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南イタリア モザイクの旅
15 Novembre 2013

第6回
  パレルモ近郊、モンレアーレとチェファル


持丸 史恵


1.モンレアーレの大聖堂
パレルモの、ノルマン宮のあるインディペンデンツァ広場からバスに乗って、一本道をひたすら上へ。パン屋さんや魚屋さん、生活臭あふれる道を過ぎ、やがて、くねくねと蛇行しながらさらに丘の上へ向かった終点がモンレアーレの町です。

  写真トップ:@モンレアーレ大聖堂、内観 後陣「祝福を与えるキリスト」  
写真上左:Aモンレアーレからパレルモを臨む   写真上右:Bモンレアーレ大聖堂、外観、横(入口はこちら) 

バスを降りて、パレルモを見下ろす風景にまずはタメイキ。そして町の中心にある大聖堂に入ると、その丘の上の小さな町にあるとは思えない、壮麗な教会に大きくタメイキをつくことになるでしょう。

●ノルマン・シチリア国王が1174年に建立
120x40mの巨大な聖堂は、ノルマン・シチリア王国の国王グリエルモ2世が1174年に建立したもので、パレルモの大司教を牽制するためと言われています。現在の入口は脇から。バジリカ(縦長)型、3廊式の壁、上半分を金地のガラスのモザイクが埋めています。その表面積6340平方メートル、12世紀末から13世紀前半にかけて作られました。

 写真上左:Cモンレアーレ大聖堂、外観、ファサード  写真上右:Dモンレアーレ大聖堂、内観  


前回紹介したパレルモのパラティーナ礼拝堂と、大きさは全く別次元ながら、モザイクで描かれた図像は実はとてもよく似ています。まず、主祭壇の奥、正面の半円蓋には「祝福を与えるキリスト」。両手を大きく広げた姿は、まるで堂内にいる信者たちを包み込むかのようです。すぐ下には「玉座の聖母子」、そして天使や聖人たちに囲まれています。両壁は新訳聖書、すなわちキリストの物語が描かれています。

写真上:Eモンレアーレ大聖堂、後陣「祝福を与えるキリスト」のモザイク

向かって左側、柱の下の方には「キリストに祝福を受けるグリエルモ2世王」。これはパレルモの、提督教会で同じような絵がありましたが、提督教会の方は、キリストも、グリエルモ2世の祖父にあたるルッジェーロ2世も、長身で面長、表情も固めでいかにもビザンツ風だったのが、このモンレアーレでは丸顔で、身長も低めになっています。

写真上左:Fモンレアーレ大聖堂、「キリストに祝福を受けるグリエルモ2世王」のモザイク、 写真上右:Gモンレアーレ大聖堂、「聖母に聖堂をささげるグリエルモ2世」のモザイク

これは、もともとの王の肖像というよりはおそらく、モンレアーレの方にはヴェネツィアのモザイク職人らによる、北イタリアのロマネスク様式の影響と思われます。一方、同じ位置の右壁には「聖母に聖堂をささげるグリエルモ2世」。

●際立った美しさの「天地創造」のモザイク
そして、かなり高い位置ではありますが、絵も大きく、より見やすいのが、中央廊の左右両壁でしょう。物語絵巻部分は2段に別れ、正面に向かって右奥上段から手前へ、右回りに進んで左壁へ、さらに右奥下段からもう1周りしているのも、パラティーナ礼拝堂と同じです。
神がまず天地を創造し、地と水を分ける。光と闇を分ける。このモンレアーレのモザイクの中でも、もっとも美しく、ポスターなどにも使われる絵がこちらでしょう。神が太陽と月と、星を造る場面です。青い地球を照らす太陽と月、闇の中に輝く星。まるで、宇宙船からの眺めを見たことがあるかのような構図です。

写真上左:Hモンレアーレ大聖堂「太陽と月と星の創造」のモザイク  写真上右:Iモンレアーレ大聖堂「人類の創造」のモザイク

ここでもやはり、神はアダムをお造りになったあと、休息します。右肩を落としてぐったりする姿が印象的です。そして翌日立ち上がって、1人でさみしがるアダムのために、かれの脇腹からイヴを誕生させるという大事業を果たします。

●馴染み深い「ノアの方舟」のモザイク
左壁に移って、イヴが蛇にそそのかされ、2人は禁断の果実を口に。神の怒りに触れて楽園を追い出されてしまいます。そのあと、人類初の殺人の罪をおかす、カインとアベル兄弟のエピソードへと続いていきますが、あまりキリスト教に馴染みがなくてもわかりやすいのが、もう一度右壁に戻って下段の、ノアの方舟のあたりでしょうか。

写真上:JKモンレアーレ大聖堂、「ノアの方舟」のモザイク

ノアが神の啓示を受けて大きな舟を建造し、動物たちを1組ずつ乗せ、やがて大水がきて、鳩をはなして外の安全を確認し、無事に舟から降りるまでの様子がこと細かに描かれています。その外側、すなわち側廊の壁には、キリストの数多くの奇跡が描かれています。重病人を訪ねては奇跡的に快復させたエピソードがほとんどですが、豪華な象嵌に縁取られ、金のモザイクで描かれたそれらの場面は、何か別のもののようにすら見えます。が、当時はその奇跡ことが尊くありがたいできごとであったのでしょう。

2.海辺の小さな町、チェファルの大聖堂
パレルモに滞在して、時間があったらぜひ訪ねていただきたいのがもう1つ、チェファルです。パレルモからローカル電車で1時間弱、中世の町並みを残した、海のリゾートの小さな町ですが、ここの大聖堂もまた、美しいモザイクで飾られています。

   写真上左:Lチェファルの海と旧市街  写真上右:Mチェファル大聖堂、外観

こちらは1131年に、パラティーナ礼拝堂と同じく、ルッジェーロ2世が建てさせたもの。残念ながら現存するのはごく一部ですが、それでも、コストも手間もかかるガラスのモザイクによる聖堂を短期間にこれだけ建てた、シチリア・ノルマン時代の勢いを感じるには十分です。

写真上:Nチェファル大聖堂、後陣モザイク 「祝福を与えるキリスト」

グリエルモ2世が世継ぎを残さずに亡くなったあと、シチリアはドイツのホーエンシュタウフェン家、そしてスペイン、フランス、と次々と支配者が変わっていきます。時代の流れ、好みの変化もあって、モザイク装飾による聖堂はモンレアーレを最後に、二度と建造されることはなかったのです。



著者プロフィール持丸 史恵(Mochimaru Fumie)
ヴェネツイア在住。横浜市出身。通訳、コーディネート業など。
2000年秋より1年ペルージャで過ごしたあとヴェネツィアへ。日本では縁もゆかりもなかった美術史を楽しくも苦しみつつ学び、ヴェネツィア大学を卒業。在学中より、美術史の中でもとくに古代から中世にかけてのモザイク美術にハマる。イタリアを中心に、各地に点在するまだ見ぬモザイクをいつか制覇したいと夢見ている。
日々の様子は、ブログをどうぞ: 「ヴェネツィア ときどき イタリア」http://fumiemve.exblog.jp


南イタリア モザイクの旅 データ
Dati
■モンレアーレ大聖堂
Cattedrale di Monreale

シチリア州 パレルモ県 モンレアーレ市
所在地:Piazza Guglielmo II, 1 Monreale, Palermo
開館時間:月-土 8:30-12:45, 14:30-17:30
休祝日 8:00-10:00, 14:30-17:30
季節、行事により変更あり
http://www.duomomonreale.it/

交通アクセス:パレルモ市内よりバス

■チェファル聖堂
Cattedrale di Cefalu
シチリア州 パレルモ県 チェファル市
所在地:Piazza del Duomo, Cefalu (Palermo)
開館時間:8:00-18:45  季節、行事により変更あり

交通アクセス:パレルモ中央駅より電車



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