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イタリアにおけるスローフード現地レポート
 
16 Febbraio 2004

パートU スローフードがもたらしたマイナス部分

池田 律子







 いい事ずくめのように一見思えるSFブームだけど、やはり森羅万象すべてマイナス面もあるわけで、今回はその辺りを“豚加工品”にフォーカスしてちくりと刺してみたいと思う。

最初に変だぞと気づいたのは、スーパーのTVCMに登場し始めた、豚のお尻の肉を贅沢に使って作る生ハムの“クラテッロ”culatello。

ポー川のたもとのパルマ低湿地帯の冬の霧と冷気が作り出すこの生ハムは、ご当地生まれでクラテッロをこよなく愛したヴェルディさえも「高価な逸品!」と言わしめたほど、その歩留まりも熟成も難しいがために高価で門外不出だった。97年ごろは、まさかこんなところに?と思えるほど薄汚く小さな堤防の直ぐ際の納屋でこっそりと、レストランや知る人ぞ知るグルメに頼まれた数だけが、農家のおじいちゃんによって手厚い愛情を受けて熟成されていた。

ところがTVで有名に成りだして出かけたら、見学も可能な真新しい大きな熟成庫が一帯に数箇所ドカンとできているわ、おじいちゃんの熟成庫は干し柿状態ですし詰め・・・これでは、冷気も霧も通り抜けれんぞ!案の定、同じ店で食べたのに、以前は真紅のバラのような輝きと、生ハムの“熟女”と言わしめたその風味は微塵もなく、強い肉の風味だけが口中に残ったのにはショックを受けた。

 
写真説明
上:当代きっての作り手の一人、FAUSTO GUADAGNI氏の
ラボで大理石の桶で熟成中のラルド
左:これがクラテッロ
右:こんなに大きな熟成庫になってしまって!!!

それは、「高値で売れる」→「量産する」→「味が落ちる」のマイナス・スパイラルのまさに典型!同じ事が、トスカーナ州、カッラーラの山にある大理石採掘現場のコロンナータ村で、中世の時代から、石工の冬のエネルギー源として生まれ、時代の流れで消滅しかけていた、豚の背脂に香草と塩をまぶし、大理石の桶に漬けて作る「ラルド・コロンナータ」lardo colonnataにも起きた。

こちらは冷涼な山ではない平地の彼方此方で作られ始めたのだ。わずか村人4人しか残る作り手がいなかったのが、あっという間に雨後の筍状態。そして味もピンキリに。いずれも問題なのは、粗悪な模倣品が急増したことで、本来の美味しさが伝わらない事による再消滅の危機だ。

せめてもスローフーダーと自認する人は、産地に赴き、自らの五感で選び抜いた食材だけを味わって欲しいものだ。そしてそれを喧伝してほしい。

写真説明
左:ビステッカ・フィオレンティーナにラルドコロンナーとを載せて・・・
右:ラルドをパテにしてパンに塗りグリルしても美味だ

 

クラテッロ cuatello に関する問い合わせ(responsabili del presidio)
Massimo Pezzani tel:0524−598289

ラルドコロンナータ lardo collonata に関する問い合わせ(同上) 
Renata Ricci tel:0585−758029

       


著者プロフィール
池田律子(いけだ りつこ)

兵庫県西宮市生まれ。 甲南大学卒業後日本航空に勤務。1992年に退社し、イタリア国立ペルージア大学に留学。94年よりミラノで料理教室を始める。取材・執筆活動のほか、日本の百貨店でのイタリア展ほか食にまつわるイベントプロデュースを手がける。98年より日本でも料理教室を開催。    






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