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サルデーニャ「食」の旅
15 novembre 2009

第2回 州都カリアリ周辺と島の南地方
「食べ物を分かち合うとき、食卓にはエンジェルが」



文・写真/藤田智子 

前回お知らせしたように今回からはサルデーニャ島を大きく5つに分けて主に"食"をテーマにご紹介していきます。まずは州都のカリアリ周辺と島の南地方です。

1.異国文化の交差する港町 州都カリアリ
サルデーニャの玄関口となる州都カリアリは紀元前7世紀頃に海上交易で栄えたフェニキア人により造られた、地中海の中でも重要な商業都市として栄えてきた歴史ある港町です。
歴史を遡るとカルタゴから古代ローマ、ヴァルダンからヴィザンチン、その後ピサ、アラゴン、ピエモンテと様々な民族に支配されてきたカリアリは異国文化が交錯する町となっています。

●興味深い歴史的建築物の集積
歴史的地域としてはカステッロ(Castello)、マリーナ(Marina)、スタンパーチェ(Stampace)、ヴィッラノーヴァ(Villanova)、の4つのに分けられ、共に歴史を歩み、発展してきました。
1217年に都市化が始まったとされる小高い丘の上のカステッロ地区には要塞の中に集約されたいくつかの美術館やサンタ マリア大聖堂(Cattedrale Santa Maria)、エレファンテの塔(Torre dell'Elefante)、サンレミー城壁(Bastione di Santi Remy)など見応えのある歴史的建物が集まっています。カステッロ地区の足下に位置するマリーナ地区は海へと向っており、漁師やカリアリ市民の住居、お店やBarが立ち並び、常に地元の人々や観光客で賑わっています。

また、カルロフェリーチ大通りでマリーナ地区と隔てた町の西側のスタンパーチェ地区ではは5月1日のサルデーニャ最大のお祭りサンティフィジオで知られるサンティフィジオ教会や古代ローマ帝国最大の象徴として残る古代円形劇場(Anfiteatro Romano)の遺跡が見られます。ヴィッラノーヴァ地区は町から郊外へと広がり自然が多く見られる地域となっています。

●ピンクフラミンゴと塩田
ヴィッラノーヴァ地区からさらに東方面のカリアリ湾はカリアリと隣町のクアルトゥ サンタ エレナ(Quartu Sant'Elena)になり、共に塩田があり、ピンクフラミンゴの姿を見かけることが出来ます。現在でも塩を作っているのはクアルトゥ サンタ エレナの塩田のみとなりました。サルデーニャの家庭では地元のこの塩を使うことが多いですが、かなりしょっぱく初めて使ったときにはうっかり味見をせずにパスタを湯がき、塩辛くなってしまったことがありました。

また塩田の向こうはポエット(Poetto)海岸が続き、一年中周辺の人々の憩いの場となっていて、ウニの解禁時期(11〜4月)には獲れ立ての新鮮なウニを食べさせてくれるウニバーが軒並みオープンします。殻付きのウニをスプーンですくって食べると口一杯に海の香りが広がります。パスタもミートソースのようにウニがたっぷりかかっていて、う〜ん、シアワセ・・・、の味です!
トップ写真:@オルタチュズスにある小麦博物館にて
写真左・右:ABカリアリにある「サンベンデット市場」 

●イタリア最大規模のサンベネデット市場
イタリアでも最大の大きさを誇るカリアリのサンベネデット市場は一見の価値があります。外観は素っ気ないものの、中に入るとその広さと人の多さにびっくり。1Fは魚、2Fは肉類と野菜、と分かれており、陳列の仕方ひとつ取っても色使いといい、並べ方といい、芸術的でセンスの良さが伺えます。ただ子豚や子羊が丸のままぶら下がっていたり、頭の皮をペラッと剥がされたまま並んでいたり、と見慣れない日本人にはちょっとグロテスクかも。

専門店も多く、馬肉専門、臓物専門、カタツムリ専門店に1Fの魚のフロアーでは貝専門があり、ムール貝が生のままレモンを添えて陳列されています。そう、こっちではムール貝は牡蠣のように生でも食べるんです。尤も私は未だちょっと怖くて試してません〜。他にはウナギをニョロニョロ生きたまま売っていますが、カリアリの空港近くのアッセミーニと言う町の郷土料理にパン生地を鍋に見立て、中に生のウナギのぶつ切りとジャガイモ、香草などを入れてオーブンで焼いたサ パナーダ(Sa Panada)という一品があり、友達が作ってくれたときに生きたウナギを使ってました。日本ではウナギ屋さんに行かない限り見かけないし、家でさばくことなんて皆無に近いですよね。 話がそれてしまいましたが、サンベネデット市場のお店の人たちはカメラを向けるとポーズを取ってくれり、誰彼となく案内役をかって出てくれたり、人懐っこくって親切です。中には日本人と見るとお客さんそっちのけで相手をしてくれるので困ってしまいますが(笑)

写真左:C考古学上で有名な史跡のある町「ノラ」、右:D可愛らしい港町のリゾート地「プラ」

2.南西のサン・ピエトロ島へ
カリアリを離れ、海岸沿いを南へ少し走るとサルデーニャで最初に出来た町と言われている考古学上重要な町の遺跡があるノラ(Nora)に着きます。遺跡は紀元前9〜8世紀にはすでにフェニキア人により建てられたとされており、現在残っている建物は古代ローマ期のものです。ノラの遺跡の位置する岬はプラ(Pula)という町の郊外にありますが、プラはピンク色の建物が目を惹く、小さいながらも可愛らしい港町でリゾート地として観光客が近年増えています。

●マグロ漁で知られるカルロフォルテ
美しい海岸沿いを先に進み、島の西側に出ると人口地峡により陸続きで行ける小島がサンティアンティオコ(Sant'Antioco)、貝から獲れる海のシルクが有名です。(現在は保護のため獲れなくなりました) サンティアンティオコの先端にあるカラセッタ(Calasetta)からフェリーに約30分ほど乗るとマグロ漁で有名なサン ピエトロ島(isola San Pietro)の町・カルロフォルテ(Carloforte)に到着。1736年までは人が住んでいなかったサン ピエトロ島カルロフェリーチ3世がチュニジアのタバルカに住んでいたリグーリアの珊瑚漁師協会にこの島を提供し、それ以後リグーリア建築で建てられた家が現在でも残り、漁師話やその料理(例えばタバルカのクスクス、ジェノバ風フォカッチャなど)が語り継がれて来ました。

マグロ漁網(Tonnara)のあることでも知られており、カルロフォルテで毎年5月の末から6月の初めにかけて行われるマグロ祭りでは昔のマグロの追込み漁マッタンァ(mattanza)ーマグロを追い込み、叩いて獲る方法ーを見ることが出来ます。サン ピエトロ島で獲れたマグロは日本人が買い取ることが多いそう、皆さんもひょっとしたら口にしているかも?

3.島の内陸を北上
さて、サン ピエトロ島を後にして再びサルデーニャ本島に戻り、今度は海から少し内側に入り、北上しましょう。この辺りではいくつかの鉱山跡が見られます。鉱山の歴史は7000年前にも遡り、住人たちは銅や銀を採掘・鋳造していました。その後、地中海全域にサルデーニャの地下資源を運ぶフェニキア人が現れ、また中世にはピサ人により銀鉱山に新しい活力を与えらました。イグレシアス(Iglesias)、グスピニ(Guspini)、アルブス(Arbus)郊外には鉱山により繁栄していた当時の生活ぶりを垣間見られる集落や家などがあります。

●サフランの産地 サン・ガビーノ
グスピニ郊外にある鉱山跡で現在博物館となっているモンテヴェッキオ本部のお屋敷(Palazzo della direzione di Montevecchio)からもう少し東に向うとサルデーニャの赤い金と呼ばれているサフランの産地、サン ガビーノ(San Gavino)があります。

11月最初の2週間ほどだけ花が咲き、雌しべの花柱の部分をひとつひとつ手で取り、乾燥させたサフランはその製造過程を見るだけでも高価なのが頷ける貴重なものです。
もちろんサルデーニャでも高価なものではあるんですが、贅沢にもパスタやパン、お菓子の生地に練り込んだり、ソースの色付けに使ったり、と各家庭にも常備され使われています。

例えばサルデーニャ独特の粒々パスタ、フレーグラ。島全域で作られますが、地域によって少しずつ材料が変わり、この辺りで作られるフレーグラは水分に卵黄とほんの少しの水で色出ししたサフランを使います。尤も人によっても材料は変わってくるので一概にはこの地域のフレーグラの特色、とは言えないかも知れませんが。
また、サン ガビーノではサフラン祭りが毎年11月頃に行われ、サフランを使った様々なメニューが町のリストランテなどで味わうことが出来ます。

写真左・右:EFサンルリのお祭り風景 

●サンルリでは城を中心に町をあげてのお祭り
サン ガビーノから更に内側へと移動し、サルデーニャの主要道路、国道カルロフェリーチ(通称131号線)のすぐ脇にある町サンルリ(Sanluri)で毎年9月の終わり頃に行われるお祭り(Festa del Borgo)はお城を中心に町を挙げてのお祭りで地元の人々や観光客で賑わいます。

淡い色使いの家が建ち並ぶ古い町並みの角々に飾られた可愛らしい陶器のレリーフ。道端では小さなオーブンを持ち出し、典型的なこの地域のおっきなセモリナ粉の田舎パン-チブラッジュ(Civraxiu)-を焼いて熱々を売る人、その場で腸詰めにした生ソーセージをこれまた即席の鉄板で焼いて売る人。古い大きなお屋敷の庭を解放しての昔ながらの女性の仕事-毛糸を紡いで編みもの、古〜い鉄のアイロンでアイロン掛け、刺繍、レース編み、お菓子作りなど-や変わって男性の仕事-鉄打ちや馬具作りなど-のデモンストレーション。

ある年のお祭り時、日本人と見て、英語で話しかけて来たおじさん。でもでも私は英語が出来ないのよね〜(笑) 何でも若い頃は貿易の仕事をしていてアジア、日本にも行ったことがあるのだとか・・・。今はすでに定年になり、故郷のサンルリに帰って気ままな生活をされているそう。ちょうどお昼時だったので出来れば家に招待したいけど、今日はお客さんがたくさん来るので無理・・・、と、生ソーセージとパンをもらってくれて(どっちも友達だから、と買うのではなく!) パニーノにして、ご馳走してくれましたー!作り立ての生ソーセージに焼き立てのパン、お世辞抜きにとっても美味しかったです。
写真左・右:GHオルタチュズスにある小麦博物館にて

●小麦博物館でパン作りに挑戦
素晴らしい小麦文化、と前回書きましたが、サンルリを少しカリアリよりに戻ったところの町、オルタチェズスOrtacesusには地主さんのお屋敷を改装して作られた小麦博物館(Museo del grano)があります。小麦〜粉挽き〜パン・パスタ作りと一通り係の女性が説明しながら案内してくれその後予約さえすれば、一人からでもパン・パスタ作りのミニレッスンをしてくれます。

私はワクワクしながら細工パン作りに挑戦。小さなハサミやナイフを使って生地に切り込みを入れて形作っていきます。教えてくれる彼女の手元を見ながら見よう見まねでやってみるけど・・・、元来、不器用で大雑把な私が作ったパンはやっぱり大雑把!(笑) でもまぁ、寝かせて石釜で焼くと何とか見られる形になりました。今もこのパンは家に大事に飾ってあります〜。
また、9月〜10月にかけてこの博物館の庭では小麦祭りが行われ、焼き立てのパンや手作りのパスタ、この町特産のダチョウの肉を使ったカルパッチョから煮込みまで、町の人たちの協力で大振る舞いしてくれます。これが無料ということもあって大盛況(笑)!ちなみにダチョウの肉はあっさりしていてちょっと鶏肉っぽいかな・・・?

●世界遺産「ヌラーゲ」で知られるバルミニ
この地域で忘れてはならない観光地、バルミニ(Barumini)。オルタチェズスを再び北上、カリアリから約50Km離れた町でユネスコの世界遺産にも認定されているヌラーゲ(石の古代遺跡)の集落ス ヌラジ(Su Nuraxi)があるところです。紀元前13世紀から15世紀にかけて造られたと言われていますが、ヌラーゲとしては最良の状態を保たれています。中央部分は4つに分かれた城壁とそれらに囲まれた井戸と中庭を持つひとつの塔の5つから成り立ち、周辺には多くの小屋から成る村落(長の住処と特別に身の回りの世話をする人達の住処)が取り巻いています。イタリア語の他、英語のガイド付きで約1時間で見学出来ます。

4.この地域の食の特色
さて、今回はカリアリ周辺と島の南地方をグルッと回って来ましたが、この地域の"食"の特色に少し触れてみたいと思います。
写真左:I捕りたての「ウニ」、右:Jサルデーニャ独特の「サ・パナーダ」

●新鮮な海の幸の食メニュー
港町カリアリ周辺では前述のサンベネデット市場の魚フロアーの充実ぶりでもわかるように新鮮な海の幸に恵まれています。今でこそ魚は高価なものになりましたが、その昔は安くて簡単に手に入る手短な食材として食卓にのぼることが多かったそうです。
現在ではリストランテのメニューにもあるそれら代表的なものとしては小さなハゼやスズキの一種など小魚のミックスフライ(Fritto Misto)、タコとジャガイモのサラダ(Insalata di Polpo)、ホシザメを湯がいてクルミソースで合えたブリッダ(Burrida)。珍しいイソギンチャクにセモリナ粉をつけてフライにしたオルジャラス(Orziaras)は熱々のところを頬張るとクニュッとした何とも不思議な食感で一度お試しあれ。

またカリアリの西に位置するサン ピエトロ島では先にも触れたようにマグロ漁が行われるのでマグロを使った料理が有名です。マグロは新鮮なものはもちろん、オリーブオイル漬けにした瓶詰めや缶詰のものも美味しい!また、マグロのカラスミ(Bottarga)も作られていますがボラのカラスミ比べると辛くて私はちょっと苦手です・・・。

●珍しいラビオリやプリモ
カリアリから南、海岸沿いの地域ではこのように海の幸が多いですが、この地方で豊富なのは海の幸だけではなく、内陸にちょっと入るとカンピダーノ平原で飼育されている羊を筆頭とする家畜類も食卓には欠かせない食材です。肉はもちろん、臓物類など余すところなく使って料理します。

またこの辺りでは他の地方には見られない珍しいラビオリがあり、見た目は普通のラビオリ(詰めものパスタ)に、羊のフレッシュまたはリコッタチーズとレモンの皮に砂糖を加えて甘くした中身が入っています。それをセージバターやトマトソースと絡めて食べるので何だか変わったお味・・・。もちろんドルチェではなく、ちゃんとしたプリモの一皿です。でも考えたら和食の味付けには砂糖はよく使うので、あり、なんですよね〜。ただイタリア料理の中ではちょっと珍しい味付けかも・・・。

食卓に欠かせないワイン、海の幸と合わせるのは白のヌラグス(Nuragus)。内陸の肉料理に合わせるのはやはりカンノナウ(Cannonau)、またはモニカ(Monica)。

そしてドルチェは島の代表的なドルチェがそうであるようにこの辺りもアーモンドベースの焼き菓子が多いです。島中で作られるアマレッティですが、この地方のアマレッティは他の地方に比べて数段やわらかく、口当たりが優しいです。

最後にカリアリ周辺に古くから伝わる諺、"食べ物を分かち合うとき、食卓にはエンジェルが訪れる"(bucconi sparziu, s'angelu si 'nci sezziri)。みんなでテーブルを囲み、分け合って食べるとしあわせになる、ということでしょうか、ホスピタリティ溢れる人々の言葉、ですよね。


サルデーニャ「食」の旅  著者プロフィール
藤田智子 Fujita Tomoko
Delizie d'Italia 代表。 

大阪市内で洋風家庭料理の店を4年ほど営んだ後、2000年よりピエモンテ・アスティ郊外の アグリツーリズモに住み込み厨房を手伝いながら家庭料理を学ぶ。 その後イタリア各地のアグリツーリズモを周り、家庭料理を習得する。2003年 前年に訪れたサルデーニャに魅せられ、ベースをサルデーニャに移す。 その後、サルデーニャと日本を行き来し、サルデーニャ文化を広めるため、 "食"をテーマに現地の料理教室や滞在のアレンジを行う。 また、企業向きの取材コーディネートなども手がけている。「 サルデーニャに興味のある方、お越しになりたい方はぜひご連絡下さい! 」
サイト: http://www.delizie-italia.com
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