JAPANITALY Travel On-line

 
イタリア旅行情報サイトJAPAN-ITALY Travel On-line
美味しい街「パルマ」だより
15 Maggio 2016

第9回 作曲家ヴェルディが愛した
スパッラ・コッタ・ディ・サンセコンド
Spalla Cotta di San Secondo
 

西村明美 
バッサ・パルメンサと呼ばれる、パルマ郊外のポー川沿いでは、昔から豚が飼育され、様々な種類のハム、サラミが作られていました。第5回でご紹介したクラテッロはEUヨーロッパからDOP(原産地保護呼称商品)の認証が与えられ、世界的に知られている商品ですが、その他にもコッパ(首の部分の肉を使った生ハム)、パンチェッタ(お腹の部分の脂の生ハム)、スパッラ(肩の部分の肉を使った生ハム)等がこの地方で生産されています。その中でも今回は、パルマ生まれの作曲家ヴェルディの好物であったと言われる「スパッラ・コッタ・ディ・サンセコンドSpalla Cotta di San Secondo」をご紹介したいと思います。

  トップ写真@スパッラ・コッタ・ディ・サンセコンド
写真下Aスライスして熱々に温めたスパッラ・コッタ。フルーツの砂糖辛子付けモスタルダ、オレンジとタマネギのジャムを添えて

●スパッラ・コッタ・ディ・サンセコンドの歴史
スパッラはイタリア語で「肩」、コッタは「加熱した」と言う意味、ディ・サンセコンドは、「サンセコンドの」。ですから文字通り「サンセコンドの加熱ハム」。サンセコンドはパルマから北に約25km行ったところにある小さな村です。

生の肉を塩漬けして熟成させるというのが基本の生ハムなのですが、肩の肉は頭の部分に近く、血管が多く、筋も多い、生ハムを作るのがとても難しい部位でした。そこで、上手く出来なかった生ハムを加熱して食べていたのですが、上手く熟成出来ている生ハムを加熱したら、さらに美味しかった。そこで、サンセコンドの村でこの独特な加熱ハムがつくられる様になったという事です。                                          

サンセコンドの村の図書館に所蔵される『San Secondo Arte, Storia, Attualita』という本の中に1184年7月8日の公証人のメモ書きとして、地主は農夫と口頭での契約をしており、地代を貨幣、鳥、フォカッチャ、くるみ、卵、麦、そして「スパッラ」で支払っていたと明確に記されています。また、1170年2月11日付けの羊皮紙にパラゾネの教会で書かれたと思われる記述には、「サンセコンドでは豚の肩肉を特別な方法で調理し、それは美食家の舌をうならせるものであった。」とあります。

●スパッラ・コッタ・ディ・サンセコンドの作り方
現在サンセコンドでスパッラ・コッタを作っている唯一の生産者、エマヌエレ・カヴァッリさんのところに伺って見せていただきました。35年スパッラ作りをしていらっしゃるベテランの職人さんです。 肉はサンセコンドに近いブッセートのと畜場から入ってきます。

(1)成型
肩の肉は皮付きの状態だと20-22kgあります。皮、いらない脂、筋を取り、成型します。

写真上Bベテランの職人による成型

(2)塩漬け
シチリアの塩に、胡椒(つぶと粉)、タイム、シナモン、丁字等で、香り付けして(写真CD)、1日前に潰したニンニクをつけた赤ワインをかけて、つけ込みます。(写真E)

写真下CDシチリアの塩に、胡椒(つぶと粉)、タイム、シナモン、丁字等で、香り付けする
写真上E赤ワインをかけて、つけ込む

この作業をもう一度1週間後に繰り返します。2回目はワインは入れません。 塩漬けの後、肩の骨を抜き、形を整え、牛の膀胱の皮に入れて、縛ります。(写真FG)

写真上左F塩漬けの後、肩の骨を抜き、形を整える    写真上右G牛の膀胱の皮に入れて、縛る

(3)乾燥
約3週間かわかします。(写真H)

写真上左H約3週間乾燥    写真上右I大鍋に入れ、約12時間煮込む

(4)調理
水、ワイン、月桂樹の葉を入れて80度に熱した大鍋に入れ、約12時間煮込みます。(写真I)

(5)家庭での頂き方
家庭では調理された物を購入し、いただきます。真空パックで3ヶ月保存出来ます。ナイフで切って、温かいうちに頂きます。(写真J)

  写真上Jナイフで切って、温かいうちに頂く

真空パックを開けて、スライスし、お皿に載せて湯煎で温め、熱々を頂きます。 パルマでは、フルーツのモスタルダ、タマネギのジャムなど、ちょっと甘みのあるものと一緒に頂く事が多いです。(写真A)

●パルマ生まれのヴェルディも大好物
ヴェルディは1813年パルマ郊外ブッセートのロンコレ村で生まれました。椿姫、アイーダ、リゴレットなど、数々のオペラを作曲した偉大な作曲家です。彼は子供の頃から生まれた土地を愛し、パルマで生産されるハムをヨーロッパで活躍している友人達に贈り、クラテッロ、プロシュット・ディ・パルマ、フェリーノのサラミ、スパッラ・コッタ・ディ・サンセコンドなどを紹介していました。中でもスパッラ・コッタは彼の大好物で、多くの友人達に細かな調理法を添えて、スパッラを送っていました。

サンセコンドの城を購入して音楽家のための老人ホームを建設したい(実際には1899年にミラノに建設された)と考えていた頃、1872年4月27日、領主である伯爵にこんな手紙が書いています。

「私はサンセコンドの領主にはならないが、この聖地のスパッラをあなたに送る事は出来る。いや、今朝もう既に鉄道便でお送りしましたよ。時期は少し遅いが(昔は冬の時期のみに作っていたから)、美味しいと思います。でも暖かくなる前に食べてください。どう調理したら良いかご存知ですか? 茹でる前、ぬるま湯につけて2時間置いて、、、、と詳しく調理法を書いて送っています。そして最後に、「それではきちんと調理して、どうだったかを教えてください。」とも付け加えてあった様です。美食家ヴェルディがこだわりを持って友人達にスパッラ・コッタを送っていたのが分かります。

ヴェルディ好物のスパッラ・コッタ・ディ・サンセコンド。現地で味わってみませんか。パルマ特産品工房を巡る旅をオーガナイズしています。 ご希望の方は下記ブログ、またはhttp://akemi-nishimura.wix.com/sapore-italianoよりお問い合わせください。



西村明美(Nishimura Akemi) 
1996年よりパルマ在住。パルマという土地柄、食に関わる通訳の仕事が多く、ワイン好きが嵩じて、2003年イタリアソムリエ協会AISの資格を取得。2007年にパルマ人と結婚し、ますますパルマの伝統食品への興味が深くなり、パルマ伝統食品アドバイザーコース終了。2013年にパルミジャーノ・レッジャーノ協会のテイスターコース、パルミジャーノ・レッジャーノ紹介者養成コースを終了。
現在、パルミジャーノ・レッジャーノやプロシュット・ディ・パルマ、クラテッロなどの工場見学、研修や、アルマインターナショナルでソムリエコースを教えるペッシーナ先生のワイン講座、お料理教室をオーガナイズするかたわら、更に専門的にパルマの食品について勉強中。
ブログ  http://marchesell.exblog.jp/

http://www.japanitalytravel.com
©  JAPAN PLUS ITALY - MILANO 2013 All rights reserved.