
ヴェネト、ロンバルディア、トレンティーノ・アルト・アディジェの3州にまたがるイタリア最大の湖、ガルダ湖。古くはベナコBenaco(ケルト語の岬を意味するBennachに由来する)湖と呼ばれ、ガルダという今の名称はドイツ語の“要塞”に発しているようです。ヴェネト側の湖岸は、オリーブの岸辺La Riviera degli Oliviと呼ばれ、青く澄んだ水面に古城が浮かび、いずこも絶景。温暖な保養地として、ブレンネロBrennero高速道路をぶっ飛ばしてやって来るドイツ人観光客の“植民地”状態ですが、ドイツ人に独り占めさせておく手はありません!スポーツ施設はもちろんテーマパークも目白押しなので、家族や友達でアクティブな旅を楽しみたい方には特におすすめです。
☆ラジーゼLazise
オリーブの岸辺の南端、ペスキエーラ・デル・ガルダPeschiera del Gardaから、国道249号線(別称、ガルデサーナGardesana)を北に進んだラジーゼ間には、イタリア最大の遊園地、ガルダランドGardaland (www.gardaland.it)をはじめ、サファリ・パークのパルコ・ナトゥーラ・ヴィーヴァParco Natura Viva (www.parconaturaviva.it)、映画村のムービー・ストゥーディオMovie Studios(www.moviestudios.it)、トロピカルな水の楽園、アクア・パラダイスAqua Paradiseや中世のディナーショーが楽しめるメディーヴァル・タイムスMedieval Times、ロック・スター・カフェRock Star Cafe等を擁する、これまた巨大レジャーパークのカネーヴァワールド Canevaworld(www.canevaworld.it)などが集中しています。各施設のオープン期間は各サイトで要チェック!ラジーゼには中世の城壁がほぼ無傷でのこっており、可愛らしい港の沖合い100mには、1509年に沈没したザッカリア・ロレダンZaccaria Loredan率いるヴェネツィアのガレー船が、今でも水深17mの湖底に眠っているそうです。また、ラジーゼ郊外、コラ・ディ・ラジーゼCola` di Laziseには第二次世界大戦中、ドイツ軍ロンメルの司令部が置かれていた19世紀のヴィッラ、ヴィッラ・デイ・チェードリVilla dei Cedri(www.villadeicedri.com)があり、現在は柑橘類の樹木に囲まれた温泉パークとなっています。夏は高速A4のペスキエーラの出口が大変込み合いますから、お隣のソンマカンパーニャSommacampagnaか、少し遠回りでも高速A22のアッフィAffiから入られることをおすすめします。
写真説明 上:搭の上から眺める湖−マルチェージナ城より
左下:神秘に輝くガルダ湖)
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右下:船と古城、思わずスケッチしたくなるような風景のトッリ・デル・ベ
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☆バルドリーノBardolino
ガルデサーナ沿いに次に見えてくる町が、ワインの一大産地、バルドリーノBardolino。12世紀ロマネ
スク建築のサン・セヴェーロSan Severo教会や、9世紀カロリング朝のサン・ゼーノSan Zeno教会など
の見どころの他に、ワイン博物館Museo del Vino(www.zeni.it)があります。ブドウ畑が連なる小高い丘の
上から眺める青い湖を肴に飲むワインは格別です。
☆ガルダGarda
バルドリーノから約3キロ先には、オリーブと糸杉の甘美な光景が美しいサン・ヴィジーリオ岬Punta San VigilioのあるガルダGardaが続きます。ここは、951年、夫ロタールLotharを毒殺されたアデレードAdelaide女王が、夫の殺人者の息子との再婚を拒んだ罪で幽閉されていた城塞があった場所です。アデレード女王は、脱出不可能とされていた砦から牧師の力を借りて抜け出し、その後、神聖ローマ帝国を治めたオットーOtto1世と結ばれます。長い歴史のなか、砦は風化してしまい、今では、ガルダの遊覧船の乗り場付近に立ち並ぶカフェやレストランは、にぎやかに戯れる外国人観光客の姿であふれかえっています。
☆トッリ・デル・ベナコTorri del Benaco
トッリ・デル・ベナコには、1383年にアントニオ・デッラ・スカラAntonio della Scalaが建てた城が港にそびえており、現在はスカラ城博物館Museo del Castello Scaligero(11月から3月は休館)となっています。城の中では、地元の名産であるオリーブオイルの生産過程、湖での漁獲などに関しての展示がされています。湖沿いの遊歩道、ルンゴラーゴLungolagoは、他の町より静かで落ち着いた雰囲気がします。
☆マルチェージナMalcesina
1786年9月13日にこの地に立ち寄ったドイツの詩人ゲーテは、そのあまりの美しさに感動し、デジカメもビデオもなかった当時、何とか旅の思い出を残そうと、湖畔に腰掛けてスケッチをしました。ところが、当時、政情不安定だった為、オーストリアのスパイと間違えられ、逮捕されそうになりますが、イタリア語が堪能であったこと、外交能力に優れていたことが幸いして容疑を逃れた、というエピソードが残っています。彼のマルチェージナへの熱い想いは、湖上の城塞の中にあるゲーテの部屋Sala Goetheに展示された作品群から思い知ることができます。チェントロの迷路のような路地のあちこちには可愛らしい店が並び、絵描きやエノテカが集まるトゥラッツァTurazza広場はパリのモンマルトルの縮小版みたいな感じがします。町からロープウェーで、バルド山Monte Baldo(標高2218m、冬はスキーのメッカ)まで登れば、前方には湖、後方にはアディジェ川の谷間のパノラマが一望できます。このあたりは、風向きが良いせいか、ウィンドサーフィン・スクールが多く、州を越えた隣町トルボレTorboleあたりまでは定期船以外のモーター船舶禁止地区に指定されています。その他にも、ダイビング、トレッキング、ロッククライミング、勇気のある人は、バルド山から豪快にハングライダーなど体験されてみてはいかがでしょう?
写真説明
左下: マルチェージネからトレンティーノ州のトルボレまではウィンド・
サーフィンのパラダイス
右下:そぞろ歩きが楽しい町、マルチェージネ。チェントロにあるアンチックショップ
☆グルメ・イベント情報
澄んだ湖からとれる新鮮な鯉、鱒などを材料に、ティンカ(鯉の一種)のリゾットRisotto con la tincaや、カワカマスのソースがけポレンタ添えLuccio in salsa con polentaなど珍しい郷土料理が味わえますが、インターナショナルな土地柄なので、海の幸や肉料理ももちろんメニューに登場。1912年〜1913年にガルダに滞在していた英国作家、D.H.ローレンスは著書“Twilight in Italy”に“夜はいつもミネストラMinestra(スープ)ばかり食べていた”と回想しています。秋であれば、トッリ・デル・べナコに近い山沿いの町、サン・ゼーノ・ディ・モンターニャSan Zeno di Montagnaの名産の栗を使って作る栗のスープMinestrone di marroniが美味です。いずれのお皿にもガルダ湖自慢のオリーブオイルを一振りしましょう。ペスキエーラでは、毎月第1日曜日、バルドリーノでは毎月第3日曜日、トッリ・デル・ベナコでは毎週水曜日の夕方に骨董市が開催されます。また、8月にはガルダ湖遊覧船主催の湖上花火大会Notte di Fiabaが、各地で催されます。
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