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5 April 2001


第7回  〜 ヴェネツィア Venezia (2)〜

林 直美



photo
ヴェネツィアのゴンドラ



水の都ヴェネツィアにいったん入れば、自動車はもちろん、自転車にも乗れない。お金持ちも病人も貴婦人も、歩きたくなければ舟に乗るしかない。 自動車でも電車でもなく、王道で、つまり舟に揺られてヴェネツィアへ向かったのは、ルキノ・ヴィスコンティLuchino Viscontiの「ベニスに死すMorte a Venezia」(1971)の主人公である。いかにも気難しそうで、世渡りの下手そうな作曲家アッシェンバッハ(ダーク・ボガードDirk Bogarde)は、ヴェネツィアからはさらにゴンドラでリド島Lidoに向かう。

彼がたまたま乗ったゴンドラの漕ぎ手は、まるであの世への渡し守であるかのように、ブツブツと聞き取りにくいひとりごとを唱え、アッシェンバッハの言うことにまともに答えない。正規のゴンドラ漕ぎではなかったようで、リドに着いて警察がいたとたん、金も受け取らずにさっさと姿をくらましてしまう。アッシェンバッハにとって確かなものは何もない。すべてが揺れていて、つかみ所がなく、曖昧にすりぬけて行く。じつは蔓延していた疫病も、当局によって隠蔽されていたことが徐々にわかってくるのだが......一度は脱出をこころみるが、甘美な蟻地獄にでも滑り落ちたかのように、老作曲家は醜悪と美の倒錯のうちに死を甘受する。

リド島といえば、今も高級避暑地である。主人公が泊まったホテル・デ・バンHotel Des Bains の前の砂浜は、夏はお金持ちであふれかえる。しかし、息子を呼ぶとき以外は決して大きな声を出さない優雅なポーランドの貴婦人に扮するシルヴァーナ・マンガノや、アッシェンバッハが甘美な死に身をゆだねるほどに心を迷わせたビョルン・アンドレセンのような美少年がいると思っていそいそ出かけていくと、足をすくわれる。まず目につくのは、日焼けはお金持ちのステータスとばかりに、まっ黒な胸に金のネックレスをした、水着姿の肥満気味の高齢のご婦人やその夫などである。アッシェンバッハは、別の意味で死にたくなったかもしれない。

冗談はさておき、この映画のこよなくエレガントで退廃的な、ホテルのロビーのシーン。食事前のひととき、富裕な階級の普段着として美しく着飾った人々が、弛んだ音楽と紫陽花の間を、ゆっくりと立ったり座ったり、絵のように群れ、静かにざわめいているのを、キャメラがゆっくりと眺めてゆくあの場所をどうしても見たくて行ってみたそのロビーは、がらんとして人影もなく、紫陽花もなく、弛緩した音楽もなく、もじどおり夢のあとのようであった。

ともあれヴェネツィア、ここは別世界なのだ。ニコラス・ローグの「赤い影Don't look now」にしろ、はたまたルビッチの「極楽特急Trouble in Paradise」の冒頭にしろ、むろんヴィスコンティの「白夜Le notti bianche」や「夏の嵐Senso」にしろ、ヴェネツィアは明らかに他のいかなる場所とも"ちがう"。あの世でないとすると、あの世とこの世のはざまのような場所なのだ。いくつもの橋を渡って、舟にゆられて島から島へと、どこまでもあの世へ近づいて行くような。



著者プロフィール

林 直美(はやし なおみ)
大阪市出身。東京大学南欧文学科博士課程修了。フレーベル館から児童書の翻訳(伊・英・仏語)多数。ピエモンテ州ゲンメGhemme在住。


 





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