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南イタリア小都市探訪  陣内 秀信
 
15 October 2000

第1回 レッチェLecce

びっくり箱のバロック迷路



 
長靴状のイタリアをアドリア海Mar Adriaticoに沿って南下し、ちょうど踵のあたりにくると、そこはプーリアPuglia地方である。オリーブの畑の続く起伏のなだらなかな田園風景の中には、その地層から出る切片を積み上げたドーム状のプリミティブな構造物が次々に登場する。人間の居住の長い歴史を誇る地中海世界の中でも、南イタリアの特にプーリア地方には迫力のある都市や集落が多い。それはこの地方が誇る石の文化によっている。トゥルッリTrulliが並ぶアルベロベッロAlberobelloの農村集落をはじめ、太陽の下で白く輝く丘状の小さな城郭都市が点在している。

この石の文化を誇るプーリア地方で、最もエレガントな都市として名高いのがレッチェである。特に十七、八世紀に繁栄の時代を迎え、「バロックのフィレンツェFirenze」とも呼ばれる。バロック様式の建築は、アルプス以北において宗教改革でプロテスタントが生まれ広がったのに対して、カトリック側が対抗宗教改革を展開する中で登場し、民衆の心を引き付けるため、感情に強く働きかける造形表現を求めた。それは世俗の建築にも及び、華麗で動きのある建築の形態を生み、都市空間にも演技的な効果 が追求された。 暖かみのある独特の華やかさを生んでいるのは、地元でとれる金色のつやをもった黄土色の石灰岩だ。粒子が細かく、軟らかくて加工しやすいため、細密な装飾にはうってつけの石だ。 この石材を自由に駆使し、すばらしいディティールで飾られたバロックの建築文化が開花したのである。


レッチェの旧市街は、古代から現代まで、さまざまな時代が重なり、実に変化に富んでいる。古代ローマ都市の繁栄ぶりは、堂々たる円形闘技場と劇場の遺跡の姿から窺い知れる。 その時代、レッチェは東西−南北の道路網で碁盤目状に計画的に開発された。だが中世に入ると、さまざまな民族の侵入、支配が続く中、規則的だった中心部でも、徐々に道路が変形し街区の歪みが生まれた。 同時に、その外側には、袋小路を多くもつ不規則な形態の庶民地区が拡大していった。


街歩きは常に楽しいが、レッチェほど、歩く人の目を悦ばせてくれる都市も珍しい。意外性のある驚きの空間をあちこちに潜ませている。数多くつくられたバロックの壮麗な教会も、ここでは大きな広場をもっていない。だが、空間の制約を逆手にとって、狭い街路を進むと、突然美しいバロック教会の正面 が目に飛び込んでくるといった効果満点の演出が随所になされている。サン・マッテオSan Matteo教会はその代表で、下層部を凸の曲面、上層部を対比的に凹の曲面 とするダイナミックな外観が、急に目の前に出現して、歩行者をびっくりさせる。


街路にも、まるで舞台装置のような演出が次々になされていった。また、その手法は多彩 である。例えば、角地に建つパラッツォ(貴族の館)の隅に、一本のジャイアント・コラム(巨大な円柱)を設ける手法だ。最も人目につく角に際立ったアクセントを置くから、最高の演出となる。円柱の柱頭の上に家の紋章を配し、象徴性をさらに高めているものも多い。円柱の何か呪術的な力さえ感じてしまう。


地中海的な体質をたっぶりもったレッチェの中でも、最も迷宮性の高いのが、ジーラヴォルテGiravolte地区である。「何度も曲がる」という意味の地名そのものが、道が複雑に入り組んだこの地区の特徴をよく物語る。もともと庶民的な性格をもったこの地区に、バロック時代、貴族の館や中流階級の洒落た住宅が入り込み、街角の円柱、バルコニー、ポルターレを巧みに配しながら、晴れがましい演劇的な街路空間がつくり上げられた。


レッチェには、貴族の優雅な世界と対照的な、庶民の賑やかな生活空間も発達している。町の至る所に分布するピアツェッタPiazzettaと呼ばれる小広場や、コルテcorteという名の袋小路がそれにあたる。近隣の人々が集まり、共同で使い、また交流する場としてふさわしい戸外空間が無数にちりばめられている。特に、袋小路のまわりを小さな住宅群がぐるりと囲う構成は、プーリア地方の小都市の一般 的な形式であり、昼間外に働きに出る農民を中心とする庶民階級にとって、理に適ったものだった。家が手狭な分、共有の路地が庭先のような役割をした。今も路上に洗濯物を乾かす光景をよく見る。袋小路の突き当たりには、しばしばマリア像が祀られ、近隣の人々の精神的な絆となってきた。南イタリアの人々のあの人懐かしさは、こうした近隣の濃密な人間関係とも結びついているように私には思える。


レッチェには、外部空間を巧みに取り入れた多様多種な住まいの形式が存在している。これほどまでに高度な住文化を築き上げたレッチェの歴史的な経験に改めて驚かされる。

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著者プロフィール

陣内秀信 (じんない ひでのぶ)
1947年、福岡県に生まれる。東京大学大学院工学系研究科博士課程終了。
専門は、イタリア建築・都市史。現在は法政大学工学部建築学科教授。
日本におけるベネツィア研究の第一人者。
著書に「ヴェネツィア ―水上の迷宮都市―」講談社
   「都市を読む *イタリア」法政大学出版局
   「都市の地中海」NTT出版局
   「イタリア 小さなまちの底力」 講談社
   「地中海都市周遊」中公新書 福井憲彦氏との共著

本原稿でとりあげている都市については、著書の「南イタリアへ! ―地中海都市と文化の旅―」講談社現代新書に、他の魅力的な都市とともにさらに詳しく紹介されています。

 


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