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イタリアワインVino探検記
   
15 novembre 2004

第17回 BORGHERI SASSICAIA          
〜歴史を重ねつつ、進路を切り開くサン グイド〜


 



中川原 まゆみ



世界に名前を轟かせたサッシカイア。イタリアワイン好きでなくても、この名を知らない人はいないだろう。カンティーナの名前は"テヌータ サン グイド"。ボルゲリの町のサン グイドという土地にある。
トリノからこの地に移り住んだマリオ・インチーザ・デッラ・ロケッタが小高い丘カスティリノチェッロの東斜面にカベルネ ソービニオン、カベルネ フランを植えたのは1946年だった。たった2ヘクタールの畑だったが、ここからボルゲリ サッシカイアの歴史が始まった。
サッシカイアが一般に発売されたのは1971年からで、初ヴィンテージは1968年、5,000本のみだった。67年以前は家族、友人のためだけのワインだった。その後、スーパータスカンと謳われ、畑も毎年2〜3ヘクタールづつ、カベルネ ソービニオン80%、カベルネ フラン20%の比率で植えられ増えていった。1990年には年間3万本、1995年には5万本に達している。1994年にD.O.Cボルゲリ サッシカイアとし認可させたのは記憶に新しい。この期を境にさらに生産量は増え続け、現在では75ヘクタールで年間18万本の生産量に達する。

畑は大きく別けて3ケ所になる。小石を多く含むカスティリノチェッロを囲む64年の南斜面、91年の南西斜面、南東斜面。ストラーダボルゲリのオルネライアに近い東側の畑。そして、サングイドからボルゲリまでの糸杉道のほぼ中間地点で道をはさんで両側のやせた砂質の畑。エノロゴは初ヴィンテージから伝統派ジャコモタキスが担当しており、現在でも当時とほぼ変わらない醸造方法で行なわれている。
収穫後、手作業で房を選別し、かもしからMLFまでを4週間足らずで終わらせ、バリックで約2年間熟成させる。多少変わった点はリモンタージュを開放式に変え、酸化を促進させた事。あと、90年から97年までは5%程度、アメリカ産バリックを使用していた。そのせいもあるだろうが94年、96年のヴィンテージにはトースト香が残る。90年代後半は97年が優良年と言われていたが、サッシカイアに関しては近年では98年が最高のヴィンテージだ。ブルネッロ ディ モンタルチーノは99年が素晴らしいヴィンテージだが、サッシカイアは問題の多い年と言われている。ここが他のトスカーナとヴィンテージの性格が違う点だ。理由は、海から5kmしか離れおらず地中海性気候の影響で風通しがよく、降水量が少なく、温暖。北東に走る山がモンタルチーノとの間の壁になり独特のミクロクリマをつくっているということ。収穫も9月5日前後とモンタルチーノよりも3週間早いので、病気、雨などの被害のリスクも低い。

イタリアのマスコミで近年のサッシカイアのヴィンテージの差の激しさについてネガティヴな報道もされたが、それがワインの宿命であり、喜びではないだろうか。サッシカイアは純粋にヴィンテージを語り、楽しむ事ができる数少ないイタリアワインで、現在の他のトスカーナのワインと一線を画している。ジャコモタキスも言っているとおり、ワインの90%は畑でできるものであり、毎年の天候の違いによってそれぞれのヴィンテージの個性ができあがるものであり、人為的に造るものではないと。
今年のヴィンテージ2001年は、夏期は暑く、雨が少なめという気候の点では2000年ととてもよく似ている。しかし、90年代後半から続いた傾向として、ヴィンテージによって描くカーヴは違うにせよ導入部分にドラマが展開したのに比べ、2001年はそのポイントが後半からエンディングに移行し、さらに長くなり、数々の表情に変わっていく。とても、エレガントで知的な色気を感じさせ、新しい流れが始まったと予感させる。

そして、今年で3年を迎えるグイダルベルトは、98年にニコロ・インチーザ・デッラ・ロケッタがいとこから30ヘクタールを30年リースで借地契約して始めた畑で造っているワイン。畑は糸杉道の北西に位置し、ここは以前から地元品種のサンジョヴェーゼが植えられていた。そこに98年、99年にメルローとカベルネ ソーヴィニオンを植えた。ニコロ・インチーザ・デッラ・ロケッタは『サンジョヴェーゼがイイ状態で植えてあったので、新しいワインを始めようと思った』ときっかけを話してくれた。カンティーナはサッシカイアと別で、DOCボルゲリ サッシカイア地区の中央部にあたる場所にあり、元オリーヴオイル圧搾所を改装してカンティーナにしているので通称"フラントイオ"と呼ばれている。
グイダルベルトは2000年がファーストヴィンテージ。2000年、2001年はカベルネソーヴィニオン40%、メルロー40%、サンジョヴェーゼ20%の比率だったが、今年のヴィンテージ2002年はサンジョヴェーゼの比率を下げて10%にし、カベルネソーヴィニオン45%、メルロー45%に変えた。その要因には気候が深く関与している。知ってのとおり、2002年の4月から6月末にかけては暖かい日が続き、6月に関しては30度を超す夏日が何日かあった、しかし、7月から気温は急激に下がり、雨の日が続き、収穫時期まで続いた地区もあった。この地はトスカーナの内陸部に比べ降水量は少なかったにせよ、収穫期の遅いサンジョヴェーゼは特にダメージが大きかったと考えられる。ワインは2002年という難しいヴィンテージだったにも関わらず、2001年とは大きさは違うにせよ全体のバランス、輪郭に遜色ない。かえって、2001年はもったりと緩かった印象があったが、2002年は酸が立っているおかげで背筋が伸びすっきりとしている。

そして、グイダルベルトのセカンドワインとして、サンジョヴェーゼ主体のIGTトスカーナのLe Difese(レ ディフェーゼ)2002が今年の春に発売された。このワインはサンジョヴェーゼ85%、カベルネソーヴィニオン15%で構成されており、新樽バリック30%(フランス産1/2、アメリカ産1/2)、2ndバリック30%、サッシカイア使用後樽40%で、12ヵ月に熟成後にグイダルベルトまたはレ ディフェーゼに選別される。
レ ディフェーゼは3万本のみで1ヶ月完売した。価格がグイダルベルトの半値以下というのも要因だろう。ボディこそ中程度だが、透明度の高い酸はすがすがしく澄んでおり、ラズベリー、赤い小花の香りは控えめでかわいらしく、最後に質の高いタンニンが家紋を印象づける。エノロゴ、栽培責任者共にサッシカイアと同じで、醸造行程も流れを汲んでいる。

現オーナーのニコロ・インチーザ・デッラ・ロケッタに今後の展望を訪ねたところ『サッシカイアに関しては生産本数を増やす予定はなく、64年の畑の植え替え作業をここ数年でやり、グイダルベルトとレ ディフェーゼは地元のワイン、イタリアのワインとして定着させていきたい。他にワイン畑の環境整備のために森の手入れ、ビオロジカ(バイオロジー)なども探っていきたい』と語っていた。
テヌータ サン グイドは新たな展開を始めたグイダルベルトとレ ディフェーゼで新天地を切り開き、ボルゲリの歴史をつくったサッシカイアは今後も何も変わらず歴史を重ねていくだろう。

 

 
  photo2
サッシカイアの樽

  photo3
サングイドの糸杉道

  photo5
ボルゲリ城
  photo4
Le Difese
   
 
 

著者プロフィール

中川原 まゆみ(なかがわら まゆみ)
 11月10日生 O型 札幌出身.
1度イタリアを訪れてからは年に2、3回は来るようになり、レストランで食事をして作り方がわからないと「皿洗いをするから」といって厨房に入れさせてもらい、レシピを教わった。1995年9月、東京の中目黒にオステリア「フェルマータ」をオープン。納得したイタリアワインと集めたレシピを中心とした家庭的な店だったが、さらに食に関して知りたい欲求を抑えきれず2001年3月に閉店し、渡伊。2001年9月、AISイタリアソムリエ協会公認プロフェッショナルソムリエになる。現在、エミリアロマーニャ州の「リストランテ・パオロ・テベリーニ」にソムリエとして在籍しながら、感動的なワインに巡り会うためにワイン産地を徘徊する日々。ワイン雑誌『Winart(ワイナート)』にて "イタリア マイナー品種探検" の連載、"イタリアのワインニュース"などの文筆活動の他、イタリアの食全般に関わるコンサルタントも手掛ける。





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