JAPANITALY Travel On-line

 
イタリア旅行情報サイトJAPAN-ITALY Travel On-line
シチリア「食」の旅
15  Dicembre 2011

第12 回
アフリカに近い島で造られる甘いデザートワイン
「パッシート ディ パンテッレリア」



  文・写真/佐藤 礼子 

私の住むトラーパニから南東に下ること約70km、そこには「アフリカに一番近い島」と呼ばれるパンテッレリア島があります。豊かな自然がそのまま残っていて食べ物が美味しいこと、そしてバカンス時期でも人がごった返さないため、世界中のVIPのお忍びのバカンス地としても知られています。(あのアルマーニ氏の別荘もあります)

●「パッシート」、普通のワインとの違いは?
さて、パンテッレリア島の名産品と言って忘れてはならないのが「パッシート ディ パンテッレリア」。一度飲んだら誰しもが病みつきになるという、甘い甘い魅惑のデザートワイン。では普通のワインとはどこが違うのでしょう?

写真トップ 写真@琥珀色のトロリとしたドンナフガータのパッシート。口に含めば夢心地。 写真左Aひざの高さくらいまでしかないZibibboのぶどう畑。  写真右B干しブドウ: 房から実を一つ一つ手作業で取って網の上で乾燥させます。


パッシートとは、Zibibbo(ズィビッボ)というパンテッレリアで栽培される白葡萄を使って造られます。Zibibboはアラブ語ですが、イタリア語では「Moscato d'alessandria(モスカート ディ アレッサンドリア)」。つまりモスカートの一種で、ぶどう自体が香り高くとっても糖度の高いぶどうです。しかし、このZibibbo、普通のぶどうの木とは少し様相が異なります。パンテッレリア島は風がとっても強いため、葡萄の木は膝の高さくらいまでしかなく、地面に這うようにして成長していきます。そして更に風から守るため、石の塀を作って段々畑にして栽培するのです。こうすることで葡萄の房が木から落ちてしまうことを防ぎます。    

写真左C遠くから見ると段々畑で栽培されています。  写真右D風が強いパンテッレリア島。壁を作る事で風を防ぎます。 


こうして大切に育てられたZibibboは8月になると収穫が始まります。葡萄は地面の近くになってているためひとつひとつ手摘み、、、それはそれは大変な作業です。実際、ワイナリーの人に聞いてみたところ、Zibibboの収穫は相当腰が痛くなるそうです。こうして8月に収穫された葡萄は、これまた手で選別され 大きな網にのせられて干しブドウとなります。この干しブドウ がワイン熟成の間に加えられるのでパッシート(干した)という名前がついているわけです。9月になるとモスト(ワインのベースとなるぶどうジュース)をつくる用のブドウが収穫され始めます。8月のブドウよりも更に熟しているため、この時点で相当甘いジュースがしぼれます。そして、更に醗酵段階で干しブドウ が加えられます。干しブドウは、1回に大量に加えると糖分が一気に上がりすぎ、完全に醗酵をブロックしてしまうため数回(平均3〜4回)にわけて加 えられるそうです。こうして出来上がったパッシートはなんとも言えないフルーティーな香りと豊かな味わいがするのです。

●1年間のぶどうの木の手入れが美味しさの秘訣
今回お邪魔したのは、ラ ターボラ シチリアーナのワイナリー工場見学でもお世話になっているマル サラにある優秀なワインの造り手「Donna Fugata=ドンナフガータ」のパンテッレリア工場。  


 写真左E最新の設備を備えたカンティーナはとっても清潔。ピカピカです。 写真右F気取らない姿が職人気質のじゃコモさん。とても詳しく説明してくれました。


案内してくれたジャコモさんは、パッシート造りのためにマルサラのカンティーナから送り込まれてきたドンナフガータの優れたスタッフの一人。ドンナフガータのパッシート工場は通常2人で運営されていて、畑の管理(60%のブドウが所有の畑から、残りの40%は地元のブドウ生産者から購入だそうです)と ワインの生産管理まで、すべて2人を中心に行っているそうです。私が行った7月は8月から始まる収穫に向けて、ブドウの木をチェックするのが主な仕事だと言っていました。


 写真左Gドンナフガータは島の中に標高によっていくつものぶどう畑を持っています。 写真右H試飲スペース: 真っ白な室内と高い天井は、パンテッレリア流の夏の暑さ対策。

さて、畑と工場を見学した後はお楽しみの試飲。ワイングラスにトロリ、、、とした琥珀色のパッシートが注がれます。ドンナフガータのパッシートは「Ben Rye(ベン・リエ)」という名前はアラブ語で「風の娘」という意味だそうです。風が強いパンテッレリアならではのネーミング。グラスを鼻に近づけてみると、なんとも言えない濃厚な香り、、、アプリコット?桃?いや、マンゴー?フルーツの香りがギュっと凝縮したような香りが漂います。口に含んでみると、甘〜く甘〜く、しかしスッキリとした口当たり。「どんな甘いワインにも酸味が必要なんですよ。」と、ジャコモさん。甘さが強いから酸味は全く感じないけれど、酸味のない甘いワインは甘すぎて飲めないそうです。

1年間の丁寧なぶどうの木の手入れと、手摘みで行われる収穫、これがパッシート ディ パンテッレリアの美味しさの秘訣。パンテッレリア島を思い出しながら食後にゆっくりとグラスを傾ける、、、本当に贅沢なひと時です。

■ ラ ターボラ シチリアーナ
http://www.tavola-siciliana.com/


シチリア「食」の旅  著者プロフィール
佐藤 礼子 Satoh Reiko
ラ ターボラ シチリアーナ代表

東洋英和女学院大学卒業後、イタリア料理人の道を目指しイタリア料理店に入店。カメリエーレ、イタリア料理人を経た後、イタリアの郷土菓子に興味を持ち独自に研究を始める。その後、大手企業での洋菓子商品開発、店舗企画などを経験。イタリア食文化を勉強する為、2004年イタリアに渡る。スローフード マスターイタリアンクッキング ディプロマ取得後、シチリアにて研修を重ねる。10年を越える日本での食の仕事の経験と、1年半に渡るイタリアでの修行を終えて、2004年シチリア州トラーパニで「ラ ターボラ シチリアーナ」を設立。シチリア料理教室、食に関するコーディネート、通訳を手掛ける。又、各種メディアに執筆活動も続ける。
サイト: http://www.tavola-siciliana.com/index.html
Blog: http://trapani.exblog.jp/

http://www.japanitalytravel.com
©  JAPANITALY.COM srl - MILANO 2000 All rights reserved.