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15 febbraio 2008

第2回 塩、太陽と風の恵み

岡田幸司



●シチリア、塩作りの理想の地
シチリアは"イタリア"というより"地中海のど真ん中に浮かぶ大きな島"と捉えた方が、その文化を知る上で無理がないように思うのです。

紀元前、地中海沿岸諸国を植民地支配していた"海の民"フェニキア人(Fenichi)が、"風・気温・湿度"の3要素が全て整った塩作りの理想の地としてシチリアの西の端、Trapani:トラパニに注目し、その作り方を教えたといわれています。

塩は人間が生活していく上で欠かす事の出来ない大切なものとして取り扱われてきましたから、それが出来得る場所としてのシチリア・トラパニは何ともありがたい聖地というわけです。

そんなわけで、トラパニの塩とは何ぞや?という好奇心を持ち、この仕事を始めた年にひとりトラパニの塩田を見に行きました。
コネも情報もないまま無防備で出かけたために、結果的にトラパニ市内から延々10Km弱、炎天下の中を歩く事になり、熱中症になった"苦い?!"思い出があります。
とはいっても、人影もまばらな塩の博物館では、係の方にとても丁寧に説明してもらったお陰もあり、駆け足ながらも効率的な勉強は出来たのです。

写真トップ:塩職人のいる風景
下左:日陰で休憩。熱中症にはご注意、右:テラコッタで覆われた塩の山
 

●地中海の味わい
塩の作り方というと
・海水(塩分3%程度)を地中海の風を利用してMulino:風車を回し
・Spira d'Archimede:アルキメデス(が設計したと言われている)の"らせん"を使い
・海岸線の最寄の塩田に引き込みます。
・風と太陽で蒸発した海水は、隣の塩田へ移され、蒸発を繰り返し濃度を増します。
・次第に、mamma del sale:塩の母 と呼ばれる結晶が出来始め
・最終的に塩分24〜27%に達するまで干上り結晶が大きくなります。
・この後、salinaio:塩職人の手により掻き出しが始まります。
・塩田の間近に徐々に積み上げ、山状になったらテラコッタの屋根を架け
・雨・風・埃を防ぎながら一冬を越す事で
・塩のにがり成分を重力によって落としていくのです。
・そして出来上がった結晶を、また別の風車を使い、細かく挽いていくわけです。

この後、特に綺麗に精製せずにそのまま袋詰めしたものは、まさに自然海塩として、塩田の多少の不純物(砂や海草)が混じる事はあっても、だからこそ逃げずに残る豊富なミネラルを実感できる旨みを持っています。
地中海の海の味がする、とでもいうべき味わいです。

ところが近年、天変地異による出来高不足や不安定さの問題、そして海外からのローコストな輸入品の流入により、こうした自然海塩を作り得る塩田がどんどん姿を消していきました。まさに消え行く"昔ながらの"文化だったところ、その価値を再確認し守るべき貴重な塩田として、シチリア州やスローフード協会が保護選定し、WWF(世界自然保護基金)が自然保護地域として管理するに至っています。

一人歩いて熱射病になった翌年、偶然知り合う事になったスローフード協会のシチリア支部長に紹介してもらって生産者を訪ねた時、その時感じた感動は今でも忘れません。
塩田の水を少しなめ、旨い塩味だなぁと思ったら、それを乾かして出来た塩はまさにそのままの味わいだったのです。何て自然で旨いんだろうかと思ったものです。

写真左:製造プロセス(塩の博物館)
右:生産者協同組合Consorzio Sale Naturaの代表と
 

●なくてはならない塩の大切さ
さて、塩にまつわる話としては、その語源を遡るものが有名です。
salary:サラリー(給料)の語源となる、ラテン語:salarius の"sal"は"塩"を示し、労働の対価として与えられたものであり、この後、貨幣へ移行しても、その目的はやはり"塩"を買うために与えられたものであった、と伝えられています。

salame:サラミやsalsciccia:サルシッチャはまさに塩を使った塩蔵品であり、オリーブなどのsalamoia:サラモイアも塩水漬による保存食であり、insalata:インサラータは塩を振って食べるもの・・・等など、その文化を各々の名称に残しています。

また、生命維持というだけでなく、脱水・殺菌の作用が食材の保存に適していたという事から、さらにシチリアの農産物にも広く使われています。
アンチョビ、ドライトマト、塩漬けケッパー、Musciame:ムシャーメと呼ばれる魚肉の塩漬、チーズなどはまさに塩なくしては有り得ないものばかりです。
その塩分・塩味を生かして少しずつ料理に使うと驚くほどの旨みを増す優れもの達。

塩蔵品については日本も馴染み深い文化を持っていますので、これらの塩蔵品が一体どんな風にして作られたのかという事がわかれば敷居も低くなるというものだと思うのです。
何といっても、太陽と風の恵みですから、大切に扱いたいものです。


著者プロフィール
岡田幸司(おかだ こうじ)
建築構造設計をしていた前職時代に「住んでみないとわからないだろう」というシンプルな発想のもと、インターンシップに登録して赴任した先がシチリアの田舎町でした。
そこで一番私を虜にしてしまったのが何と"食文化"。"シチリアにやられてしまった"私はその後の人生に大きな舵を切ることになりました。
現在はイタリア食材厳選のお店「ピアッティ」を運営しています。http://www.piatti.jp/

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