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小都市をたずねる旅 -  シチリアの町を歩く バックナンバー
5 Giugno 2002
その魅力は「神殿の谷」ばかりではない



アグリジェント Agrigento  
  


シチリア島 - アグリジェント
Sicilia - Agrigento  




小森谷 慶子

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アグリジェントといえば、18世紀のゲーテも訪れた「神殿の谷 Valle dei Templi」が有名です。全長12kmの自然の岸壁を利用した城壁のある古代都市とその神域は、かつてアクロポリス Acropoliであった高台の市街地の下方に、のどかな果樹園のように広がっています。神殿はかつて、柱は白いしっくいで塗られて白く輝き、軒下のまぐさは「シチリアの荷馬車」のように派手に彩色されていたのですが、2500年の風雨にさらされた今日では素朴な黄土色をした砂岩系凝灰岩の石肌を見せています。この広大な神域の散歩には、半日以上をかけたいものです。
   
●神殿の谷
アグリジェントへはパレルモから電車やバスで片道2時間ほど。アグリジェントの駅前から遺跡方面行きの市バスが出ています。昼前に到着したなら、まず考古学博物館 Museo Archelogico を訪れましょう。博物館と遺跡の共通入場券 Biglietto cumulativo があります。モダンな建物で、構内には民会場 Ekklesiasterion と元老院議場 Bouleuterion の遺跡もあります。シチリアのシンボルである三本足を描いた鉢(前6世紀)や美しい壷類、吹き抜けであったユニークなゼウス神殿の模型などが収蔵されています。目の前に広がるヘレニズム時代の住宅街、隣接したサン・ニコラ教会 San Nicola 内に置かれているフェードラの神話を浮き彫りにしたローマ時代の大理石の棺 sarcofago di Fedra もマークしておきたいですね。
  
 写真説明
上:ヘラクレス神殿 Tempio di Ercole (前520年頃)
左下:神殿の谷の樹林
右下:カッレッティ・シチリアーニ Carretti Siciliani (シチリアの荷馬車)
(写真提供:小森谷賢二氏)
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神域の観光は、バス停のあるアゴラ跡の駐車場が起点になりますが、東端のユノ神殿 Tempio di Giunone までは軽い上り坂です。もしもタクシーで神域に行くのであれば、ユノ神殿の入り口と指示すれば、歩きが楽でしょう。この神域には「サラセンのオリーヴ」と呼ばれる樹齢1000年以上の古木が点在し、2月半ばにはアーモンドが梅のような花をつけます。城壁は断崖絶壁をなし、はるか南方には海の地平線が見えます。アゴラ地点にはバールや両替所があって一息つけますが、まだ半分クリアしたに過ぎません。ギリシア世界でも最大級であったゼウス神殿とそれ以西の神域もお忘れなく。ノーベル賞受賞詩人サルヴァトーレ・クアジモドが「草の上に仰向けに横たわる哀れなテラモン」と詩に詠んだ男柱像の複製(本物は博物館に)も見なくては。
   
●市内散策
翌日の午前中には旧市街の目抜き通り、アテネア通り Via Atenea を散歩してみてください。左右のわき道は階段や坂になっており、人に尋ねたりしながら、ジャコモ・セルポッタのしっくい工芸が見事なサント・スピリト教会 Santo Spirito(閉まっていても近くに住む鍵番のおばさんが開けてくれます。もちろん心付けは必要です)や、サン・ロレンツォ教会 San Lorenzo (入場料が必要)、あるいは、ギリシア神殿の基壇が地下に残るサンタ・マリア・デイ・グレーチ Santa Maria dei Greci(基壇の見学には心付けを)、そして頂に建つドゥオーモ Duomo などを訪れてみてください。入り組んだ路地や、ラバト、バクバクといった地名はアラブ時代の名残です。
   
●名産と催事
アグリジェントはアーモンド mandorla やピスタッキオ pistacchio といったナッツ類の名産地ですから、ここでは是非ナッツをペースト状にしてあえたパスタを食べてみてください。旧市街のアテネア通りのわき道を入ったアンバッシャータ Ambasciata と言うトラットリアでなら食べられるはずです。そして、お土産もやはりアーモンドのクッキー pasta di mandorla が良いでしょう。日持ちがしますし、香りとしっとり感がたまりません。アテネア通りに面した菓子店 pasticceria ならどこにでも売っています。 また、毎年2月の中旬、1週間にわたって世界からの参加者を募り、フォークロアの音楽と舞踏のコンクール「アーモンドの花祭り Sagra del mandorlo in fiore」が行われます。最終日には、極彩色の「シチリアの荷馬車」が何台も隊列を組み、旧市街の市庁舎前からパレードをします。その他、7月には守護聖人のサン・カロージェロの祭り Festa di San Caló も。
   
●作家ピランデッロ
ところで皆さんはルイジ・ピランデッロ Luigi Pirandello と言う作家をご存知ですか?彼の小説は、日本では『故マッティア・パスカル』しか翻訳されておりませんが、戯曲作家としても高名で、ノーベル賞受賞作家であり、タヴィアーニ兄弟の映画『カオス・シチリア物語』の原作者としても名前を聞いたことがあるはずです。彼はアグリジェントの生まれで、この地を舞台に多くの作品を残しています。郊外の荒涼としたカオス地区 contrada Caos にある彼の生家と墓はイタリアやヨーロッパのファンの巡礼地となっていますが、平日ならば国鉄駅前の広場から市バスで行くことが出来ます。
   
●レンターカーなら
西方30kmに、海をバックにしたエラクレア・ミノア Eraclea Minoa のギリシア劇場跡を訪れることが出来ます。座席はプラスチックで覆われていてビックリですが。ここを河口とするプラータニ川は、古代には太い河川で、ミケーネやフェニキアの商人が船で内陸部に遡行しました。だからアグリジェントの後背地に残る先住民の古墳からは、立派な舶来品が出土しているのです。同河川沿いのサンタンジェロ・ムクサロ村 Sant'Angelo Muxaroには、シチリアで最大級の半球を二つ連ねたミケーネ風の「君主の墓 Tomba del Principe 」があります(アグリジェントから車で40分)。墓は同山岳都市の中腹に無数にあり、黄色い標識も出ています(同地の市役所電話:0922-919628)。


アグリジェントデータ 
Dati di Agrigento 

■アクセス
パレルモ中央駅から国鉄、あるいはクッファーロ社のバス(Cuffaro 電話091-6161510)のバスにて約2時間。アグリジェントのバス・ターミナルは、国鉄駅前広場の北、筒状の電報電話局の建物の東側にあり、シチリア島内の主な都市への直行バスが発着している。

■観光局 AAST
Via Empedocle 73, Agrigento
電話番号 : (国番号39) 0922-20391 Fax : 0922-20246
地図や情報入手には、旧市街のアテネア門南方のブースへ
Via Cesare Battisti 15, Agrigento
電話番号:(国番号39)0922-20454
県下の情報は、AAPIT(県観光局)電話:0922-401352へ
  

■ホテル
神殿の谷の真中にある
ヴィッラ・アテナ Villa Athena が贅沢
。 Località Templi, Agrigento
電話:(国番号39)0922-596288 Fax:0922-402180
レンタカーの旅行者なら、オープンして間もない4ッ星で中庭の素敵な
バリオ・デッラ・ルーナ Baglio della Luna
Contrada Maddalusa, Agrigento 電話:0922-511061 Fax:0922-598802
 E-メール:bagliodl@oasi.it
市街地から遺跡に向かう坂の途中にある、モダンで快適で値ごろもいいのが
コッレヴェルデ・パーク・ホテル Colleverde Park Hotel Passeggiata Archeologica, Agrigento 電話:0922-29555 Fax:0922-29012

旧市街には残念ながら2ッ星の小さな安宿が3軒あるのみ。隣のモゼ村 Villaggio Mosé に団体を受容できる大型ホテルが数件あり。夏場なら、サン・レオーネ San Leoneのリドに建つリゾートホテルもおすすめです。


■地元で人気のトラットリア
ブラック・ホース Black Horse (Via Atenea 8 電話:0922-23223)
ラ・フォルケッタ La Forchetta (Piazza San Francesco d'Assisi
電話:0922-594587)
アンバッシャータ Ambasciata (Via Giambertoni 電話:0922-20526)


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著者プロフィール

小森谷慶子(こもりや けいこ)
東京女子大学文理学部史学科卒。特に南イタリアを対象とするイタリア史研究者。著書は『魅惑のローマ』(グラフィック社)、『シチリアへ行きたい』(新潮社とんぼの本、1998年に国際ジャーナリズム賞審査員特別賞を受賞)、『ローマ古代散歩』、『ナポリと南イタリアを歩く』(いずれも新潮社とんぼの本)。ご主人で建築家の小森谷賢二氏が写真を担当。




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