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イタリアワインVino探検記
 
15 ottobre 2007

第22回 ブドウの収穫とヴィンテージ

中川原 まゆみ

当然のことながら、収穫したブドウによって、その年のヴィンテージが予想できる。一般的に暑い天候が続いた年は、収穫期が早まり、高い糖度のブドウになり、高いアルコール度数のがっちりとした力強いワインになる。一方、低温の日が続いたり、降水量の多い年は、収穫期が遅れ、未熟なブドウが原因でやや青っぽい味わいになったり、色素が薄い、軽いワインになる。

今年はどうなのだろう。暖冬で早々と2月に桜が咲き、全国的にブドウの開花は早く、そして、少ない降水量だった。このことから考えると、収量が少なく、酸度の低い、アルコールが高めのワインと思いがちだが、一概には言えない。なぜなら、地域差による複雑な気候体系だけでなく、土壌構成、ブドウ品種、仕立方法、畑の方位や傾斜角度によっても大きく変わってくるからだ。

では、収穫に参加した3つの地域を紹介しよう。
まず、ウンブリア州のモンテファルコ。この丘陵地域ではやや晩熟のサグランティーノ種が栽培されている。果皮が厚いこの品種は、乾燥や暑さに強いため、今年のような気候で力を発揮する。また、ここの土壌は高い保湿力の粘土質の占める割合が多いため、水不足も他の地域に比べて深刻な問題にはならず、収穫期も例年並の9月下旬に行われた。
果房はやや小さめだが、果粒を含んでみると、甘い果汁が口中いっぱいに広がり、種子は柔らかで、噛んでも刺すような強いエグミもなく、充分に完熟している状態がわかった。安定した濃い色調で、高めのアルコール度数の中期熟成以上できるワインになるだろう。

次はトスカーナ州の北部、カルミニャーノでカベルネ種の収穫だ。800年代にフランスから運ばれたカベルネ種は小粒で果皮が厚いため、1200mg/lにも達するほどポリフェノールが多い。
ここでは優良な果房を選ぶ、選別収穫をした。ポイントは穂柄が茶色に熟して色づいているもの、果粒に色ムラがなく均等なもの、剪定した枝の根元に近い果房と一番遠い果房を選ぶ。もちろん、腐敗病などの病害にあった果房は避ける。選んで収穫したブドウは小さなカゴに入れ、醸造所に運び、除梗(じょこう)を行う。
そして、果粒を選別台にのせて、極端に小さなもの、未熟なものなどを取り除くための最終チェックを7、8人で手早く行なった。
つい作業しながら、ひとつ、ふたつと、口に運ぶ。"今年は小粒だが、とても甘く、後味の苦みも穏やかで静かだ。きっと、しっかりとしたボディの滑らかなワインになるだろうな"と想像を膨らませながら、退屈な作業を楽しんだ。

そして、シチリア州のエトナ山北側。標高800mにある畑は水はけのよい黒い火山性土壌に覆われている。ここは、東からやってくる雨雲が標高3,223mのエトナ山にひっかかるために降水量が多い。比較的冷涼な気候のため、雨量の問題以外はヴィンテージムラの出ない地域とも言えよう。
今年の収穫は例年よりも1週間ほど早く、降水量は少なめでブドウは健全に育った。ここでは低い仕立ての伝統的なアルベレッロの畑が多く、腰を屈めて収穫しなければならない。ブドウにとっては、最もよい仕立て方法なのはわかっているが、実際に自分で収穫すると、腰が痛くて立てなくなり、収穫の重労働さを痛感した。2人1組で慣れない収穫を手伝っていると『Mayumi!! Troppo tardi! Non possiamo prendere prazo(遅すぎるよ!こんなんじゃ、昼食がとれないよ!)』と文句を言われた。

なんとか、半分の収量で許してもらい、近所の人たちも加わり、みんなでにぎやかな昼食だ。次々に増える人数に対応して家中からテーブルを運び出したが、それでも足りずに収穫箱を積み上げて即席テーブルまで作る始末。
プリモピアットは"タンブーロ"と呼ばれる、ゆで卵、ミンチ、グリンピースなどを加えたトマトソースの型抜きリゾット。甘いトマト味が食欲をそそり、それを自家製白ワインで一気に流し込む。
その傍らでは、先ほどまで収穫したブドウをトラックに積んでいた82歳のおじいちゃんが、黙々とソーセージ、子羊などの肉類を焼いている。なんてパワフルなのだろうと、感心してしまう。
最後に今年の無事な収穫と期待できるヴィンテージに乾杯し、1時間の昼寝に入った。

数週間単位で気候が変わった今年は、雨が多かった2002年や猛暑が続いた2003年のように分かりやすいキャラクターのヴィンテージにはならないと思う。
白ワインは全般に平均的な出来になりそうだが、早熟な品種はやや酸味が不足しているものがあるかも知れない。しかし、赤ワインは凝縮感のある長期熟成可能なワインが生まれる予感がする。
同じ地域でも品種や土壌によって明暗を分けると思われる2007年ヴィンテージが、今からとても楽しみだ。


選別収穫


収穫風景


これから除梗


楽しい昼食


タンブーロ

著者プロフィール
中川原 まゆみ(なかがわら まゆみ)
11月10日生 O型 札幌出身
初めて渡伊したのは、82年だった。ワールドカップで沸きあがるイタリア人を横目でみながら、レストラン巡り。すっかり、とり憑かれた私は、渡ること数十回。数百万、いや数千万円は食べて、飲んだだろう。いっそのこと、店を始めようと、1995年9月、東京の中目黒にエノテカオステリア「フェルマータ」をオープン。厳選したイタリアワインと家庭料理の店だったが、さらに深く、知りたい欲求にかられ、2001年3月、店を閉店し、イタリアに移住。2001年9月、AISイタリアソムリエ協会公認プロフェッショナルソムリエになり、ロマーニャ州にある「リストランテ・パオロ・テベリーニ」でソムリエを務める。その後、感動的なワイン探しの旅にでる。現在、ワイン雑誌『Winart(ワイナート)』などで、フリーライターとして活動し、2007年3月『土着品種で知るイタリアワイン』(産調出版)を出版。また、文筆活動の他、ワインコンサルタントにも携わる。
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