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イタリア料理研修日記

17 Febbraio 2003


第3回 太陽の味、空気の色
シチリア島ラグーサ(1)






柳 令子


ラグサーノチーズを作る
フロリーディア氏



プーリアでの4ヶ月を終え、“南”に目覚めてしまった私は、次なる研修先にシチリアを選んだ。ラグーサ Ragusa は、ほとんどイタリアの1番南。プーリアからの飛行機はあるけれど、シチリア内の時間調整が難しく、2日にわけての電車での移動となった。延べにして19時間!! これまたスゴイ所なのかも・・・。田舎の暮らしには慣れた、と思って着いたラグーサ。しかし、これまたびっくり。ラグーサイブラ Ragusa Ibla と呼ばれる旧市街は、山肌にそって建てられていて、山なの?丘なの?町なの??町中でひときわ目立つ建物、この町の中心サンジョルジョ教会 San Giorgio (ドゥオモ)。その裏手に今私の働いている“リストランテ・ドゥオモ Ristorante Duomo”がある。町全体がユネスコの世界遺産に指定されていて、バロック式の家や教会が立ち並ぶ中に、言われなければ通りすぎてしまうような入り口があった。中に入ってみると・・・何てエレガンテ!メニューは興味深く、新鮮な魚の入ったショーケースに、たくさんのオリーブオイル。好ましいものばかり。そしてラグーサでの生活が始まった。

“リストランテ・ドゥオモ”は、シェフのチッチョ Ciccio とホールのアンジェロ Angelo の2人で経営する2年目のお店。少しずつよくしていこうというのがとてもよく分かる、かなり前向きな店だ。どちらかというと肉よりも魚に力を入れている。言うなれば“クチーナ・ロカーレ Cucina locale” (地域の料理)の店。近くでとれたものしか扱わない。海が荒れていれば頼んだ魚は届かないし、マグロは暖かくならないといない。もちろん野菜も旬のものだけ。

ラグーサといってすぐに思い浮かべるのは、チーズの“ラグサーノ Ragusano”。牛乳から作られ、珍しく四角い。1本15キロ近くある。DOP(原産地保護呼称)にも認められているこのラグサーノチーズ、うちの店では中に玉ねぎ、ナスなどを詰めたトルティーノを出している。ちょっと焦げちゃった〜なんて何回も味見しているけれど、いつ食べてもおいしい。これはこの店の名物といっていい一皿。春先の牛乳を使って熟成させたものしかDOPとはいわず、その他のものは同じ形、作り方をしてもカチョカバッロと区別されている。チッチョはこのDOPにこだわり、わざわざ製造元に買いに行く。通称カステッロ(城)と呼ばれるその場所は、「物置だったのかしら?」と思わせるような小さな造り。その天井から太い縄にくくられたチーズがぶら下がっている光景は、今まで見た事のあるカゼイフィーチョ Caseificio(チーズ工場)のイメージを全て消し去ってしまうほど。よく見るとリコッタやトーマも作ってあり、天秤の計りもある。近代化されていない昔のままの姿なのね、と妙に納得。同じラグサーノDOPでも、作る人(牛?)によって味は変わるけれど、フロリディア Floridia さんのは格別!飼っている牛もきれいな毛並み。チッチョはラグーサで開かれたフェスタでこの人と知りあって以来、ずっとここのを使い続けている。「DOPをレストランで出しているのはうちだけだ!」と豪語するほど自信と誇りを持っている。この誇りはフロリディアさんに対する思いと、いい物を食べてもらいたいという自分自身に対するものだなと、ラグサーノをつまむたびに思うのだった。

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ラグサーノチーズの源 モディカ牛
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アンジェロ、私、チッチョ、日本人研修生元くん

ラグーサに来て2度目の休日(パスクア〜復活祭の週)、学生時代からのコックの友人が遊びに来た。「みんなでバーベキューをしよう」と、農家をしているアンジェロの実家へ。実は店で使っている香草や野菜はここでとれたもの。早速準備が始まる。男の人達は焼き係。豚、羊、サルシッチャ(生ソーセージ)。シチリアのサルシッチャにはフェンネルの種とペペロンチーノが入っていて、1メートルくらい長く、それをとぐろにまいて焼く。女性達はカルチョーフィ(アーティチョーク)を用意。味付けはオイルと塩のみ。もう1種はパセリとにんにくも葉の間に押し込むようにして入れる。「生でも食べられるよ」というので、皆が用意してる横でバリバリ食べる私と友人・・・。準備のできたカルチョーフィは焚き木の灰の中に埋めて焼く。シチリアお約束の“オレンジのサラダ”に硬質小麦のパン、ワインも揃い、いざ食べ始めると、20人近くいるのに意外と静か。みんな真剣に食べている姿がとてもおかしく、日本人の“カニを食べている時”を思いだしてしまった。友人はオレンジのサラダがとても気に入り、これはメニューに入れよう!と何回もおかわりをしていた。皮をむきざく切りのオレンジにペペロンチーノ、玉ねぎ、フェンネル、そしておいしいオリーブオイル。私も好きでよくまかないで作るが、すごくシチリアを思わせる味の一つだと思う。

カルチョーフィが焼けた!まずオイルと塩だけのものを味見。シンプルなだけにそのものの味がよく分かる。1枚1枚皮をはずし、ほんの少ししか付いてない下の部分をかじり、またはがしてかじり・・・両手を真っ黒にしてもまだ食べる。隣の友人も無言で格闘していた。5つも食べ「もう食えん!」と叫んでいた時、本日のメインディッシュ、フォカッチャ Focaccia の登場!アンジェロのママの手作りだ。パスクアでは、パセリとにんにくだけのもの、春の風物詩グリンピースと空豆のもの、羊の肉のもの、その内臓のものを食べる。その他にトマトとリコッタ、トマトと玉ねぎのもあり、お腹は一杯でも目が欲しがる。そして全種類制覇!(余談だが、シチリアではよくフォカッチャを食べる。しかも種類が豊富。中身ごとに形も変える。それは大地が豊かな象徴だという。他にもカリフラワーとドライトマト、リコッタとサルシッチャ、バッカラとオリーブ、ラグサーノチーズとトマトなど、いろいろある)。お腹も心も一杯になり、ふと回りを見てみると人それぞれ。ひなたぼっこする人、音楽を聞く人、寝てる人、しゃべってる人・・・でもみんなすごくいい顔をしていた。仕事は生きる上で必要だけれど、本来の人間というのはこういう風にしてリラックスして生きるものだよね・・・と。便利さを追求していると、素の生き方忘れちゃうね・・・と、とても大事な事に気付いた1日だった。  




プロフィール

柳令子 専門学校を卒業後、フランス料理の道へ。たまたま会社から派遣された2ヶ月のイタリア研修でイタリアにはまり、イタリア料理に転向。ict 10期研修に参加。現在、シチリア州ラグーサのリストランテ“DUOMO(ドゥオーモ)”に勤務中



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日伊の様々な食文化交流を企画する ict(イーチーティー)とICTイタリア事務所が行なっているプロ向けイタリア料理研修。 毎年長期(1年間)にわたり、本格的な研修を企画しています。 始めにピエモンテ州の料理学校で学んだ後、各州を回りながらイタリア食文化の地方性を深め、最後は有名レストランでの本格的な修行です。 詳しくは、JITRAトップページ右端、CLUB APICIO のロゴから ict のサイトへリンクしてみてください。



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