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15 dicembre 2007

第1回 トマトに魅せられて

岡田幸司



●「トマトから始めよう。」
南イタリアの、そしてシチリアの最もシチリアらしい食べ物といえばトマトではないか、とそんな風に思っています。

私が暮らしたシチリア生活の中で最初に、そして強烈にインパクトを与えてくれたのはマンマが作ってくれたトマトソースでした。
素朴でややもすると見栄えのしないシンプル極まりないこのソースがこれほど違うものだとは思ってもみなかったのです。以来、トマトの力、これに魅入られてしまいました。

太陽の香り、大地の味・・・とはあまりにも抽象的な表現かもしれませんが、あのシチリアの乾いた大地に降り注ぐ強烈な太陽光線、この下でたくましく育ったものにしか出せない力強さに完全にうちのめされてしまったのでした。

この感動と記憶が私とシチリアをつなぐ原点でありビジネスの基点になっています。
「トマトから始めよう。」
そんな風に思っていた私には幸運な事に、暮らしたシチリアの小さな村のすぐ隣に魅惑的な生産地が点在していたのです。

●ドライトマト、美味しさの理由
その一つがCatania:カターニア県にある、Paterno':パテルノ村でした。
ここはPomodori Secchi:ドライトマトの生産が盛んなところです。

6月から7月にかけてこの一帯では、腰の高さあたりまで"かさ上げ"された天日干し用の"すのこ"上に、半身に開いた完熟トマトがびっしり敷き詰められ、そこに職人が長年の勘よろしく海塩をパッパと手でふって行くのです。
トマトの種類・大きさによりますが3〜5日程度シチリアの太陽の下に天日干しされるわけですが、その景観たるや真っ赤なじゅうたんのようなのです。

 

ドライトマトは、夏場に沢山とれるトマトを冬場にも使うべく考えられた保存食、乾物です。
日本で言うところの梅干や干し椎茸、塩昆布などの乾物と考えればイメージし易いかもしれません。
イタリアではこれをいったん熱湯で戻してからオリーブオイルにつけたものがアンティパストとして登場します。

ポピュラーな"トマト"なのに意外と馴染みのないこの不思議な食材に興味を持ち、メルカートや食材店からいろいろと買い込んでは試食を繰り返してみました。
そうすると、このシンプル極まりない食材は、シンプルだからこそ
・塩の振り加減
・天日干しの加減
が随分と作り手によって異なることに気がつきました。
生産者にこの点を尋ねてみると、トマト自体が肉厚であり、塩分控えめでしっとり柔らかいものほど使い易く美味との事。

"保存"という側面から見ればおよそ正反対の状態ですが、この方が消費側としては短時間で上手に戻す事ができ、さらに日本人の食の観点からすれば、その戻し汁も昆布だしのように扱え、さらにトマトそのものの食感や味わいが良好なのがうれしい限りです。
こんな風にとらえると、メルカートでの食材選びがぐっと楽しくなると思います。

●トマトと塩だけの奥深さ
同じく、メルカートで時々目にする、何だか味噌のような物体。
実はこれもトマトを主体として作られた昔ながらの調味料です。
濃厚なエキス、という意味合いで Estratto:エストラットと言われています。
トマトの裏ごし(ピューレ)をつくった後、これに多めに塩をして天日干し、時々練りながら徐々に水分を飛ばして出来た濃厚なペーストです。

その昔は各家庭の軒先でおばあちゃんが作っていたようなとってもスローな保存食なので、現在は太陽の光と手間隙をオーブンで代用したものを目にすることが殆どだと思います。
このエストラット、天日干しバージョンとオーブンバージョンとで味は異なるとはいうものの、どちらにしても、まるで日本の"練り梅、もろ味噌、ゆず胡椒"のようななつかしい味わいがします。
スープなどに溶いて使えば濃厚だしになるのはもちろん、焼いた肉や魚に少しつけてアクセントとしても使え、ゆで野菜に少しつけて食べてみても、もはや和食のように使える便利な調味料なのです。

ドライトマトにしてもエストラットにしても、使っているのはトマトと塩。
なのにこの旨さ、奥深さ。
純然たる日本人の私の幼少の頃の味覚を掘り起こすかのような穏やかで優しく懐かしい味わいは一体どこから来るのだろうかと興味がつきません。

シチリアならではの乾いた空気と大地、そして降り注ぐ強烈な太陽光線のもと、完熟したトマト達がそもそも違うのは当然だと思いますが、それが現代でもしっかり存在しえるところに、食文化の懐の深さ、秘密の謎解きがあるのかもしれません。


著者プロフィール
岡田幸司(おかだ こうじ)
建築構造設計をしていた前職時代に「住んでみないとわからないだろう」というシンプルな発想のもと、インターンシップに登録して赴任した先がシチリアの田舎町でした。
そこで一番私を虜にしてしまったのが何と"食文化"。"シチリアにやられてしまった"私はその後の人生に大きな舵を切ることになりました。
現在はイタリア食材厳選のお店「ピアッティ」を運営しています。http://www.piatti.jp/

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