシックからルネサンスさえも予見させるスタイルなのは興味深いところです。ほぼ同じ時期、シチリアのパレルモで花開いた、ノルマン王朝時代のビザンツ様式のモザイクとはずいぶん異なっています。

2.サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂
●中央に聖母戴冠のモザイク

同じく聖母に捧げられた、サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂。(写真G) こちらは前々回にご紹介したように、巨大な聖堂の左右両壁に残るモザイク、また勝利門のモザイクも5世紀のものですが、後陣の半円蓋は時代が下って、1295年に作り直されたもの。(写真H)

写真上左:Gサンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂 外観   写真上右:H同、内観 

中央はトラステヴェレと同じく、聖母戴冠の図。ここでは冠を受ける聖母と授けるキリストは大きな輪の中に収まっており、その輪を天使たちが支えています。両脇に聖人が並ぶのも同じですが、聖母たちにくらべるとプロポーションがずいぶん小さく控えめです。  また、ここではしかし、羊たちが省略され、その下にすぐ、聖母マリアの物語が描かれています。「聖母御眠り」の図が中央です。

3.サン・クレメンテ聖堂
●植物の蔓の渦巻き模様の中央に十字架

そしてもう1つ、ローマのモザイクを語る上で忘れてはならないのが、サン・クレメンテ聖堂、個人的にもローマの教会の中でもっとも好きな場所の1つです。(写真I) 聖母にせよ、キリストにせよ、キリスト教の聖堂の中で、とくにその最も重要な場所にあたる後陣の中央の座を占めるのは、モザイクであろうがフレスコ画であろうが、大きく目立つ、強調された姿で描かれているのが普通です。

サン・クレメンテの半円蓋はそういう点で、これまでご紹介してきた半円蓋のモザイクとずいぶん違った様子をしています。金色の地は同じ、ただし全体を占めているのは植物の蔓の渦巻き模様。そして中央には十字架が。まるでそれ自身がエナメルか金細工のジュエリーのようなその繊細な十字架にはキリスト自身も埋め込まれていて、これが単なる十字架ではなく、磔刑図であることがわかります。実際、磔刑の定石通り、向かって左側にいるのは聖母、右側が聖ヨハネです。また、キリストとともに十字架に埋め込まれた12羽の鳩は、12使徒を表しています。(写真J)

写真下左:Iサン・クレメンテ聖堂 外観   写真下右:J同、内部 

●羊飼いや日常生活を営む人々のモザイクも
十字架の立ち上がる株の足元には水。その株から大きく成長した蔓は、「生命の木」。それは「私はぶどうの蔓である」と言ったキリスト自身であり、同時に、花が咲き、鳥の舞う天国の園とも取れます。実はこの原型とも言えるのが、やはり前々回ご紹介した、サン・ジョヴァンニ・イン・ラテラーノ聖堂の洗礼堂です。さらに面白いのは、このサン・クレメンテでは、その足元に羊飼いや、ニワトリに餌をやる人など、日常生活を営む人々が描かれている点です。ローマ時代の床モザイクのような図像は、たとえキリスト教的な暗示だとしても、ほかの教会の後陣ではあまり見かけないモチーフです。
その下はおなじみの羊たち。
モザイクのあるこの建物は12世紀のものですが、地下にはその前の時代の聖堂のフレスコ画など、さらにローマ時代のミトラ教の祭室なども残っており、これもローマらしい必見の教会です。コロッセオと、サン・ジョヴァンニ・イン・ラテラーノ教会の間、どちらからも歩いて行けるところにあります。


著者プロフィール持丸 史恵(Mochimaru Fumie)
ヴェネツイア在住。横浜市出身。通訳、コーディネート業など。
2000年秋より1年ペルージャで過ごしたあとヴェネツィアへ。日本では縁もゆかりもなかった美術史を楽しくも苦しみつつ学び、ヴェネツィア大学を卒業。在学中より、美術史の中でもとくに古代から中世にかけてのモザイク美術にハマる。イタリアを中心に、各地に点在するまだ見ぬモザイクをいつか制覇したいと夢見ている。
日々の様子は、ブログをどうぞ: 「ヴェネツィア ときどき イタリア」http://fumiemve.exblog.jp


ローマ モザイクの旅 データ
Dati
■サンタ・マリア・イン・トラステヴェレ聖堂  Basilica di Santa Maria in Trastevere
住所:Piazza S. Maria in Trastevere, 00153 Roma
Tel. 06 5814 4802
開館時間:毎日7:30-21:00
入場無料

■サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂  Basilica di Santa Maria Maggiore
住所: Piazza di S. Maria Maggiore, 42, 00100 Roma
開館時間: 7:00-19:00
入場無料
http://www.vatican.va/various/basiliche/sm_maggiore/vr_tour/index-it.html 
入場無料

■サン・クレメンテ聖堂 Basilica di San Clemente
住所:Via Labicaria, 95, 00184 Roma
Tel. 06 774 0021
開館時間 平日9:00-12:30, 15:00-18:00、日・祝日 12:00-18:00
聖堂は無料。地下の見学は5ユーロ
www.basilicasanclemente.com



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