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特集 小都市を訪ねる旅    イタリア汽車の旅
15 marzo 2005



第5回 湖水地方への旅



池田匡克・池田愛美


   

ミラノを中心に放射状に点在する湖群周辺がいわゆる北イタリア湖水地方。西から順にオルタ湖、マッジョーレ湖、ヴァレーゼ湖、ルガーノ湖、コモ湖。さらに東へ向かえばイセオ湖、ガルダ湖まで湖水地方まで含めても異論はあるまい。プレアルプスのイタリアサイドに属するこうした湖はいずれも氷河湖であり、避暑地または避寒地としてグラン・ツーリズモの幕開け以来常にヨーロッパ中から旅行者が後を絶たなかった北イタリア屈指の景勝地である。

そうした湖水地方の中でも、かつて澁澤龍彦氏が「ヨーロッパの乳房」などのエッセイの中で紹介した湖上群島、ボッロメオ諸島を有するマッジョーレ湖の存在は白眉であろう。湖上に聳えるバロックの権化、あたかもノイシュヴァンシュタイン城か、それともボマルツォの怪物庭園か。イゾラ・ベッラに造られた奇々怪々、魑魅魍魎な庭園はイタリアン・バロックの極致であり、湖水地方を旅するからには見逃すわけにはいかない。イゾラ・マードレには18世紀の東洋趣味&シノワズリーを反映したエキゾチック&オリエンタルな植物園が広がっている。未だ現役の漁師が住むという湖上の小島イゾラ・デイ・ペスカトーリでは、かつて老婆が手刺繍を施す店でイニシャル刺繍入りのリネンを買ったことがある。対岸のストレーザはヘミングウェイの「武器よさらば」の舞台にもなった街で、湖岸に今も残る古いホテルのバーでは今も「ヘミングウェイ・マティーニ」なるオリジナル・マティーニがバーのスタンダード・メニューとして残っている。かつてもっとも輝いていた時代でそのまま時の流れを止めてしまったような街、それがストレーザなのだ。

ミラノ中央駅を出るブリュッセル行の国際列車「ECエウロシティ」に乗り込んで40分もするとやがて右手にマッジョーレ湖が見えてくる。湖岸沿いにしばらく走り、木立の中を通り過ぎる頃そのストレーザに着く。夏のバカンス時期はこの小さな街もヨーロッパ中からやってくる旅行者でにぎわうが、オフシーズンの湖畔の街はやけにもの寂しくて気持ちいい。いつもなら「遊覧船はいかが?」とよってくるボートの客引きもなんとなくのんびり。湖水地方を旅するならば復活祭前の初春の時期が実はベストタイムなのかもしれない。

もうひとつ、ミラノからのワンデイトリップとして人気なのがコモ湖。こちらはマッジョーレ湖とは少々趣が違い、さらに高級感を増した感じのするリゾート地である。ミラノから出かける場合はイタリア鉄道FSでなく、北ミラノ鉄道Ferrovie Nord Milanoが便利で、カドルノ駅から電車に乗る。ミラノまで十分通勤&通学圏内にあるコモ行電車はいかにも地元のローカル線と行った感で、学校帰りの学生も多い生活感あふれる路線。約1時間でコモに着く。

このコモ湖は「人」の字型の湖で北岸には北イタリア屈指の名ホテルとして名高い「ヴィッラ・デステ」があり、昔でいえばジャンニ・ヴェルサーチ、最近ならジョージ・クルーニーとかの俳優、歌手の別荘が密集する高級別荘地。「人」型の左足つま先にあたるコモの街はコモシルクの名でも知られるようにファッション関係者にはおなじみの街で、街行く人もファッション度合いもストレーザとは違い、ミラノとほぼ同じ。北イタリアのリゾート地で手抜きの服装は許されない。ここでのもうひとつの名物は湖岸に面したレストランでの湖魚料理。ウナギやカワカマス、ペルシコと呼ばれるバスに似た魚など湖水地方でおなじみの魚からコリゴーネ、日本で言うホワイト・フィッシュまで魚種は非常に豊富である。「淡水魚なんて」と馬鹿にせず是非一度お試しあれ。淡白かつ豊満な白い肉からはまぎれもなく湖の香りが立ち上ってくるはずだから。


東のガルダ湖に向かえば美しい湖岸の街、シルミオーネに出会える。



シーズンオフのマッジョーレ湖はどこかもの悲しげ。



ストレーザに向かうならば北イタリア一のターミナル駅、ミラノ中央駅から。



コモ湖行き北ミラノ鉄道が発着するカドルナ駅。

 

データ
Dati



マッジョーレ湖のボッロメオ諸島Isole Borromeeへはストレーザから船が出ています。
(ストレーザやコモまでの行き方は本文参照のこと)

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著者プロフィール

池田匡克 池田愛美
フリーライター、編集者。月刊誌編集部勤務を経て、1998年に渡伊。以降、フリーランスで日本の男性誌、女性誌、旅行誌、料理誌に編集、及びライターとしてイタリア 情報を寄稿。イタリア全州を車で回るつもりだったが、最後のヴァッレ・ダオスタ州 のみ列車で踏破。以来、近頃は鉄道移動がマイブーム。近著は「シチリア 美食の王 国へ」(東京書籍)、「地球の歩き方 イタリア鉄道の旅」(ダイヤモンド社))、「イタリアの市場を食べ歩く」(東京書籍)。ロー マのFreelance International Press会員。フィレンツェ在住。


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