JAPANITALY Travel On-line

 
イタリア旅行情報サイトJAPAN-ITALY Travel On-line
美味しい街「パルマ」だより
15 Aprile 2015

第4回 パルマの味、プロシュット・ディ・パルマ
Prosciutto di Parma
 

西村明美 
前回のパルミジャーノ・レッジャーノに引き続き、パルマの代表的商品プロシュット・ディ・パルマをご紹介していきます。

●パルマの毎日の食卓に
プロシュット・ディ・パルマも、パルミジャーノ・レッジャーノ同様、パルマの人には無くてはならない不可欠な食べ物です。薄くスライスしたパルマの生ハムは子供の離乳食から消化の弱いお年寄りまで安心していただけます。ですから家庭では年齢を問わず、頻繁に食卓に上がります。またパルマでは、一般家庭でも普通にスライサーを持っていて、ハムは塊で購入。食べる時にスライスして頂くという生ハムの味を知るのに、理想的な食べ方をしています。

写真トップ@プロシュット・エ・メローネ
写真上左Aアンティパスト(前菜)として   写真上右B家庭でスライス

アンティパスト(前菜)、おつまみ、パニーノ(サンドイッチ)など、スライスするだけで、時間帯を問わず口にする事が出来るイタリアのマンマにとって、ありがたい食品です。(写真1、2、3) また、北イタリアと言えども夏は30度を超える日の多いパルマでは、食欲の落ちる夏の食事には、あっさりとプロシュット・ディ・パルマに、パルマとマントバの県境で豊富に穫れるメロンで、プロシュット・エ・メローネを頂く事が多くなります。日本で夏に素麺を食べる感覚です。

写真上C気軽なおつまみにも

パルミジャーノ・レッジャーノチーズ同様、ヨーロッパ共同体からD.O.P.(原産地保護保証)を受けています。指定された土地で、決められた豚を使って、伝統的な方法で作り、検査に合格した物のみがプロシュット・ディ・パルマと呼ばれます。  

●長いプロシュット作りの伝統
それではプロシュット・ディ・パルマのルーツを探って行きましょう。
ローマ時代、ローマ人はローマから現在エミリア街道と呼ばれる道を通って北上し、パルマも通過していました。その当時パルマは、丘陵地は森で覆われており、低地は沼地でした。豚が育つのに最適の気候で、豚は沼に入って虫から皮膚を守り、森には豚の大好きな栗やドングリの木がありました。そして、第3回パルミジャーノ・レッジャーノでもご説明しましたが、パルマには良質な塩もありました。パルマ近辺は戦士達の移動の拠点となり、豚を半分にしてそこで穫れる良質の塩で塩漬けにして、冬の保存食としていたと言われます。

●中世には森の価値は豚の頭数
900年代、森の価値はその森に何頭の豚がいるかによって計られていました。豚の世話をする人はポルカリ(porcali)と呼ばれ、現在でもその苗字を持つ人が多いのも興味深いです。 13世紀に建てられたパルマの大聖堂の入り口のアーチ部分には、パルマの人の生活を彫刻してあり、そこにも豚は登場します。

写真上D13世紀建立のパルマの大聖堂の入り口のアーチ部分にも登場する豚

豚は秋になると森の栗やドングリを食べ、13世紀、パルミジャーノ・レッジャーノが作られるようになると、そのチーズ作りで残ったホエー(乳清とも呼ばれるチーズから出た水分)も与えられました。 ホエーには、糖分が残っているため、豚は、良く太り、ハムを作るのに適した質の良い肉となります。現在でもプロシュット・ディ・パルマになる豚には餌としてホエーが与えられています。                                   

●厳格に生産地域を指定
同じパルマの中でもプロシュット・ディ・パルマを作る事が出来る生産地はパルマ南部に限っています。東はエンツァ川、西はスティローネ川で、標高900mまで、そしてエミリア街道の5km南までと指定されています。

生産地は、川沿いに固まっています。それは、アペニン山脈を超えて、川を伝って下りてくるリグーリア海の風が適度にハムを乾かし、芳しい香りを醸し出すからです。この地域は標高の高い所や、低地と違い、日中と朝晩の温度差も大きくありません。海からの適度な湿度を持った風と砂利質の川縁の土地が、ハム作りに適したミクロクリマ(微気候)を作っているのです。パルマのこのミクロクリマがプロシュット・ディ・パルマを作ります。ハムに風を通すため、工場は、川の上流側と下流側に、長い窓が作られています。

●原材料は塩と豚のみ
プロシュット・ディ・パルマの原材料は、塩、その土地のミクロクリマ、そして豚のみです。プロシュット・ディ・パルマを作るための豚はイタリアの中北部の10州の認定された養豚場で健やかに育てられたもののみが原料となります。

●生産工程
<「形成」の工程>

9ヶ月で約150kg以上に育った豚は、認定されたと畜場でと畜され、パルマのハム工場まで運ばれます。ここで、入荷した豚の腿足から、さらにプロシュットを作るのに適している肉かどうかを確認し、そうでない物は、と畜場に戻されます。

写真上Eハムに適した肉かどうかを確認し、形成 

<塩漬けと乾燥、そして初期熟成の工程>
腿肉を形成して、塩漬けが行われます。マッサージをしてここで血液など不純物が肉から出て行きます。塩漬けは、2回行われ、最初は約1週間、2回目の塩漬けでは約2週間冷蔵状態で置かれます。(写真7マイスターによる塩漬け)

  写真上左Fマイスターによる塩漬け          写真上右G縦に吊るされたプロシュット

その後余分な塩をエアーで吹き飛ばし、横に並べられていた状態から縦に吊るして置かれます。静かに休ませて、約2ヶ月置かれます。昔は、11月からと畜を初め、2ヶ月経って2月から3月になり三寒四温の暖かい日が出てくると洗浄して、自然に乾燥。暖かい風が吹く4月ごろから熟成が始まるという風に、自然の摂理を利用して作られていました。
今でも適切な温度、湿度の状態の時は窓を開け放して自然の空気を入れます。

<「スニャトゥーラ」の工程>
肉の状態から約6ヶ月経ち自然に初期熟成が終わった物に、スニャトゥーラと呼ばれる工程が入ります。(写真9スニャトゥーラの作業)これは皮の付いていない肉の部分の表面が乾燥して堅くならないように、豚の柔らかい脂、塩、胡椒(工場によっては入れないところもあります)米粉を混ぜたものを付ける作業です。女性のデリケートな指が脂付けには向いていると言われます。 その後、12ヶ月まで熟成した物を検査員が検査します。

写真上H「スニャトゥーラ」の作業をする女性作業員 

●検査員による厳しい品質検査
この検査は品質検査機関であるIPQ(パルマ品質協会)から送られた専門検査員が行います。養豚場で生まれて3ヶ月で付けられた入れ墨、そしてと畜場、ハム生産者工場番号の焼き印でトレーサビリティーが取れている事を確認した後、品質検査をします。
この検査は、スピラトゥーラと呼ばれるもので、馬の脛の骨を血合い等の溜まり安い5カ所に差し込み、匂いをかぐ物で、この骨には、一瞬にして匂いを閉じ込め、一瞬にして出していくという特性があるため、検査員は驚くような早さで、検査して行きます。

写真上左I馬の骨で出来た検査用針    写真上右J検査 

こうして12ヶ月経ち、パルマハムの認定を受けたハムが市場に出て行きます。

●部分や熟成期間の違いで多彩な味覚
生産者は、一般的に大きな腿で脂の多い物は、長期熟成用に、比較的小さな物は20ヶ月程の熟成で出荷という風に区別しているようです。
同じ1体のハムでも切り始めの部分、お尻の部分にあたるクラッチャ(culaccia)は、脂が載って芳香で甘く、前腿の部分フィオッコ(fiocco)は赤身の多いあっさり味、足の部分ガンベット(gambetto)は塩味を感じない甘さと微妙に味が変わります。

パルマの街のサルメリア(ハム、チーズ、お惣菜などを売るお店)では、部分や、熟成期間の違うものを試食させてくれるお店もあります。皆さんもパルマでパルマハムを試食なさいませんか。


プロシュット・ディ・パルマ工場見学をオーガナイズしています。 ご希望の方は下記ブログ、またはhttp://akemi-nishimura.wix.com/sapore-italianoよりお問い合わせください。



西村明美(Nishimura Akemi) 
1996年よりパルマ在住。パルマという土地柄、食に関わる通訳の仕事が多く、ワイン好きが嵩じて、2003年イタリアソムリエ協会AISの資格を取得。2007年にパルマ人と結婚し、ますますパルマの伝統食品への興味が深くなり、パルマ伝統食品アドバイザーコース終了。2013年にパルミジャーノ・レッジャーノ協会のテイスターコース、パルミジャーノ・レッジャーノ紹介者養成コースを終了。
現在、パルミジャーノ・レッジャーノやプロシュット・ディ・パルマ、クラテッロなどの工場見学、研修や、アルマインターナショナルでソムリエコースを教えるペッシーナ先生のワイン講座、お料理教室をオーガナイズするかたわら、更に専門的にパルマの食品について勉強中。
ブログ  http://marchesell.exblog.jp/

http://www.japanitalytravel.com
©  JAPAN PLUS ITALY - MILANO 2013 All rights reserved.