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1 February 2001


第五回  北イタリアの憂鬱

〜ポー平野 la pianura padana (3)〜


林 直美



photo
映画 『郵便配達は二度ベルを鳴らす』



ポー平野には、霧も立ち止まれば暑さもじっと立ち止まる。その気だるさ、いらだち、憂鬱が初めて映像にあらわれたのは、 1943年、ルキノ・ヴィスコンティLuchinoViscontiの『郵便配達は二度ベルを鳴らすOssessione』においてだった…… とは私の勝手な解釈ではあるが、この映画がそれまでのイタリア映画とひと味ちがうということは、私の勝手な解釈ではない。

原作はむろんジェイムズ・ケインJames Cain の小説The postman alwaysrings the belltwiceである。 映画になって日本で一般に知られているのはジャック・ニコルソン主演のものだろうが、 1943年にはルキノ・ヴィスコンティが初の監督作品として、『Ossessione(オッセッシオーネ)』というタイトルで映画化している(邦題はケインの小説と同名)。 Ossessione(オッセッシオーネ)とは英語ならオブセッションobsession、つまり「妄想、強迫観念」である。 この映画には夏のポー平野のうだるような暑さがたちこめる。ジョヴァンナ(クララ・カラマイClaraCalamai) とその通りすがりに出会った愛人ジーノ(マッシモ・ジロッティMassimoGirotti)は共に、 ジョヴァンナの夫殺害の陰謀を企てるが……逃げ場のない破局が待っているばかりだった。

イタリアのネオレアリズモ映画はこの映画から始まる、というのは、映画史では常識であったりするのだが、 この「ネオレアリズモneorealismo」(neo=新realismo=現実主義)という言葉、聞いたことはあるけれど、実は何なの? と思っている人も少なくなかろう。こんな言葉を誰が最初に使ったのかなんてことは、 話が長くなるだけで大した意味もないのではしょるが、要するに当時、「なんか違う」 「どっか新しい」と思わせたことが肝心なのであって、べつに、「貧しさの中でたくましく生きる人々」とか 「腐敗したブルジョワジー」が出てこなければいけないわけではない。

ヴィスコンティはフランスの監督ジャン・ルノワールJeanRenoirのアシスタントだったが、フランス風レアリズムの香り、 どこまでも冷徹で簡素でペシミスティックなトーン、ジョヴァンナとジーノの暗い企みや情念の手ごたえ、 画面の奥行きや幅、自動車の複雑な動きの表現などの卓抜さが、それまでの(特にファシズム期の)イタリア映画に明らかに一線を引いた、 新しさを感じさせた映画だったのである。そしてやっぱり、こういう不健全な作品は民衆の精神を堕落させる、と思われたのかして、 ファシズム体制側からはボイコットされている。さすがヴィスコンティである。

日本で紹介されてきたイタリアの映画といえば、ほとんどこの作品の後のものであることを思い出せば、 我々にとってはここで言うところの「新しさ」なんかわからなくて当然である。しかしイタリア映画独特の「暗さ」は、 多くの人がなんとなく感じていることだろう。日本で比較的知られているイタリア映画、それはつまりネオレアリズモ以降の映画だといっていい。 ということは、我々にとってのいわゆるイタリア映画は、ポー平野から始まるのだ……と、こんな無謀なことはこれまで誰も言ったためしはないが、 私がちょっとポー平野にこだわった由縁である。旅の背景として心に留めておくと、気楽な旅にもちょっと奥行きが出るかもしれない―― 猛暑のポー平野の町はずれでふと立ち寄ったバールの奥から、クララ・カラマイみたいな美人が暗い目でこっちを見つめて、 余計に汗がふき出て、ポー平野の夏を満喫……なんてことは、ないかな。


<お知らせ>

第二回でお話ししたように、来月は、ベルガモ映画祭です(3月17〜25日。 詳しくは、www.alasca.it/bfm。)映画ファンのみなさん、ミラノに着いたら、電車で1時間ほどですから、ベルガモにも足をのばしてみては?



著者プロフィール

林 直美(はやし なおみ)
大阪市出身。東京大学南欧文学科博士課程修了。フレーベル館から児童書の翻訳(伊・英・仏語)多数。ピエモンテ州ゲンメGhemme在住。


 





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