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シチリア「食」の旅
15 gennaio 2011

第7回
ペコリーノ シチリアーノD.O.P
− チーズもリコッタも羊乳から!その1 −



  文・写真/佐藤 礼子 

シチリアを代表するチーズと言えば「ペコリーノ シチリアーノD.O.P」。ペコリーノとは「羊(pecora=ペコラ)乳から作られたチーズ」の総称。ペコリーノ ロマーノ、ペコリーノ サルド(サルデニア)などが有名ですが、ペコリーノ シチリアーノもやっぱり有名。羊は野の草を食べて育つわけですが、場所が違えば土壌が変わり、土壌が変われば生えている草も違うため羊乳の味も変わります。当然チーズの味も変わってきます。

トップ写真:@今回案内役をしてくれたバルドー君。22歳ながらに立派な跡継ぎです。 
写真下:Aカゼイフィーチョ近辺、サレミの美しい風景

●絞りたての羊の乳を使って
今日は先日見学に行ったカゼイフィーチョでのペコリーノ シチリアーノのレポートです。(イタリアではチーズ工場を「カゼイフィーチョ」と呼びます。)見学しにいったのはトラーパニ県にあるサレミという小さな山の町。サレミは優良な白ブドウの産地として知られていて、サレミで生産されたブドウで作ったワインも日本に輸出されています。ここでカゼイフィーチョを営むCucchiara(クッキーアーラ)親子。彼らは自分達で羊を飼い、仕事は毎朝乳搾りから始まるとの事です。

写真左:B絞りたて羊の乳。どことなくトロンとしています。 
写真右:Cトゥマを作るクッキアーラお父さん。この道40年とか

ペコリーノ作りはこの絞りたて乳(38度程度だそうです)に「カリオ」を入れるところから始まります。カリオとは子牛の胃の一部でこれ を入れることでチーズが凝固し始めるそうです。そういえば、私のパートナーのマンマは、昔は羊の胃を乾燥させてチーズを作るときに使っていた、、、って言っていました。カリオを入れると乳がプリンのようにブルンブルンになってきます。ある程度の固さになったら熱いお湯を入れながらプリンを砕いて行きます。そしてこの砕けたプリンを手で集めながら水分を切りながらカゴの中に入れて行きます。ギューギュー押して水分を抜いたら、型から一度はずしてひっくり返します。そしてできるのがペコリーノチーズの原型となるTuma(トゥマ)。トゥマは大きな入れ物に入れられ、ホエー(80度)にしばらく浸して殺菌します。

写真左:D出来上がったトゥマ。
写真右:E大きな気の器に入れてこの上からホエーを注ぎ殺菌。

●大切な熟成プロセス
さて、ホエーから出された後、いよいよ熟成に入ります。
まずPrimo Sale(プリモ サーレ)と言われる、一番目の塩をつけます。これは塩を直接トゥマに刷り込むわけではなく、塩水に漬けるそうです。そして4日後くらいからペコリーノ シチリアーノの中で一番フレッシュなタイプ「Primo Sale(プリモサーレ)」が出来上がります。ここで出荷されないものはさらに熟成されます。
今回、特別に熟成室を見学させてもらいました。大きなチーズ工場ではないため、棚も5mくらいのものが数列あるのみ。本日の案内役、このカゼイフィーチョの後継ぎバルド君でした。

●厳しいD.O.P(原産地名称保護制度)認定
「ペコリーノ シチリアーノはD.O.P(原産地名称保護制度)に認定されているから、法で定めた作り方に従って作らないと、ペコリーノ シチリアーノD.O.Pとは呼べないんだ。ほら、D.O.Pに認定されたものにはきちんと刻印が押されているんだよ。」

写真左:F熟成室:クッキアーラ家で作られるチーズはここで熟成させます。 
写真右:GペコリーノD.O.Pの刻印。

実はペコリーノ、私も丸のままこうやってじっくり見る機会はなかなか無いため、気がつきませんでした。「Pecorino Siciliano D.O.P」とちゃんと刻印されています。

バルド君曰く、
「1ヶ月に一回、検査員が訪れるんだよ。そして、10個に1個の割合でチーズのサンプルを採取していくんだ。ほら、このチーズ、穴が空いているでしょ??」

バルド君が指をさしてくれたチーズを見ると、直径5mmくらいの穴が開いていました。
「サンプルを分析して、塩分、酸度などの熟成具合を調べて、オッケーが出たものだけに刻印を押していくわけさ。ちなみに、大きな丸い刻印はうちのカゼイフィーチョの番号、上の小さな茶色い刻印はチーズ一つ一つについている番号。という訳で、どのチーズ達も世界に1個しか存在していないんだよ。」

Primo Saleは塩水に漬ける、と書きましたが、その後は、塩を塗りこんで行きます。大体1回〜2回、塩を塗りこむらしいですが、状態に寄ってもう少し刷り込んだりすることもあるそうです。

「大体色を見れば分かるんだよ、塩が足りているか足りていないか。塩を入れすぎればしょっぱくなるし、塩が少ないと真ん中まで均等に塩が浸みこんでいかないんだよ。」

●奥の深いペコリーノづくり
なるほど、、、たかがペコリーノ、されどペコリーノ。奥が深い。

こうしてブナの木で出来た台の上に乗せられて熟成させて行きます。Pecorino SicilianoというD.O.Pの印を受けるには最低4ヶ月の熟成が必要だそうです。このカゼイフィーチョでは最長で1年程度まで熟成させるそうで す。(平均は4ヶ月〜8ヶ月程度だそうで)

久しぶりにカゼイフィーチョを見学して、熟成室までしっかり案内してもらい本当に勉強になり ました。小さな生産者となると熟成室を見せてくれないところも多いのですが(ここに秘密あり?)、今回のカゼイフィーチョはチーズ作りの1〜10までを惜 しげなく教えてくれました。今まで何気なく食べていたペコリーノチーズですが、こうしてひとつひとつ手作りで作られているのを見ると、もっと味わって食べなければ、、、という気分になった私でした。

次回は羊乳で作ったリコッタのレポートです!


シチリア「食」の旅  著者プロフィール
佐藤 礼子 Satoh Reiko
ラ ターボラ シチリアーナ代表

東洋英和女学院大学卒業後、イタリア料理人の道を目指しイタリア料理店に入店。カメリエーレ、イタリア料理人を経た後、イタリアの郷土菓子に興味を持ち独自に研究を始める。その後、大手企業での洋菓子商品開発、店舗企画などを経験。イタリア食文化を勉強する為、2004年イタリアに渡る。スローフード マスターイタリアンクッキング ディプロマ取得後、シチリアにて研修を重ねる。10年を越える日本での食の仕事の経験と、1年半に渡るイタリアでの修行を終えて、2004年シチリア州トラーパニで「ラ ターボラ シチリアーナ」を設立。シチリア料理教室、食に関するコーディネート、通訳を手掛ける。又、各種メディアに執筆活動も続ける。
サイト: http://www.tavola-siciliana.com/index.html
Blog: http://trapani.exblog.jp/
http://www.japanitalytravel.com
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