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"食い倒れ"スローフード留学記
 
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15 dicembre 2006

Studiamo Slow Food in Italia

第1回
マルケ州イエージJesi、
スローフード研修での美食三昧







粉川 妙

人生のターニングポイントが生涯幾度か訪れるものです。妹と訪れた9日間のイタリア旅行は私のその後を大きく変えました。イタリアの食と街と人に強く惹きつけられたこの旅の後、一つの思いが与えられたのです。『イタリアの魅力を多くの人に伝えたい。夢だったライターという仕事をイタリアでやれたらどんなに素敵なことだろう。』『でも何を専門にしようか?そうだ、食がいい。』食いしん坊で好奇心旺盛な私は食のライターを目指しイタリアで勉強することを決意しました。

どうせ留学するなら料理に直結したことを…そう思って選んだのがスローフード協会の料理学校ITAL.COOK.の『イタリア料理マスターコース』でした。外国人向けの料理学校で、2ヶ月半かけてイタリア各州の郷土料理を地元のシェフを呼んで学びます。またワインやチーズ、オリーブオイルの講義もあり、課外授業ではディチェコのパスタ工場見学やカンティーナ見学が出来るのも魅力の一つ。特筆すべきは学校を卒業すると1年間レストランなどの調理場にて実地研修(ステージ)が行えることです。(現在は7ヶ月間になっています。詳細はHPをご覧下さい。イタルクック・スローフードマスター http://www.italcook.it/home_j.htm

この学校の内容が非常に気に入ったため入学を決意しました。2004年の冬のことです。入学は2005年10月。7年間勤めた製薬会社の営業の仕事も終止符を打つこととなりました。

●ITALCOOKとは
さて、所変わってここはマルケ州イエージ。スローフード協会ITAL.COOK.の調理場です。世界中から集まる生徒たちですが、今回のクラス構成は日本人5人、アメリカ人6人、ロシア人1人です。2日間で1州の料理を教わります。各州の最初の1時間は講義で始まり、その州の風土や食材の特徴、プレシディオ(食の砦の意:絶滅しつつある伝統食や食材を守るためスローフード協会が認定した称号)などの説明があります。シェフが地元から持参した食材を使っての授業は、朝取りのハーブがあったり、新鮮な魚や毛のついたままの雌鳥があったりとどれも興味深いものばかり。

そして第一回目の授業はマッシモシェフが教えてくれるマルケ州の魚介料理です。ブロデットと呼ばれる魚介の煮込料理に使った魚はなんと13種類。作り方は、同じ州でも地方によって微妙に異なります。北部の都市ファーノのブロデットは玉葱をみじん切りにし、トマトペーストを入れ煮込むのに対し、中部のアンコーナでは玉葱は細かくくし切りにしホールトマト(もしくは生トマト)で煮込みます。同じ中部でもポルト・レカナーティではサフランを使い、南部サンベネデット・デル・トロントでは青トマトを入れます。これらを授業で比較しながら学べたことは非常に有意義でした。

同じくマルケ州から山間部の料理をマルコシェフが担当しました。豚を丸ごと豪快にオーブンで焼くポルケッタを披露して生徒たちを沸かせます。これまであまり知られていなかったマルケ料理のベールが剥がされたのでした。マルケのラザーニャにはミートソースに刻んだレバーも入れるんですよ。そして地方色豊かで、ほっぺたが落ちるほど美味しいパンを作る職人ジュリアーノ氏の授業へと続きます。それはもう美味しいマルケのパンが食べ放題の至福の2日間でした。

トップ:雨上がりのイエージの町
左下:ポルケッタ作り
右下:マルケの料理、sfogliata autunno
 

毎日6時間の実習で7、8品作ります。昼食にはそれを試食し、料理に合わせたその土地のワインを飲み、共に感想を言い合います。共通語は当然イタリア語。でも母国語ではないイタリア語を話すのは生徒たちにとって難儀です。みんな一生懸命コミュニケーションを図ります。簡単な単語、単純な話・・・でもそれがいいんです。そして、共に調理することで生まれる連帯感が異国の生徒同士を近づけます。

●印象深い料理の数々
ほぼ全州のシェフが行った授業のなかで印象深かった州を紹介します。
プーリア:始発の飛行機でITAL.COOK.にやってきたペッペシェフ。なんと自家農園の新鮮な野草やハーブを20種類と窯で焼いた固く骨太のパンとチーズや豆数種類を持ってきました。グラノ・アルソという黒い粉は収穫後の麦の株を焼いて灰にし挽いたもの。貧しいプーリアの農村では、小麦粉に混ぜて使っていたのだとか。これで作った手打ちパスタは一見、イカ墨を練りこんでいるかのようですが味はきちんとの味。伝統食は美味しいものばかりとは限りません。
他にもオレッキエッティやカバテッリといったパスタを手作りしたり、蕪の葉やアーティチョークを使ったり、固くなったパンを利用したり(パンコッタ)とヘルシー&清貧な料理のラインナップでした。

シチリア:カルメロシェフが教えてくれたシチリア料理は、素朴ながら豊かなシチリアの大地を感じさせるものばかり。クッチャという硬質小麦と豆類(ヒヨコ豆、レンズ豆、いんげん)を使ったスープは滋味深くホッとする味。硬質小麦のプチプチした食感がなんとも新鮮です。生命の誕生を連想させる豆料理はクリスマスの時期に好んで食されるんですって。
カポナータは季節の野菜を酢揚げし、トマト、酢、砂糖、ミントで味付けし2時間置いてから、唐辛子入りのチョコとからすみをすりおろして仕上げます。料理にチョコレートを振り掛けるなんて!一見妙な食材の組み合わせですが、結果オーライ。甘酸っぱく野菜の旨味が楽しめるカポナータは一度はまったら病みつきになります。

●卒業、そして実地研修へ
2ヶ月半の授業の間に、生徒たちはステージ先を見つけなければなりません。私のかねてからの希望は、修道院の料理を学ぶこと。カトリック大国イタリアでは古くから修道院でお酒や蜂蜜などが作られてきました。また自給自足でキリスト教の暦に沿ったつつましい食生活を今なお続けています。そんな修道院の厨房で研修したい!強い願いの源は私がクリスチャンだからかもしれません。休日ごとに宿坊つきの修道院を訪ね、ステージを依頼しました。伝統を守るがゆえにその門戸は容易には開きません。4,5件断られ1ヶ月が過ぎました。
そしてついに研修生を受け入れてくれるアッシジの修道院を探しあてたのでした。

卒業式当日、スローフード協会から終了証とカタツムリのバッジが渡されました。同級生たちともお別れです。一抹の淋しさはありましたが自分の足で歩き出した子どものように好奇心と希望に溢れていました。そう、これから一年間のイタリア滞在はきっと素晴らしいものに違いありません。直後に待ち受ける困難を知る由もなく、ただ無邪気にそう思っていたのですが・・・。

著者プロフィール
粉川 妙(こかわ たえ)
甲南大学文学部社会学科卒業。卒業論文『ブタと文化 〜文化人類学的考察から〜』。以後豚と人間の歴史や風俗を調査することをライフワークとする。製薬会社勤務を経てイタリアの食・文化を学ぶため留学を決意する。2005年スローフード協会の料理学校ITAL.COOK.に入学。06年12月末まで調理場にて実地研修(ステージ)予定。
ブログ『butakoの2年間の休暇 *イタリア料理への道*』http://butako170.exblog.jpにてイタリアの食文化や著者の日々の様子を配信中。

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