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シチリアの祭りを訪ねる旅
15 Gennaio 2015

第 2 回
テルミニ・イメレーゼ 
「生きているプレゼーピオ」 
Presepio Vivente   



  文と写真  桜田香織 


●キリスト生誕の場面を人形で表す模型「プレゼーピオ」
日本の皆さんにとってクリスマスは去年の話、既に遠い過去の事になっているかと思うので恐縮ですが、今月はクリスマスの話です。しょっぱなから少々話が飛びますが、近年になるまでイタリアには「クリスマスツリー」という物は存在しなく、サンタクロースもやってこなかったのをご存知でしょうか?

バチカンのお膝元であるこの国ではクリスマスと言えば一年で最も大切な行事で、家族で過ごすのが決まりです。クリスマスツリーの代りになるのがプレゼーピオと呼ばれる物、これはキリスト生誕の場面を人形で表す模型で、12月に入るとあちこちの教会に飾られます。  

写真トップ@身重のマリア様とヨゼフ。どこの宿も満室で、泊まるところが見付からない。100人の見学者がじっと場面を見守る。
写真上左Aテルミニ・イメレーゼの市庁舎内に飾ってあるプレゼーピオ。 電気仕掛けで動くようになっている。  
写真上右Bパスタを茹でる女性が何ともイタリア的で可愛い。

●人間がシーンを演じる「生きているプレゼービオ」
ここシチリアでは人形ではなく人間がこのシーンを演じてお祝いをするという町がいくつかあり(プレゼーピオ・ヴィヴェンテ、生きているプレゼーピオの意)、テルミニ・イメレーゼという町もその一つです。 

旧市街の角や広場、教会内部に当時のパレスチナの町並みを再現し、受胎告知から聖夜にベツレヘムの馬小屋でキリストが生まれるまでのストーリーを見せてくれます。役者である住民達はそれぞれの持ち場から動くことなく、見学者である私達が案内人と共に1時間45分かけて旧市街を歩きながら12の場面を追っていきます。夕方5時から15分おきに出発、最終回の8時15分発の回まで全部で14回。出演者にとってはかなりの重労働でしょう。クリスマスを挟んだ2回の日曜日と1月に2回、全て予約で一杯になるほどの定評があります。    

  写真上左Cドゥオーモ   写真上右D ドゥオーモ広場に作られた門をくぐって、2000年前のパレスチナへ。

●住民250人以上で登場人物と脇役を演じる
一回につき見学者は100人なので、1日に1400人がこのお祭りのためにやって来る計算です。舞台となる道端や広場には照明、音響などの舞台装置も完備され演出も抜群、もちろん台詞付きです。当然受胎告知のマリア様と、馬小屋でのマリア様は違う人が演じるわけで、約40人の登場人物と脇役を250人以上の住民が演じ、2ヶ月かけて準備を行ってきたという話です。    

  写真下EF受胎告知の場面
写真上左Gローマの兵士、派手な赤い服が目を引いた。   写真上右Hヘロデ王が贅沢な宴会を行っている様子

イスラエルの王様のきらびやかな衣装、古代ローマの兵隊の派手な赤い軍服、質素な布で出来た服をまとう一般庶民の対比が、2000年以上昔の生活をすぐ目の前で披露してくれます。もちろん細部にもこだわり、当時の仕事を洗わず職人達、羊やロバなどの動物も一緒に雰囲気を盛り上げてくれるのです。

●城壁のアーチをくぐるとそこはパレスチナ
町の中心であるドゥオーモ広場から、人工的に作られた城壁のアーチをくぐって内部へ入るとそこはもうパレスチナ、細い坂道を下って行き、受胎告知の場面から物語の始まりです。進むに従ってグングン引き込まれ、まるで知らない土地に来たような錯覚を覚えます。元来話好きなイタリア人ですから、脇役の人達はコソコソとおしゃべりをしたり笑ったり・・・ということがあってもおかしくなく、それを目にするといきなり現実の世界に戻らされるものですが、そんな様子は皆無。   

写真上I子供たちも大勢参加していた。皆おとなしく、しっかりと自分の役割を演じていたが、眠ってしまった子供もいた。

大人も子供も真剣に自分の役割を演じていました。台詞もない「ただそこにいるだけ」のその他大勢、しかし彼らが全体の雰囲気を作り上げているのだなと実感、素晴らしいです。準備から疲れ果ててしまったのでしょう、眠ってしまった子供がいたのが何とも微笑ましく思えました。

●キリスト生誕を祝うクリスマスの意味を再認識
馬小屋で生まれたキリストを抱いたマリア様とヨゼフに続いて古い教会へ入り、全員で声を揃えて祈りを唱え終わったところで現実へ戻ります。体験してみると、何故イタリアにはクリスマスツリーがなかったのかを理解出来る気がしました。本来この日は子供たちがプレゼントをもらう日ではなく、あくまでもキリスト生誕を祝う日なのです。1時間45分の行程で、クリスマスの持つ意味を再確認し、喜び、祝うという気持ちが膨らんで来るのです。私達日本人にとってお正月が1年の始まりとなるように、彼らにとってはクリスマスが気持ちをリセットする日なのだということを実感できました。   

写真上左Jキリストの誕生を聞いて駆けつける羊飼い達。  写真上右:K幼子キリストを抱くマリア様とヨゼフ。

●不思議な空間、不思議な旅
テルミニ・イメレーゼはパレルモから約40Km、人口3万人の町で、有名なヒメラの戦い(紀元前480年、ギリシャとカルタゴの戦争)の舞台になった町、シチリアでもあまり知られていませんが小さいながらも内容の充実した考古学博物館があります。先史時代から人が住み着き、知的好奇心の旺盛な市民が多いという話。彼らが繰り広げる不思議な空間、プレゼーピオ・ヴィヴェンテの世界が、私を不思議な旅へ導いてくれました。  

写真上左Lプレゼーピオ・ヴィヴェンテの最終地点になった古い教会。 
マジョルカ焼きのクーポラが美しい。通常クローズされているのだが、この日のためにオープンした。  
写真上右M物語の終結となる古い教会の中には、シチリアで最も古いプレゼーピオ(1494年)が飾られている。



著者プロフィール
桜田香織(Sakurada Kaori)

東京都出身。日本航空の国際線客室乗務員として勤務していた頃からイタリアに魅せられ、「いつかイタリアへ・・・」と夢見ながらイタリア語を学ぶ。休職して渡伊、フィレンツェに8年住んだ後縁があってシチリア島へ移り、パレルモ在住。通訳、TVコーディネーターをするかたわら趣味の写真にも力を入れ、2013年にはパレルモ市のイベントで写真展を実現。夫と連名で出版した「Settimana Santa in Sicilia-Cerca di Collesano」(シチリアのイースター週間・コッレザーノの聖金曜日)でも写真を手掛ける。シチリアの料理に深い関心を持ち、レシピだけではなくその歴史のリサーチを続けている。2014年度、NHK TVイタリア語テキストに連載を持ち、シチリアの魅力を伝えている。

シチリアの祭りを訪ねる旅 データ
Dati
■テルミニ・イメレーゼTermini imerese   (パレルモ県 テルミニ・イメレーゼ村 Comune di Termini Imerese)

■プレゼーピオ・ヴィヴェンテ Presepe Vivente
http://www.presepetermini.it/

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