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イタリアワインVino探検記
20 Giugno 2002

第3回 Teroldego 〜黄金の大地〜


 



中川原 まゆみ



Teroldego(テロルデーゴ)と言われても「それって星の名前?」と思うほど知名度はなく、現にイタリアでも知ってる人は少ない。正確にはテロルデーゴは品種名で、ワイン名は「テロルデーゴ・ロタリアーノ Teroldego Rotaliano」だが、通常はテロルデーゴと呼んでいる。私がイタリアで初めて飲んだテロルデーゴは、ミラノの下町のトラットリアで「仔羊のテロルデーゴ煮込み」というメニューがあり、その時にワインも同じテロルデーゴを注文した。色は黒に近い濃い深紅で香りも強く、プラムのジャム、ブルーベリー、黒胡椒などで味わいもベリー系フルーツの濃縮があり、ボディも感じられ、アルコール度も高い。そして何よりも興味をもったのは、トレント県のロタリアーノ平原のメッゾ・ロンバルド、メッゾ・コロナ、サン・ミケーレ・アディジェの三角地帯の極限られた地区でしかつくられていない点だった。キャンティの主要品種であるサンジョベーゼは、世界中で約10万ヘクタールの栽培面積であるのに対して、テロルデーゴは400ヘクタールしかない。何故なんだろう?その答えを知りたくてトレント Trento に出かけた。

モデナからトレントに向かって車を走らせると、両脇に白い岩肌が見える山々が迫ってくる。モデナのある広いパダーノ平野からトレントにかけて、中央にアディジェ川が流れ、支流のノーチェ川(ノーチェとはクルミの意)とに別れており、中洲の部分がテロルデーゴの栽培地区になっている。この地方にノッチョ−ラ(ヘーゼルナッツ)から名前がつけらてたノジオーラ Nosiolaという柑橘系の香りとキリとしまった酸味の白ワインがあり、この地方では木の実がたくさんあることがわかる。ドルチェにも木の実と干しイチジクを使ったツェルテンがあり有名。

メッゾ・ロンバルドに着き、テロルデーゴは地元に根ずいているワインだと強く感じていたので、私は地元の人がどのように思っているのか知りたかった。そこでまず、歴史も古く、伝統的な作り方を今でも続けている"Barone de Cles (バローネ デ クレス)" 1614年創業を訪ねてみた。ここでは100年以上も使っているセメント製タンクや、樹齢50年になる南東向きの畑などを見せてもらい、テロルデーゴは量り売りやノヴェッロ(収穫年に飲むイタリア版ヌーボー)の生産量が多い事もわかった。ここの住人はアンティパストからセコンドまで、たとえ魚料理であっても、テロルデーゴを飲み続け、『白ワインは女が飲む酒』などと言っているぐらい、これが浸透している。

スケジュールを決め、さあ、テロルデーゴ探検!と思ったが、まずは食事。朝、市場をまわり、白アスパラを食べる事は決めていたので、八百屋に聞いた街はずれのトラットリアで昼食にした。春の日射しは心地よく、ガーデン席で、アンティパストは目当ての"Asparagi Freschi di Bassano con Prosciuto cotto in casa e Salsa uova (バッサーノ産白アスパラの自家製ハム添え、卵ソース)"を注文。白アスパラはヴェネト州のバッサーノが有名で卵がよく合う。ナツメグ、ターメリックなどが入っていたが、いろいろなタイプのソースがある。ワインは定番のアロマがあり、軽いハーブ香があるトレントの"ソービニオン Sauvignon"と合わせた。プリモピアットは触感が忘れられない"Risotto di Orzo alla Trentina con Carpaccio di Spek (大麦のリゾットのトレント風、スペックのせ)"。スペックとは豚のもも肉の部分を3度に別け塩、香草などに漬け、低い温度で1週間かけてスモークし、長期熟成させた生ハムで、アルトアディジェの山岳地帯が発祥の地。昔は豚を半身にして薫製にして保存食にしていた。今ではトレンティーノ州でも広く作られている。ドイツにも"シュワメイル"と呼ばれ同じタイプの物があるが、塩味も濃く、スモークが強く硬い。イタリア産はデリケートで香りもよく、生食に向いている。ちなみに、トレンティーノ・アルトアディジェ州は北のボルツァーノ県と南のトレント県に別れている。北上するにしたがい、ドイツ語表記も増え、料理の傾向もドイツ色が強くなる。ボルツァーノ県はオーストリア統治時代があった影響で、現在でも第一言語がドイツ語で、ワインのラベル表記も2ヶ国語となっている。

話を戻そう。プリモピアットのワインは主に北イタリアで作られている弱発泡性の赤"マルツェミーノ Marzemino"と合わせた。明るいルビー色でラズベリーなどのフレッシュな森のベリー系の香りがある。セコンドピアットは"Cervo in Umido (鹿肉の煮込み)"をエノテカで買ったテロルデーゴを持ち込んで合わせた。色は深い紫暗で、香りは黒スグリ、生のグリーンペッパー、丁字、乾いた血、味わいも骨格があり安定している。筋肉の美しいボディビルダーのようだ!そして、なによりも庶民的な値段。皿はかなりのボリュームだったが、相性がバツグンだったため、全部食べてしまった。ドルチェは世界的に有名な"Strudel シュトルーデル(アップルパイ)"。ここはRenetta(レネッタ)と呼ばれるリンゴの産地で、このリンゴは黄色で表面がざらつき、無骨で硬い。紙のように薄くのばした生地にレネッタ、松の実、レーズンなどを折り込みオーブンで焼いたもの。おばあちゃん達はいかに薄く生地を伸ばせるかが、自慢話になるらしい。ドルチェのワインは甘口のロゼで乾燥した赤い小花の香りがする"モスカート ローザ Moscato Rosa"にした。お腹も落ち着き、さあ!出発。

11件のカンティーナ(ワイナリー)を訪ねて答えが出た!テロルデーゴ地区は、大陸性気候で夏は少し湿度はあるが、深夜ガルダ湖から熱い風、ノン渓谷から冷たい風が吹き込む。土壌は石灰質をはじめ、粘土質、小石など複雑に組み合わされており、特にアルプスの雪は1年中通してあり、少しずつ解け、ミネラル分は2つの川に流れ込み、この土地に運ばれてくる。考えてみると当たり前なのだが、この環境がこのワインをつくりだしている。カリフォルニア、トスカーナ、ニュージーランド、シチリアなどで試してみた人もいたが成功しなかったと、作り手の人達は言っていた。ワインを作る環境がいかに重要か、再確認させられた。Teroldego(テロルデーゴ)とは「Terra d'oro(黄金の大地)」から由来する。

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トレントの街並み

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巨大な樽

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白アスパラ

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リゾット
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シュトルーデル

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冬のブドウ畑風景

  photo7
産地 トレンティーノ・アルトアディジェ州 トレント

 

著者プロフィール

中川原 まゆみ(なかがわら まゆみ)
 蠍座 O型  7才の時に父が母の目を盗みビールを飲ませてくれた。甘い物があまり好きではなかったので、甘くない飲み物に出会って感激。それ以来いろいろ試す。コックだった叔父から1冊のイタリア料理の本をもらったのがきっかけで料理を作り始め、同時にイタリアワインも飲むようになる。1度イタリアを訪れてからは年に2、3回は来るようになり、レストランで食事をして作り方がわからないと「皿洗いをするから」といって厨房に入れさせてもらい、レシピを教わった。1995年9月、東京の中目黒にオステリア「フェルマータ」をオープン。納得したイタリアワインと集めたレシピを中心とした家庭的な店だったが、2001年3月に閉店し、渡伊。ICT(イーチーティー日本―イタリア)企画のAISイタリアソムリエ協会公認資格取得のための"ソムリエ長期研修”に参加。2001年9月日本人女性初のAISイタリアソムリエ協会公認プロフェッショナルソムリエになる。現在、エミリアロマーニャ州の「リストランテ・パオロ・テベリーニ」にソムリエとして在籍。時間ができると愛車の日産マーチに乗ってワイナリー巡りをしてる日々。

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