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イタリアワインVino探検記
   
15 Marzo 2004

第14回 Moscato di Noto/Moscato di Pantelleria
 〜シチリアのドルチェモスカート東西対決〜


 



中川原 まゆみ





甘口ワインと言えばモスカートというほど世に知られていて、よく消費されている。
思い浮かべるのはピエモンテ州の軽い発泡性で口当たりの柔らかなアスティースプマンテやモスカートダスティ。クリスマスにパネットーネやパンドーロと一緒に飲むのは定番で、日本でも何故かこの時期にケーキ屋の店頭で売られているのを目にする。
白いラベルで赤いラインの入っているものが多く、やはり、造り手もクリスマスをイメージしてデザインしているのだろうか?

アルコール度数はかなり低く5〜10度程度の甘口ででフレッシュな果実香があり、口当たりもソフトで特に女性に人気があり、マルケに住むソムリエの友人は仕事が終わると冷蔵庫で冷やしてあるモスカートダスティを毎晩1本飲んでいる。
イタリアで次に名前にあがるのがD.O.CのMoscato di Pantelleria(モスカート ディパンテェレリア)、シチリアの南西に位置する島で造られている辛口、発泡性、リキュールなどがあるが甘口ワインが有名。
この島は夏期には連日40度を超す暑さで、さらに甘口ワインのなかのPassito di Pantelleria(パッシート ディ パンテッレリア)は収穫後に枝ごと切り離し、畑に寝かせてさらに太陽の熱で乾燥させ、糖度を上げる。私はPassito di Pantelleriaを想像するだけで奥歯が痛くなってくる、何故かというと、とても甘いからだ。色は黄金色に光り輝き、グラスが揺れると、まるで陽炎(カゲロウ)のように波打ち、高い粘度を感じる。グラスに近づくとハワイアンが聞こえてくる。パイナップル、マンゴ、パパイア、そして蜂蜜、時にはユーカリなど。思いきって口に投げ込むと勢いは後頭部まで広がり、長い余韻と共にパンテッレリア島の乾いた暑さとワイン畑から望む地中海の碧さを思いおこさせる。
まさに、自然が造りだす野性味あふれたパワーだ!

ここで栽培されているモスカート種はジビッボと呼ばれ、シチリア本土の人達はモスカート ディ アッレサンドリアと呼んでおり、ピエモンテ州と同じ仲間の品種だ。そして、シチリアの反対側の東南の海岸に位置するネーロダーボラの優良生産地で知られるノート地区で造られているMoscato di Notoはパンテッレリア島やピエモンテとは違う流れのモスカート種でモスカートビアンコと呼ばれている。
色はほんのりと緑がかったもえぎ色で香りもデリケート。青リンゴ、レモンの皮のシロップ漬、土壌からくるミネラル感、味わいもシチリアを忘れるほどのさわやかな酸味と静かで流れるようなフィナーレ。
ここはパンテッレリア島とは違い、乾燥というよりは半乾燥。
枝を切り落とすのではなく、ブドウ房の茎部分に房が落ちない程度にハサミを入れ、乾燥させる。

さて、この性格も環境も出身も違うモスカートを飲み比べてみようと友人のワインの造り手にトラットリアを予約してもらい持ち込んだ。
この時期(2月末)のシチリアはシロッコと呼ばれる風が南から吹き始めているため、景色は霧がかかったようで砂が舞っている。そして次の日は暖かく雨が降り、空中に舞っている砂が雨と一緒に降ってくるため、車の窓にワイパーをかけても白くなり、髪はザラザラで気持ちが悪い。とりあえず、長いシチリアの夜が始まる前にホテルで髪を洗って出直す事にした。

私はシチリアで毎回、食べ続けているパスタがある、大好きでそしてメニューにあると毎回頼み、というかお店を選ぶ時の電話にしろ、直接お店に行って予約をするにせよ、この皿が注文できるか確認してからレストランを選ぶほど大好きだ!その名は”Pasta con Sarde(イワシのパスタ)”。今日はアペリティーイヴォなどせずにアンティパストからドルチェまで完結すると決意し、最近のお気に入りのグリッロ種100%の酸は充分あるが角がとれていて、花の香りのする、控えめでまとまりのある白ワインを注文した。

当然、アンティパストは"Antipasto misto(前菜盛り合わせ)"。
南イタリア、特にシチリアやサルデーニャではそれぞれのお店がいろいろな前菜を造り客席に並べてある。さっそく”Zucca in grodolce(赤カボチャの甘酢漬)””Sarde in agrodolce con cipolla(イワシの甘酢漬に玉ねぎ添え)””Melanzane a'dinvoltini con ricotte(なすのリコッタチーズ巻きトマト煮)”などなど、、。
あ〜、シチリアに来たと実感。

お待たせのプリモピアット、イワシのパスタ。ここのこのパスタは伝統的な造り方でパスタは穴の空いたブッカティーニ、イワシ、ウイキョウ、にんにく、レーズン、パン粉を型抜きし、オーブンであたためる。ちょうど、ウイキョウの時期でもあり、たくさん使っていて、香りもよく食欲をそそる。もしかして、この時期にだけある山岳地帯に生えている野性のウイキョウ?これは香りが強く、個性的なフィノッキエットでなかなか出会えないので期待して聞いてみたが残念ながら違っていた。

セコンドピアットはこれも今が旬の赤チコリを使った”Invortini spada con radicchio(カジキマグロの赤チコリ巻き鉄板焼)”ワインはすでにプリモピアットで飲み干したのでカタラット種、シャルドネ種混醸の2003年サンプルをカンティーナからもらったので試してみた。赤チコリの焦げめと苦味はこのワインではちょっと勝ち目はないようだ!
そして、ドルチェの出番。

Moscato di Notoにはフレッシュなオレンジの酸味を活かした”オレンジとオレンジの皮のシロップ煮”、酸のバランスも余韻の強さも相性はなかなかの出来栄え。Passito di Pantelleriaにはひと口大で数種類の”アーモンドの粉を使った菓子”、アーモンドからくるナッツ香と乾燥させたブドウから造ったパッシートのバター香が絡み合ってさらに複雑に感じられる、これは、新しいアビナメントの発見だ!と納得。
どちらも、シチリアを代表するドルチェで素朴な土地柄も感じられ、心も体も満たされた。

シチリアだけで赤、白、合わせて数十種の土着品種があり、土壌、気候は海に囲まれている理由のどもあり、はっきりといくつものタイプに別れている。地元のエノロゴは『品種のクローン開発など、必要ないんだよ!だってたくさんの土着品種があり、いろいろな環境があるから、同じ品種を植えても全然違う性格になるし、バリエーションには事欠かないよ!』と。シチリアはまだまだ奥が深そうだ。

 

 
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オレンジのシロップ煮

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アーモンド菓子

  photo4
イワシのパスタ
  photo5
ワイン畑

  photo6
トラットリア

 
 

 

著者プロフィール

中川原 まゆみ(なかがわら まゆみ)
 11月10日生 O型 札幌出身.
1度イタリアを訪れてからは年に2、3回は来るようになり、レストランで食事をして作り方がわからないと「皿洗いをするから」といって厨房に入れさせてもらい、レシピを教わった。1995年9月、東京の中目黒にオステリア「フェルマータ」をオープン。納得したイタリアワインと集めたレシピを中心とした家庭的な店だったが、さらに食に関して知りたい欲求を抑えきれず2001年3月に閉店し、渡伊。2001年9月、AISイタリアソムリエ協会公認プロフェッショナルソムリエになる。現在、エミリアロマーニャ州の「リストランテ・パオロ・テベリーニ」にソムリエとして在籍しながら、感動的なワインに巡り会うためにワイン産地を徘徊する日々。ワイン雑誌『Winart(ワイナート)』にて "イタリア マイナー品種探検" の連載、"イタリアのワインニュース"などの文筆活動の他、イタリアの食全般に関わるコンサルタントも手掛ける。





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