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イタリアワインVino探検記
   
15 marzo 2005

第18回 Aglianico del Vulture
〜知られざる美食の地〜



中川原 まゆみ



南イタリアといえば太陽がサンサンと降り注ぎ、地中海の青い空を想像するかも知れないが、ところが、それだけではない。
バジリカータ州を知っているだろうか。え?どこだっけ?確か、南の真ん中あたり?といった答えが返ってくるだろう。車でナポリから、香り豊かでまろやかなオリーブオイルの産地ベネベントを抜けてバリ方面に走って1時間ぐらいでバジリカータ州に入る。小高い丘が両脇に続き、緑の色合いも濃くなってくる。一般的に思い浮かべる南イタリアのイメージと全く違う。カンデラから右に曲がり、リオネーロ・イン・ヴルテュレを目指す。ゆるやかなのぼり坂が続き、ワイン畑が視界に開けてくる。

ここは火山性土壌と黄色の砂を固めた“テゥフォー”という土壌だ。鉄分、ミネラルが豊富なこの土壌と、標高600mで冬期には雪も降る涼しい気候からは個性的なワインができあがる。ここで栽培しているブドウは98%がアリアニコ種。アリアニコといえばDOCGタウラージが知られているが、ここヴルテュレのアリアニコはタウラージとは違った、硬質で冷ややかな、スレンダーなワインができる。火山活動でできたカルデラは湖となり、地元の水の供給元となっている。

そろそろ、お腹も空いてきたので、地元のトラットリアに行くことにした。現在、いきつけの店は3軒あり、今日はその中でも地元の食堂風のトラットリアに決めた。家族経営で母が厨房、父と息子がサーラでテンポよく働いている。
普段はあまりパンを食べないが、南イタリアのパンの美味しさには負けてしまう。プーリアのアルタムラ、ラテルツァ、カンパーニャのジェンザーノ、そしてバジリカータの“Tarallucci(タラルッチ)”。リング型で乾燥ウイキョウやペペロンチーノが入っているものもある。
ここではアペリティーヴォなど不要ですぐにアリアニコを飲み始める。これしかないのだ!
あ、忘れていた、ここでの楽しみのひとつに水がある。私はイタリア各地を周わって、いつもその土地の水を持ち帰る。私が今考えられる中で一番美味しい水の産地はここだ!適度に軟水で味わいがあり、スルリと喉を通る。知らないメーカーがあると、必ず試したくなる。ここのトラットリアの水も水色がかった半透明なガラス瓶で、デザインが銀色で印刷されており、この田舎臭さが、またいい感じ。初めてのメーカーだったが、これも気に入った。

この地の家庭はどこの軒先にも赤ピーマンを干し柿のようにぶら下げている。これは食卓に音楽と美味を演出してくれる。一般的には“Cruschi(クルスキ)”と呼ばれ、アンティパストからセコンドまで何でも使う。一緒にいためたり、素揚げして、『パリィパリィ』と音をたててパスタにかけたり、肉や魚にかけたりする。

アンティパストは、これを使った家庭料理”Peperone Crusco e Uova Strapazzate(スクランブルエッグの乾燥赤ピーマンいため)”。やさしい味わいの卵と赤ピーマンの甘さがマッチしたホットする皿。
プリモピアットは、見た目を裏切る濃厚なソース”Zito alla Zio Luiji(ジートパスタのルイジじいさん風)”。地元の穴あきパスタに羊のブロードとトマトをからめたソースで、ペコリーノチーズがかかっている深い味わい。2003年アリアニコのフレッシュな果実香と、この地の特徴であるスパイシー系の締まりのあるバランスがこの皿によく合っていた。 セコンドピアットは、この季節最高のバッカラ料理”Baccala Carrettiera(バッカラバジリカータ風)”。バッカラにクルスキをかけ、心地よい苦みのある地元産オリーブオイルをたっぷりかけた強さとインパクトを強調した味の濃い皿。これには2001年アリアニコ・デル・ヴルテュレとアビナメントし、強いグーストのバッカラに対して、アルコール度15度のタンニンの量が多く、余韻の長いワインで調和をとり、歩調を合わせ、流れるように終わる。クルスキの苦みと甘さも、香草や胡椒を感じるこのワインとなかなか良い相性だ。

すっかり満足し、水の持ち帰えりをお願いし、次回は伝統羊料理を食べようと話し店を出た。南イタリア内陸地の快食の旅はまだまだ続きそうだ。

 

 
  photo1
アリアニコ・デル・ヴルテュレ
Aglianico del Vulture

  photo2
タラルッチ Tarallucci

  photo3
アンティパスト

  photo4
プリモピアット

  photo5
セコンドピアット
 
 

 

著者プロフィール

中川原 まゆみ(なかがわら まゆみ)
 11月10日生 O型 札幌出身.
1度イタリアを訪れてからは年に2、3回は来るようになり、レストランで食事をして作り方がわからないと「皿洗いをするから」といって厨房に入れさせてもらい、レシピを教わった。1995年9月、東京の中目黒にオステリア「フェルマータ」をオープン。納得したイタリアワインと集めたレシピを中心とした家庭的な店だったが、さらに食に関して知りたい欲求を抑えきれず2001年3月に閉店し、渡伊。2001年9月、AISイタリアソムリエ協会公認プロフェッショナルソムリエになる。現在、エミリアロマーニャ州の「リストランテ・パオロ・テベリーニ」にソムリエとして在籍しながら、感動的なワインに巡り会うためにワイン産地を徘徊する日々。ワイン雑誌『Winart(ワイナート)』にて "イタリア マイナー品種探検" の連載、"イタリアのワインニュース"などの文筆活動の他、イタリアの食全般に関わるコンサルタントも手掛ける。





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