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イタリアワインVino探検記
20 Settembre 2002

第6回 Sagrantino di Montefalco 〜D.O.C.G の恩恵〜


 



中川原 まゆみ



人気急上昇中の Sagrantino di Montefalco サグランティーノ ディ モンテファルコ。先月、私達のレストランに来た新しいソムリエに『何が1番好きなワイン?』と尋ねたところ、『Sagrantino (通常は略してこう呼ぶ)』と答えが返って来た。私としては意外な答えだった。なぜなら、バローロやブルネロ ディ モンタルチーノという答えを予想していたからだ。サグランティーノはサグランティーノ Sagrantino種100%でなければならず、限定された小さな地区で造っていて生産量も少ない。しかし、一度飲んだら忘れないほど個性的な性格を持っている。確かにソムリエ仲間で食事をしても、しばしば話題にのぼり、お客様からのオーダーも増えた。D.O.C.G (Denominazione d'Origine Controllata e Garantita 保証つき統制原産地呼称)に認定されたのは1992年で、それまではあまり知られていなかった。D.O.C.Gとはイタリアのワイン法でトップに位置するカテゴリーで、現在23の D.O.C.G があり、キァンティ、アスティ、バローロなど国内外で有名なワインが多い。ボトルの首の部分に赤ワインはピンクのリボン白ワインは黄緑のリボンが付いているのですぐわかるはず。

   サグランティーノの作られているモンテファルコ Montefalco 周辺の町は、ペルージャを抜けアシッジを左に見ながら、内陸に車で30分ほど入ったあたり。モンテファルコ(monte=山、falco=タカ)の小さな町は標高500mの場所にあり、すそのに広がるワイン畑を見渡すことができる。このワインはセッコ secco(辛口)とドルチェ dolce(甘口)の2種類があり、昔はドルチェのみを祭日のためのワインとして造っていた。"Sagra"とは祝いの日の意。通常は9月に収穫したブドウを発酵させ、12月に皮を取り除き、翌年のパスクア(3月から4月にある祭日)にグラスにほんの少しずつと、ピッツァ ドルチェ Pizza Dolceと呼ばれる砂糖、小麦粉、卵だけで作られれるお菓子といっしょに食べてお祝した。それだけ貴重で高価だったのだ。12月に取り除いた皮も日常ワインとして飲んでいたサンジョベーゼやバルベ−ラの中に入れて、再び醗酵させて利用していた。いまでも家庭用でこの方法を続けている人がいるらしい。

サグランティーノ種はアッシジの聖フランチェスコが持って来た説、ギリシャから渡ってきた説、フランチェスコーニが中世にポルトガルから持って来た説があるようだが、地元の人はこの品種は謎が多いと言っている。ブドウの房は中程度で円柱形、粒は長細く、皮は濃紺で黒に近い色で、厚さもかなりある。この外見からも想像できるように、ワインも濃いルビー色で熟れたマラスキーノ、プラムのシロップ漬け、八角、カルダモンなどの香りでボディがあり、余韻も長く、酸味は抑えぎみでタンニンは多く、アルコール度数は高め。

私はモンテファルコには幾度か訪れているが、暑い時期は初めてで、この時期にこのたくましいワインを飲むにはかなりの覚悟がいる。まして、空腹でカンティーナを訪れ試飲すると体がつらいので、エノテカでワインを調べながら簡単な昼食をとった。知らないサグランティーノを見つけオーダーしたが、やはりこれものどから胃までズシンと落ちる。『何かオイリーな物を食べなければ』と"Petto d'oca (鴨の薫製" "Capocollo umbro (豚の練り物の軟らかいサラミ)" "Prosciutto di Norcia (ノルチャ産生ハム)"などの盛り合わせを食べ落ち着いた。

カンティーナではサグランティーノと共に生きてきた75才のアルヴァーロ・パリーニ氏 Alvaro Palini から昔話を聞かせてもらった。今では世界中に広がったこのワインだが、彼らにとっては何も変わらず、今でも祝いの日にはドルチェワインを飲んでいるし、外の世界には興味もない。このワインは市場では若いタイプ(せいぜい5年前)しか出ておらず、熟成期間が長いとどのように変化するのか知りたかったので、モンテファルコで一番古いレストランに行った。石垣で囲まれているレストランはきれいに手入れした庭があり、店の中央の暖炉では、オーダーの入った肉を焼いていた。ワインリストの品揃えは素晴らしいが、前回来た時、ワインが予想以上に酸化が進んでいたので、注文する前にカンティーナを見せてもらい、ワインの管理状態を知りたかった。予想どうり、温度管理もせず、瓶は立ててあった。いくら野性的で荒々しいサグランティーノとはいえ、もう少し考えて欲しい!本当は80年代ものを注文したかったが、この状態では想像がつくので悩んだあげく93年にした。93年はサグランティーノにとって優良年でよりワイルド。楽しみだ!!デカンタしてもらった後、瓶の底を見るとかなりのオリがあった。色はかなり落ち着いてきたが、まだまだ強い色調、グラスを近づけるとブラックペッパー、墨汁などを嗅ぎとり、スワリングしてみるとドライフラワー、ママレードなどを感じる。口に含むと酸は控えめで、厳しいタンニンは程よくこなれており、力強いボディが押し寄せてくる。余韻はかなり長く、流れはゆるやか。カンティーナで試飲した98年ものに比べるとカドが取れ、丸みはでたが、大きな違いはタンニン質の変化。私はバランスを考え、このタンニンをポジティブに解釈し、熟成させて飲むより、若い時期に野外でバーベキューをやりながら豪快にみんなで飲むワイン。そんな印象を受けた。

暑さにやられ食欲もないので、前菜抜きのプリモから始めた。"Strangozzi con funghi porcini(セモリナ粉を使った手打ち四角柱ロングパスタ ポルチーニ茸あえ)"。コシがあり、歯ごたえもあり、香りの強いポルチーニとよく合う。セコンドはエキゾチックな香り漂う"Faraona al Crostaia (ほろほろ鳥のパイ職人風煮込み)"。香草野菜にケッパー、クミンなどを加えたソースで煮込んだスパイシーな香り立つ一皿。ワインとの相性はすばらしかった。アロマ、ワインの持続性、脂肪分とタンニンのバランス。完璧!!

D.O.C.G に格上げされた事により、日本でも目にする機会が増えたと思う。また、世の中に新たに注目されるワインにもなった。そして第2のサグランティーノも近い将来出てくるだろう。イタリアにはこのサグランティーノのように、知られてない素晴らしいワインがまだまだ沢山あるのだから。

  photo1
Sagrantino Passito (ドルチェ)

  photo2
モンテファルコ

  photo3
豚の柔らかいサラミ

  photo4
アルヴァーロ氏
  photo5
パスタ Strangozzi

  photo6
ほろほろ鳥 Faraona

  photo7
産地 ウンブリア州 

 

著者プロフィール

中川原 まゆみ(なかがわら まゆみ)
 蠍座 O型  7才の時に父が母の目を盗みビールを飲ませてくれた。甘い物があまり好きではなかったので、甘くない飲み物に出会って感激。それ以来いろいろ試す。コックだった叔父から1冊のイタリア料理の本をもらったのがきっかけで料理を作り始め、同時にイタリアワインも飲むようになる。1度イタリアを訪れてからは年に2、3回は来るようになり、レストランで食事をして作り方がわからないと「皿洗いをするから」といって厨房に入れさせてもらい、レシピを教わった。1995年9月、東京の中目黒にオステリア「フェルマータ」をオープン。納得したイタリアワインと集めたレシピを中心とした家庭的な店だったが、2001年3月に閉店し、渡伊。ICT(イーチーティー日本―イタリア)企画のAISイタリアソムリエ協会公認資格取得のための"ソムリエ長期研修”に参加。2001年9月日本人女性初のAISイタリアソムリエ協会公認プロフェッショナルソムリエになる。現在、エミリアロマーニャ州の「リストランテ・パオロ・テベリーニ」にソムリエとして在籍。時間ができると愛車の日産マーチに乗ってワイナリー巡りをしてる日々。

*ICT(イーチーティー)の研修については、トップページの右バナー CLUB APICOをご覧下さい。



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