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"食い倒れ"スローフード留学記
 
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16 aprile 2007

Studiamo Slow Food in Italia

第3回
フィレンツェ、
地元で愛されるトラットリアで
研修の日々












粉川 妙
●日本人シェフのもと、イタリア料理の基礎を学ぶ
昨年3月8日、ミモザを女性に贈るフェスタ・デッラ・ドンナ(女性の日)に、フィレンツェに降り立ちました。イタル・クックでの講習を終え、レストランで実地研修を本格的に始めるのです。期待と不安を抱く私に、駅の花屋に並べられた黄色い花たちがエールを送ってくれたようで。

私の研修先はドゥオーモから徒歩10分のところにある「トラットリア・アッカディ」です。
オーナー・シェフの名は三曳(みつびき)さん。みんなから「トシさん」と呼ばれ慕われています。とはいえ和食レストランではございません。マンマが作るような優しいトスカーナ料理は地元で大人気。
2カ月間いたアグリツーリズモでの研修は手伝い程度だったので、今回は基礎を身につけたいと思っていました。そこで一度決まっていたウンブリア州のレストランを保留、日本語で学べるここを選びました。

厨房は私を含め3人です。みなさん新米の私にきちんと教えてくれます。意外と知らないイタリア野菜の処理の仕方・・・アーティチョークのむき方やズッキーニの花弁取り。また魚の処理や、イカスミ用の墨袋の取り方。どれも目から鱗でした。
昼間のお客は半数が地元の常連です。毎日やってくる家具業者の若者たちは、いつも厨房前の5番テーブルに陣取ります。そしてトシさんとのやりとりも、私の大好きな一幕。
「今日は焼きたてのラザーニャがあるよ。美味いよ」
「じゃぁ俺、それにする」「ボクはいつものスパゲッティ・カルティエラ(※)で」
「大盛りだろ」「もちろんさ」
(※)カルッティエラとはニンニクをきかせたトマトソースのシンプルなスパゲティ。フィレンツェ名物。
写真トップ:アッカディ、朝の準備風景
下左:ビステッカ・フィオレンティーナ、右:たまには仲間でワインの試飲会(ともにアッカディ)

 

●トスカーナのプレシディオと、教わった大切なこと
休日はトスカーナの街々を旅しました。スローフード協会が発行している「プレシディオ」(食の砦:絶滅の危機にある食材や加工品を守ろうと同協会が認定した品)という本を片手に列車で回ります。
トスカーナはプレシディオの宝庫。つまり手間をかけた貴重な食材や珍味が多くあります。風土豊かで、北のアペニン山脈から南のマレンマ地方まで、いろんな表情を見せてくれます。
滞在中はブタの加工品(サルーミ)を中心に見て回りました。またブタか…と前回に続き恐縮ですが、ブタ研究は私のライフワーク。ブタの血で作るサラミがあるんですって。これは行くしかない!

「マッレガート」というサラミはサン・ミニアートという街の名物。フィレンツェからおよそ50Km東に位置する丘の上の街です。地元の肉屋「セルジオ・ファラスキ」は豊富な精肉と加工食品で名の知れた店。自慢のサラミやサルシッチャは、ご主人と息子が店の奥で作ります。早速、おかみさんに自慢の赤い宝石「マッレガート」を見せてもらいましょう。

ブタの肉は一切入っていません。ブタの生血にラード、レーズン、松の実、塩、ナツメグ、シナモンを合わせ、布に注ぎ、中心温度が90℃に達するまで煮ます。袋に詰める材料は若干少なめにするのよ、とおかみさん。パンパンに詰めると過熱したときに爆発するんですって。そこでついた名が『マレ(悪く)レガート(縛る)』というわけ。なかなか面白いネーミングです。
お味は干葡萄がたくさん入っているので、甘く、デザートのようでした。生臭さは一切感じません。1cmの厚さにカットして小麦粉を薄くつけ、軽くソテーして食べるのが美味しいのだとか。
食後酒ビンサントと共に食後にいただくのがトスカーナ風。

マッレガートは貧しくて肉が買えない農民が考えた知恵のサラミだと、おかみさんから教わりました。「ブタ一頭殺すと捨てるところはない」と言うけれど、血まで使うなんて驚きです。
豚の血を原料にした加工品をサングイナッチョといい、ローマ時代からすでにありました。統一したレシピはなく各地でいろんなサングイナッチョが作られていました。なんと南イタリアでは血を牛乳と香辛料で煮てドロドロにし、ビスケットを浸して食べます。カーニバルには欠かせないお菓子です。

さて、肉屋ではマッレガートと昔の保存食サン・ミニアート風フェガテッリ(レバーを豚肉で巻き、ラードに漬ける)と自家製サラミを購入。明日アッカディのまかないで出すことにしましょう。みんなどんな顔して食べるかな。

3カ月半におよぶフィレンツェの研修はあっという間に過ぎていきました。トシさんから多くの郷土料理を学びました。トリッパ(ウシの胃袋)の煮込み、アリスタ(ブタ背肉のロースト)、リボッリータ(パン入り野菜スープ)、パンツァネッラ(パンサラダ)、フリット各種…どれも調理のコツをピタッと押さえています。
そしてトシさんは「いつも笑って厨房に立っていたい」と鼻歌と冗談は切らさない人です。当然店は主(あるじ)に似て居心地がいい。料理店は二重の意味で人を幸せにできるのだと思いました。料理と雰囲気、食べ物と人。食事にまつわる大切なことを教えてもらった気がします。

アッカディ Accadi
Via Borgo Pinti 56r, Firenze
Tel: 055-2478410 
日・月(ランチ)休み
夏季休業(7−9月のうち2、3週間)
電話で確認してみてください。日本語で応対。

著者プロフィール
粉川 妙(こかわ たえ)
甲南大学文学部社会学科卒業。卒業論文『ブタと文化 〜文化人類学的考察から〜』。以後豚と人間の歴史や風俗を調査することをライフワークとする。製薬会社勤務を経てイタリアの食・文化を学ぶため留学を決意する。2005年スローフード協会の料理学校ITAL.COOK.に入学。06年12月末まで調理場にて実地研修(ステージ)予定。
ブログ『butakoの2年間の休暇 *イタリア料理への道*』http://butako170.exblog.jpにてイタリアの食文化や著者の日々の様子を配信中。

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