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サルデーニャ「食」の旅
15 luglio 2010

第6回 島東側のオリアストラを南下
― 昔からの家庭の味「貧しい料理 "Cucina Povera"」を大切に―



文・写真/藤田智子 

カリアリから西側を北上、内陸部も制覇、残すところは島の東側のオリアストラ(Ogliastra)〜南下するのみとなりました。この辺りは美しい海岸沿いが臨めるのはもちろんですが、その反対側にはゴツゴツした岩山がそそり立っており、トレッキングのメッカとなっています。またオロゼイ湾(Golfo di Orosei)からいくつかの入り江を回る海からのエクスカーションを楽しむことも出来ます。

トップ写真:@オリアストラの代表的なパスタ「クルルジュオネス」
写真左:Aオロゼイの美しい海岸、右:Bオロゼイのマリア像を運ぶ巡礼祭

1.美しい海岸のオロゼイから出発
●マリア像を運ぶ巡礼祭
前回ご紹介したヌオーロから車を飛ばして小1時間、オロゼイ(Orosei)の海が見えて来ます。今回はここから出発しましょう。季節を問わず、休日になれば散歩をする人々で溢れる美しい海岸を持つオロゼイは旧市街地も可愛らしくまとまっており。ブラブラ見て歩いても飽きません。また海沿いには海に続くチェドリーノ川(Fiume Cedrino)も流れており、ここもまた人々の憩いの場となっています。チェドリーノ川河口近くにはサンタ マリア エ マーレ教会があり、毎年5月の最終日曜日には漁師の小舟で川を渡りマリア像を運ぶ巡礼祭が行われます。民族衣装を着けた人々、色とりどりの花々で華やかに飾られた小舟、最後にマリア像を担いだ人たちと続き、町中を練り歩いて川へと入っていきサンタ マリア エ マーレ教会へと向かいます。この河口の上の方はふたつの支流に分かれており、北側は人口運河に入り南側は野鴨やオオバンなどの野鳥が生息する湿地帯、ペトロス沼(Stagna Su Petrosu)へと続いています。

何年か前にオロゼイの知人にこのお祭りに誘われて行ったんですが、漁師たちが小舟を競うように思い思いに飾り付ける様子は圧巻でしたー。そのとき、プランツォにご馳走になった手作りのニョケッティがそれまで見たことがなかったような形をしていました。コロンとして粒々の模様がついいてて可愛い。聞けば何と、チーズ卸しの裏を使って形づけているとのこと。後になってわかったのはオリエナ〜この辺りで作られるニョケッティの形だとか・・・。イタリアの家庭には絶対あるチーズ卸し、意外なものを使って形つけていたのですねー、生活の知恵・・・?

●ドルガリの岩でできた建物
オロゼイを少し南下したところにあるドルガリ(Dorgali)は火山(すでに死火山となっている)による岩で出来た昔からの建物を見ることが出来ます。ドルガリはなめし革、陶器、織物でも有名で町の中心を歩くとあちこちにそれらの工房があります。また世界的にも知られている海岸沿いのブエ マリーノ洞窟(Grotta del Bue Marino)もドルガリ市にあります。ドルガリに行ったらよく見かけるドルチェがス コッコーネ(Su Coccone)。セモリナ粉と砂糖・卵・イーストで作った生地に中にモストコット(ワインのためのブドウの絞り汁-主にここではカンノナウを使っている-をコトコトと何時間もかけて煮詰めたもの)を詰めたお菓子で生地は可愛い模様付きです。

写真左:Cバウネイの民族衣装を着た人々、右:Dバウネイの食の風景

●バラエティに富んだ景色のバウネイ
ドルガリのゴノーネ湾(Cala Gonone)からシシーネ湾(Cala Sisine)〜マリオル湾(Cala Mariolu)〜ゴロリッツェ湾(Cala Goloritze)〜モンテサント岬(Capo Montesanto)と得も言われぬ美しさの海岸沿いを更に南下し、ゴツゴツした岩山を越えて少し内側に入ると海と山・カルスト地形の渓谷・玄武岩の高原などバラエティに富んだ景色を堪能出来る町、バウネイ(Baunei)が現れます。バウネイの名はギリシャ語で"金属を作る、または石灰岩から石灰分を抽出するための窯"を意味する"Bainos"から来ていると言われており、その名のように地形が凹地でそこに溜まった雨水を金属や石灰岩のために使われていたそうです。
伝統的な儀式として数えられる"Pletare"は結婚式の前夜、新郎の家から"Su Paralimpu"と呼ばれる火のついたキャンドルの入った棒を新婦の家まで運ぶものです。この昔ながらの結婚式の様子は春に行われるお祭りで再現され、見学することが出来ます。その結婚式のためのドルチェ"Su Cumbidu"は新郎新婦の家族によって作られるアーモンドとオレンジの皮をハチミツで固めたお菓子でオレンジの葉っぱに乗せられ結婚式のミサのすぐ後に配られます。
また、パーネカラザウによく似ていますがカラザウより少し厚めで歯応えのあるパン、ピストックゥ(Pistoccu)もこの辺りでよく食べられます。カラザウ同様、保存食として作られるようになったパンです。
写真左:Gゴルゴ高原、右:Hゴルゴ高原に生育する野生の豚・ヤギ・ロバ

●野生の豚やヤギが生息しているゴルゴ
バウネイのフラジィオーネ(Frazione-ひとつの村だけど行政的には隣接する市町村に属する集落)のサンタマリア ナヴァレーゼ(Santa Maria Navarrese)では毎年フェッラゴースト(Ferragosto-8月15日の聖母被昇天の祝日)の後の土曜日に放牧民文化を讃えたヤギのお祭りが行われ、たくさんものヤギ・子ヤギのローストが振る舞われます。この地域のヤギは水さえも飲まず、地中海低木地帯の新芽のみを栄養に育つためそのミルクも肉も独特の味わいがあります。また、内蔵も横隔膜で網状に巻かれ炭焼きされた"Sa Nappa"は代表的な伝統料理です。

バウネイ郊外には野生の豚やヤギ・ロバが生息しているゴルゴ(Golgo)高原があり、周辺をトレッキング出来るようになっており、すぐ隣りには18世紀に建てられたシンプルな白い造りの田園的なサン ピエトロ教会(Chiesa Campestre di San Pietro)が広〜い高原にポツンと建っています。
写真左:G広い高原に立つサン・ピエトロ教会

2.オリアストラの県庁 トルトリの町
●アルバタックスの赤い岩
さぁ、まだまだ南下して行くと見えてくるトルトリ(Tortoli)は少し内陸に南下したところにあるラヌセイ(Lanusei)と共にオリアストラの県庁となっています。トルトリには1969年初めてジェノバからの船が到着したアルバタックスの港に加え、便数が少ないのであまり知られていませんがイタリア本土と通じている飛行場があり、本土と島の東側との連絡口となっています。

写真左:Hアルバタックスの「赤い岩」、右:I「トッレ・ディ・バリ」

そのアルバタックス(Arbatax)には有名な赤い岩"Rocce Rosse"があり、自然に出来たモニュメントを見学に来る人々で夏場以外でも賑わっています。
アルバタックスの名前はアラブから来ており、今日の海通りを支配していたサラセン人(アラビア人)の塔"14の塔"の意味があると言われています。Ponzaの近くから漁師村が誕生しましたが、現在ではトルトリの海のフラジィオーネで商業港の基となり、またここ10年ほどはイタリア本土からトルトリやオリアストラへと訪れる観光船が着く場所として発達して来ました。まさにサルデーニャの中央・東側海岸へと導く重要な港ですね。

●バリサルドのジャガイモ料理
アルバタックスから約10Km強ほど走ると17世紀のスペイン人によって侵略者たちの侵入を防ぐために建てられた塔があるトッレ ディ バリ(Torre di Bari)に到着。ここは砂浜と小さな松林があり、浜辺は海水浴場として賑わいます。そのトッレ ディ バリがあるバリサルド(Bari Sardo)は豊富なブドウ畑や果樹園を持つ広大な農業地帯として知られており、織物でも有名な町です。
バリサルドの伝統的な一品がコッコイ プレナ(Coccoi Prena)。茹でてつぶしたジャガイモに炒めた玉葱・ペコリーノチーズ・ミントの葉・オイルを混ぜたものを粉とジャガイモで作った生地に包み6つのタックを寄せて(上は開いたまま)オーブンで焼いたもので元々はパスクアに食べられていたものだそうです。
写真左:Jジャガイモ料理「コッコイ・プレナ」、右:Kパスタ「クルルジュオネス」

●代表的なパスタ「クルルジョネス」
オリアストラの代表的なパスタにクルルジュオネス(Culurgiones)がありますが、ちょうどその中身と同じです。クルルジュオネスは粉と水のみで練った生地を円形に薄く伸ばした生地に中身を包んで閉じていくんですが、その綴じ目が麦の穂のように見え、見た目が可愛いパスタです。しかし、慣れないと餃子を包んだようになっちゃいます。

先日、バリ サルドの食品屋さんでコッコイ プレナを買おうと思ったら、その横にお焦げをペタッと薄〜くして焼いたようなものが・・・?聞いたら、コッコイ プレナの中身だけを薄くしてオイルをひいたフライパンで焼いたものでこれもこの辺りの食べものだとか・・・。ちょっと名前は忘れましたが(スミマセン!)周りは焼きすぎていたのか、ちょっと固かったけど、中心の方はクニャッとして(あまり美味しそうな表現じゃないですね〜 笑)これはこれで美味しかったです。

●赤ワイン「カンノナウ」で有名なジェルズ
バリ サルドをもう少し内陸に入ったところの町ジェルズ(Jerzu)は赤ワイン"カンノナウ"が有名でワインの町、として知られています。また多くのヌラーゲがあり、そこからは先史時代から農業が盛んな町であったことがうかがえるそうです。
ジェルズを訪ねたら一度試してもらいたいのがパーネ コンチュ(Pane Conciu)-ワイン・アーモンド・ハチミツ入りのパン(ドルチェ)にタックラス(Tacculas)-ミルトと共に焼いたツグミ、カンノナウと一緒にどうぞ!また8月の最初の日曜日にはワイン祭りが行われ、ヴェンデミア(ワインのためのブドウ摘み)のときの牛車を使い、伝統的な衣装を着けた町の人たちがワインやドルチェを振る舞います。

3.カリアリ県の南東部へ
●ムラベラの美しい柑橘類

さて、一気に南下していよいよオリアストラ県からカリアリ県へと入って来ました。県はカリアリですが地域的にはサッラブス(Sarrabus)と呼ばれ、至るところにコルベッツォロ(Corbezzolo-西洋ヤマモモ)、レンティスコ(Lentizco-乳香樹)、ミルト、レッコ(Lecco-トキワガシ)などの植物が生い茂っています。(森林浴にもってこいかも・・・?) この辺りはティレニア海に沿っており、海水浴場となってるところも多く、もちろん他の海岸同様、魅惑的な美しさを誇っています。

サッラブスの中でも中心的な町のひとつ、ムラベラ(Nuravera)は美味しい柑橘類が穫れることで有名でその種類もレモン〜オレンジ〜マンダリンオレンジ〜グレープフルーツ〜クレメンティーヌなど豊富です。4月には柑橘類祭りが毎年行われ、ムラベラだけでなく、島中のいろんな町村のフォークロアダンスのグループが集まり、伝統衣装で町を練り歩き、踊りを披露するなど、たくさんの人で賑わいます。

ムラベラの海岸沿いにはスペイン人により海賊の襲撃に対する砦として建てられたカポ フェラート(CapoFerrato)、トッレ サリーネ(Torre Saline)、トッレ ディ カッヴァッリィの3つの塔があります。

●ヴァカンスの地 ヴィッラシミウス
南東の先端にあるカルボナーラ岬(Capo Carbonara)を含むヴィッラシミウス(Villasimius)はホテルや別荘が点在するヴァカンスの地として頭角を現して来た町です。夏場以外でも週末の夕方ともなればカリアリ方面へと帰る車が行列していてなかなか前に進めません。カルボナーラ岬の先にあるカヴォイ島には1800年代半ばに建てられた灯台があり、そこから壮大な眺めが楽しめます。カヴォイ島は現在カリアリ大学の中央研究所の本拠地となっています。

東側でも海岸沿いを少し離れ、内陸に入ると小さなディーゼル機関車トレニーノ ヴェルディ(Trenino Verde)がアルバタックス〜マンダス(Mandas-カリアリを約70Km北上したところにある町)間の160Kmを5時間かけてゆっくりと走っており、自然の景色を満喫出来ます。ただ、基本的に夏場だけの運行なので残念ながら私も毎年乗りのがしており、今年こそは!と思っています。上下とも一日2本ですが、その日のうちに往復出来るよう、時間的にはうまくなっています。

4.食材の基本は大地の恵み
●自然農法でできた最高品質のジャガイモ

島の東側を駆け足で南下してきた今回の旅の締めくくりもやはり"食"について。

オリアストラ周辺の食材の基本となっているものは大地の恵み:ジャガイモ・玉葱・スパイス、そしてその傍らには常にチーズや肉類がありました。特に食材の女王としていろんな伝統料理に登場するジャガイモはバルバジァ〜オリアストラに位置するジェンナルジェントゥ(Gennargentu)の山間で作られ、美味しい山の湧き水を使った自然農法で出来た最高の品質を誇ります。 代表的な伝統料理は何はともあれジャガイモとペコリーノチーズの詰めものパスタ、クルルジュオネス。しかしそのクルルジュオネスも村々によって、かなり形も少しずつ中身も違い(例えばミントではなく、黒コショウをいれるところ、など)、また合わせるソースもバラエティーに富んでいます。
写真左:Lカプレット(子ヤギ)の胃に入ったチーズ

●搾りたての子羊のミルクでつくるチーズ
その昔、羊飼いやブドウ栽培者はそれらの食材となるものを列車に乗せてカンピダーノまで直接運んだり、または途中で物品に換えて行き、再びに物々交換していました。今日はチーズやワイン、更にはクルルジュオネスまでトルトリ空港から飛行機に乗せ、サルデーニャの他地方・ヨーロッパのテーブルにまですぐに運ばれます。事実、羊飼いたちが搾りたてのミルクを子ヤギの胃袋に入れ、その中で発酵させたチーズやCasu Axeduと呼ばれる塩水に漬ける前の酸っぱいヨーグルトのようなチーズ(昔も羊飼いの朝食)なども各地に運ばれるようになりました。Casu Axeduは島の違う地方でも作られますが、オリアストラで作られたのは"bianco come la neve"-雪のように白いチーズ、最高品質のものと言われています。それはオリアストラで放牧した羊はコルベッツェロ・タイム・イブキジャコウソウなど香り高いハーブを食べているからだそうです。

●貧しい料理 "Cucina Povera"が一番
海と山に挟まれ、両方の幸に恵まれたオリアストラ。しかし一皿の中でそのふたつの幸が共演することは皆無です(サルデーニャだけでなく、イタリア料理では一般的にそうですよね)。何人かのシェフは幾度か試したそうですが、やはり伝統的なレシピを守った一皿には叶わなかった、ということでした。

新しいオシャレな料理よりオリジナルに忠実な昔からの家庭の味-彼らはそれを貧しい料理 "Cucina Povera"と呼びますが-が一番、ということでしょう。それはオリアストラだけでなく、サルデーニャ全体に通じることだと思います。

島の州都カリアリ・南から始まったこの旅も今回でグルッと一周、戻って来ました!6回に渡ってお送りしてきましたが、いかがだったでしょう・・・?ご感想などお聞かせいただけると嬉しいです。

今回で終わり・・・、ではなく、あと1回、これまでの中でちょっとご紹介出来なかったところや食材・料理やまとめ的なお話をさせていただこうと思っています。あと少し、お付き合い下さいね。                         


サルデーニャ「食」の旅  著者プロフィール
藤田智子 Fujita Tomoko
Delizie d'Italia 代表。 

大阪市内で洋風家庭料理の店を4年ほど営んだ後、2000年よりピエモンテ・アスティ郊外の アグリツーリズモに住み込み厨房を手伝いながら家庭料理を学ぶ。 その後イタリア各地のアグリツーリズモを周り、家庭料理を習得する。2003年 前年に訪れたサルデーニャに魅せられ、ベースをサルデーニャに移す。 その後、サルデーニャと日本を行き来し、サルデーニャ文化を広めるため、 "食"をテーマに現地の料理教室や滞在のアレンジを行う。 また、企業向きの取材コーディネートなども手がけている。「 サルデーニャに興味のある方、お越しになりたい方はぜひご連絡下さい! 」
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