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イタリア料理研修日記 「イタリアのドルチェビータ」

15 Marzo 2004


第4回 ほっぺたが落ちるシチリアのチーズ





奈良井 清美



 シチリアの歴史を感じるPIACENTINO

イタリアの食生活においてチーズはとても日常的なものだ。
そこらじゅうにあるチーズ専門店はそこらへんのおばちゃんからおばあちゃんまでが利用している。
(日本でチーズ専門店といえば高級なイメージだが)発酵していることを思えば、おつけもののような感覚もあるのかな。イタリアにはその地域環境歴史によってまるでワインのようにさまざまなチーズがある。

私の暮らしているラグーサは、コリーナ(丘)で牛や羊が放牧されていてそれは日常の景色だ。
彼らは草と食べたり昼寝をしたりのびのびとしている。
ここに着たばかりの時は窓からみえるその景色に驚いたが、今では「あ、いるなと」いう感じ。
マリーナラグーサという海までいく道はその放牧の中をバスが通っていく。
逆に通らせてもらっているというような。
この景色はとてもシチリアっぽいと思う。

シチリアの夏は厳しく暑く乾燥するため緑がなくなってしまう。
コリーナが緑の絨毯なのは冬から春にかけてである。
緑のないとき彼らは干草を食べることになる。
当然、緑の草を食べたときと干草を食べたときのミルクの成分は違うわけで味も変わってくる。
ラグーサのチーズ牛乳からつくる「ラグサーノ」DOPは緑の草を食べたものだけに与えられる認証である。
それ以外のときのものは「カチョカバッロ」として売られる。
チーズにも旬があるのだ。こう自然に近く暮らしていると「そうだよね、その通り」と素直に納得できる。

この「ラグサーノ」そのまま食べても美味しいのだが鉄板で焼いても美味しいのだ。
表はカリッと中はトロッと少しおこげができればさらに美味し。
「ドーモ」ではセコンドで牛肉を焼いたものにこの焼いた「ラグサーノ」を乗せてガツンとだしていた。
そこらへんのトラットリアでもメニューにのっていなくとも、頼めば作ってくれる。
それだけ地元に密着してるのだ。

次に「リコッタチーズ」。「ドーモ」ではいつも決まったお店から朝できたてを買ってくる。
できたてはアツアツでまるで日本でいう「おぼろ豆腐」のよう。幸せが口に広がる。
「ドーモ」ではパセリや葱を加えて少しクリーム状にしたものを付き出しに使ったり、マジョラムを加えてラビオリのソースにしたり、砂糖を加えて「カンノーリ」(シチリアの伝統焼き菓子)の中に詰めたりと万能だ。

余談だが、ラグーサイブラはすごく小さな街のわりに3件も美味しいジェラート屋がある。
そこのリコッタのジェラートというのがお店のよって違うのだが、私のお気に入りは濃厚な味のもの。
日本の友人が訪ねてくると決まって食べてもらう定番だ。
だってこんなに美味しいリコッタのジェラートは日本では食べられないと思われる。
いや、イタリアの他の都市でもリコッタを食べたがあの美味しさに比べるとなんだか普通で感動するものではなかった。あー私ってなんてシチリアびいきなのかしら?!このフレッシュなものとはまた別に「リコッタサラータ」という塩気の多いチーズもありこれはまさにワインのつまみにぴったりだ。

そして「ピアチェンティーノ」。黄色くて黒胡椒の粒がそのまま入っているペコリーノ(羊)のチーズだ。
なぜ、黄色かというとサフランで色をつけているからだ。
ちなみにアランチーノ(ライスコロッケのような)もサフランで着色している。
これは過去にスペインをはじめいろんな国に侵略された歴史の名残かなと思うととてもシチリアらしいものだ。


チッチョのスペシャリテ 「トルティーノラグサーノ」

さて、郷土を愛するシェフ、チッチョがシチリアのチーズを食べてもらいたいと考案したメニュー、それが「トルティーノラグサーノ」だ。プリン形にオリーブオイルパン粉をぬり、薄くスライスしたペコリーノチーズをまわりにしきつめてその中にラグサーノとグリルしたシチリアの美味しい野菜、玉葱、ズッキーニ、なすをつめたのちオーブンで焼く。バルサミコと玉葱を煮詰めたソースとアゼローラ(姫りんごに近い)の自家製ジャムを添えた一品だ。
これが型から抜いてお皿に出すとだんだん崩れてしまうので出すときはあらかじめサーヴィスの人を呼んで瞬間に運んでもらわなければいけない。ちょっとスリル満点である。もちろんアツアツが美味しい!
これは、アンティパストとして出しているのだが少し重めの赤ワインも合う一品だ。

イタリアというとパルミジャーノ、ゴルゴンゾーラ、モッツアレラが有名だが、シチリアにいるとそれらはまるで外国のもののように思える。いや、シチリアはシチリアであってイタリアじゃないのかもしれないけど。
そういえば、ナポリやカプリあたりで食べたモッツアレラはびっくりする程美味しかった。
日本でももちろん土地のものはその土地で食べたものが1番美味しい。
私が東京で暮らしてきたからそう思うのかもしれないが、イタリアの方がその色が濃いのではないかと思う。
例えば、お店にはチーズにしてもワインにしてもその土地のものが前面にでている。
それ以外の土地のものはまるで輸入品のようにおいてある。
もちろん値段も高価である。
当然、庶民に近いものは安価な地物になるわけだ。
というより、よっぽとグルメな人でない限り
彼らは他の土地のものにあまり興味がないのではとも思える。
保守的といえばそうともいうが、「おらが村が1番」的な彼らってうらやましくも思える。

日本も好きでイタリアも好き。知りたいことは山程できりがない私は欲張りなのか。
でもだからイタリアにきて今の自分があるのだな、
しょうがない、好奇心がとまらないのだから。。。
(つづく)


プロフィール

奈良井 清美  
乙女座 B型
イタリア大好き、食に関するあらゆることに興味あり。
OLを経て食いしん坊が高じてとうとう渡伊を決意。
クチーナにしかけられているあらゆる地雷をふみつつ 汗と涙の第12期FICTイタリア料理長期研修へ参加。


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日伊の様々な食文化交流を企画する ict(イーチーティー)とICTイタリア事務所が行なっているプロ向けイタリア料理研修。 毎年長期(1年間)にわたり、本格的な研修を企画しています。 始めにピエモンテ州の料理学校で学んだ後、各州を回りながらイタリア食文化の地方性を深め、最後は有名レストランでの本格的な修行です。 詳しくは、JITRAトップページ右端、CLUB APICIO のロゴから ict のサイトへリンクしてみてください。




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