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イタリア料理研修日記

16 Giugno 2003


第5回 〜イタリア、シチリアを愛する理由(わけ)〜





柳 令子


カターニャ市場(ハーブ売り



ICTの1年の研修が終わる頃、チッチョがいってくれた。”レイコがもう少しイタリアにいたいなら、滞在許可証を申請しよう。自分も店もまだまだ成長したいんだ。一緒にやろうよ、僕に時間をくれないか。”と。
日本にいざ帰ってどうしよう、何ができるのか、何を見てきたのか・・・考え始めると心配で、不安に思っていただけに、願ってもない申し出。すぐ”SI(はい)”といいたい衝動を押さえ、”旦那に聞いてみないと・ ・”と答える。私は1年いってくる!といって、旦那様を日本においてきてるのでした。・・・で、彼に聞いてみると、”すごい事だから、申請してもらえば?”と言ってくれた。あと1年イタリアに残るという事に、お互い不安がないわけではないけれど、最終的にいっておいで、と言ってくれた彼に本当に感謝。そして今、シチリア滞在は1年を超える。

イタリアにもう1年残る、と決めた時点で、何人かの人には、”よく残る気になったね。”と言われた。もちろん旦那がいるのに、ということの他に、”BASTA、ITALIA(イタリアはもう十分だ)!!”と言う意味も含まれていると思う。(分らないでもないけれど、いろんな意味で。)私が知るイタリアは2ヶ月のシエナ、4ヶ月のプーリア、そして1年のシチリア。ほとんどが南、しかもシチリアなんてイタリア本土とはまたちょっと赴きの違う所に長くいるので、こっちが当たり前になっているところがある。見た目の事でいうならば、先日エミリア・ロマーニャにいった友人が、写真を見せてくれた。まず木が違う。空が違う。よって写真の色が違う。これが同じシチリア内なら、知らない場所でもやっぱり空気が同じなので、同じ島なんだな、と思うはず。去年の8月ブレーシャから ヴェローナまで、バスに2時間乗りながら外を見ていたときも、同じことを思った。この時期のシチリアは水不足のため、緑は少なく畑も寂しい。
一方、ここにはとうもろこし畑、山や道路脇にも雑草の緑があるのね・・と。人の面でいうと、良くも悪くも一般的にイタリア人にいえる、とても人間らしい、と言う所だが、これも南下すればするほど強いのではないか と思う。大都市東京の人は冷たく、田舎の人は温かい、という言われ方をする事があるが、このような事をイタリアでも感じた事がある。みんながみんなではないし、たまたまという事もありえるが。道を訪ねても、外国 人が話し掛けてる・・・くらいに、”知らない”と止まりもせずに行く人もいれば、”あたしゃ知らんけどあんた知っとる?””知っとる、知っと る!!、あーしてこ―して・・””違うよ、この方が・・”とあっという 間に5・6人集まり、みんな違う事を言ったりもする。(こういう場合、 みんな悪気はないので笑うしかないのだ。)また、買い物に行っても、働 きたくないんだな、この人・・・というように”あっち、あっち!!”と 自分のところをすぐ閉めるレジの人もいれば、女の子にはやたらやさしい 人もいる。

photo2
パスタを食べる猫
photo3
イースターのBBQ

何回思いだしても笑えるのが、うちの洗い場のおじさん、フィリート。5 0過ぎでがんばって皿は洗っているのだが、要領もよくないし、決してき れいじゃない。でもいい人だし、文句いいながらもよくやってくれるので 、憎めないのだ。ある日チッチョが、”フィリート、コーヒー入れて!”というと、いつもなら”なんで俺がやんなきゃいけないんだよ、まだ皿があるのに・・ブツブツ”といってやるのだが、この日に限って、疲れてたのか、機嫌が悪かったのか、”俺は今飲みたくないんだよ!!”と逆ギレ。(そしてもちろんコーヒーは入れない。)周りの人は何事もなかったかのように過ごしてたが、私は大爆笑!
え?!普通シェフが言ったらいるとかいらないじゃなくて入れるよね・ ・と思いつつ、本能のままに生きるってこういう事なのね・・と感心してみたり。

写真にあるハーブ売りのおじさんは、俺の畑のだからこれが1番!〜というような事を叫び、売り歩いていた。確かに他で売ってるのよりも、いかにも採ってきました、といわんばかりの無造作さと香りの強さは、納得 させられたけれど。
BBQの写真は去年同様、パスクア(イースター=復活祭)のもの。同じ場所で、ほとんど同じメンバーで、同じ物を食べた。同じように時間が過ぎ、私は2回目だけど、この人達は何年も、何年もこうしてきたんだな、と思った。うれしかったのは、アンジェロのおばあちゃんが私を見てボソボソといった事。もうよぼよぼで歩くのも立つのも全てゆっくり。だから聞き取れず、ん?と聞き返すと、アンジェロが通訳してくれた。”あなた去年もここにいたわよね。”そして猫たち。シラクーザの遺跡の近くの家で飼われているらしきこの子達は、パスタを食べていた!
日本でいう猫まんまは、米の国だけあり米だが、やはりイタリアだけにパスタなんだ・・と思わずパチり。そういえばうちのカメリエーレ(ウェイター)も飼っている犬達に”食えー”といってマカロニをあげていたな。

あげれば切りがないほど些細な事でも、イタリアに住んでいろー―んなことがあった。楽しい事もうれしい事もつらい事もいやな事も。日本では体験できないような事もあれば、万国共通というような、どこでも同じ楽 しみ、同じ悩みもある。結局人間の住む所、とくくってしまえば、どこに いっても生きていける、と思える強さも得たような気がする。そして、外国にいると普段感じない、自分は外国人、日本人。という事をつくづく思わされ、それと同時に日本を誇りに、日本人である事を誇りに思うのだ。イタリア人は自分達の事をよく知っている。どういう歴史をたどり、このサッカー選手は何州出身で、市長は誰で、この建物は何世紀のものか・・とか。(そして意外と自分の土地以外の事は知らなかったりするのだが)

あと半年したら、日本に帰る、本当に。今ある程度普通にしゃべっているイタリア語も、使わなくなれば、聞かなくなれば、どんどん忘れてしまうだろう。今から半年後の日本、特に東京は服装、言葉使いなり、みんなの好むものなり、変わっているに違いない。それが良いとか悪いではなく、それが自分の国。でもここイタリアはきっと、みんなの食べてるもの、町並みも太陽も空気も変わらない。そして私が、変わらないイタリアにいた事をちゃんと覚えていれば、何年か経ってここに来ても、変わらず迎えてくれるだろう。その時のために、もっともっと日本の事、自分の事をよく知り、過ごしていきたいと思う。  




プロフィール

柳令子 専門学校を卒業後、フランス料理の道へ。たまたま会社から派遣された2ヶ月のイタリア研修でイタリアにはまり、イタリア料理に転向。ict 10期研修に参加。現在、シチリア州ラグーサのリストランテ“DUOMO(ドゥオーモ)”に勤務中



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日伊の様々な食文化交流を企画する ict(イーチーティー)とICTイタリア事務所が行なっているプロ向けイタリア料理研修。 毎年長期(1年間)にわたり、本格的な研修を企画しています。 始めにピエモンテ州の料理学校で学んだ後、各州を回りながらイタリア食文化の地方性を深め、最後は有名レストランでの本格的な修行です。 詳しくは、JITRAトップページ右端、CLUB APICIO のロゴから ict のサイトへリンクしてみてください。




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