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イタリア建築行脚へのINVITO
 
15 aprile 2004

第1回 「古都ローマの新たな挑戦 音楽公園/レンゾ・ピアノ」

柳沢伸也&柳沢陽子





歴史や文化が積層するイタリアでは,まちを形作る建物や広場が,そのまま歴史を物語っている。各時代の背景に,人々の情熱,愛郷心,自己顕示欲等さまざまな思いが入り交じり,建築家達の知恵と工夫が形を生み出してきた。刻まれた歴史に思いを馳せながら,空間に身を任せてみると,より奥深い楽しみが味わえるかもしれない。各地の珠玉の建築を,一緒に訪ねていきましょう。

ローマの新しい文化拠点
パリのポンピドーセンター,関西国際空港,銀座エルメス・ビルなど,数々の話題作を手掛け,世 界的に活躍するイタリア人建築家,レンゾ・ピアノ。彼が設計したオーディトリアムが,2002年12月ローマに誕生した。3つのコンサートホールを含む敷地は,公園になっており,「音楽公園 Auditorium Parco della Musica」と名付けられた。新しい文化拠点を訪ね,ローマの北部郊外へ向かった。
テルミニ駅から,バスに乗る。密集していた住宅群は,次第にまばらになり,郊外の風景が広がってくる。「音楽公園」は,1960年に行われたローマ・オリンピックの会場となった地域に建てられている。どの国でも,オリンピック後の施設利用は問題となっているが,ローマも例外ではない。寂れてしまったオリンピック公園地域を活性化させるのが,「音楽公園」建設の目的の一つでもある。
鉛でおおわれた有機的な造形
突然,巨大な構造物が目に飛び込んできて,慌ててバスを降りた。3つの構造物は,まるでうずくまる3匹の大きなコガネ虫のようだ。この"コガネ虫"が,それぞれ大中小のコンサートホールとなっている。歴史的建造物がひしめくローマにあって,ずいぶん大胆な造形だ。新しい建築物に対して保守的なイタリアの,新たな挑戦のようにも受け取れる。
有機的な造形は,鉛の屋根でおおわれている。古代ローマ時代より,この地で頻繁に用いられてきた材料であり,現代文明の利器,携帯電話の電波を遮断する効果もあるというのが,鉛を選んだ理由だと言う。


音響にこだわったホール
2,756席,1,273席,700席の3つのホールは,それぞれ異なった特徴を持つ。オーケストラのコンサートを行う大ホールは,内装にチェリー材を用い,天井の有機的な曲線が印象的だ。世界最高の音響と言われるベルリン・フィルハーモニーのプランを手本とした。主に室内音楽やバレエを行う中ホールには,可変性が持たせてある。小ホールはコンサート,講演会や映画など多用途の利用が可能だ。可動式の椅子の下には,オーケストラ・ピットが隠されていた。
古代ローマとつながる現代建築
敷地の一画に,古代ローマ遺跡を見つけた。ローマ帝国の歴史が繰り広げられた場所であることを実感する。建設中に遺跡が発見されたため,プランを変更し,そのまま保存することにしたという。1階のギャラリーでは,発掘された陶器等が展示されており,コンサート前のひとときを楽しめる。
多くの人々が,建物の見学のために訪れていた。新しい文化施設への国民的関心がうかがえる。一方,帰りのバスの中で出会った老人は,批判的な意見を述べていた。「あの新しい建物は,ローマにはふさわしくない。ここは歴史あるローマだ。」市民に衝撃を与えた「音楽公園」の歴史は,今,始まったばかりだ。


写真キャプション
1写真上: 鉛でおおわれたコンサートホール外観
2左: チェリー材の大ホール天井
3右: 1階ギャラリーから見たホワイエ
(撮影 柳沢陽子)

 
データ
Dati

  アクセス

ローマ・テルミニ駅から,オーディトリアム行のバス「M」ラインで約20分。

  
■データ

Auditorium Parco della Musica

住所:Viale Pietro de Coubertin,Roma 施設見学のガイドツアーあり。英語と伊語による説明。ガイドツアーの切符は,オーディトリアム の 中央切符売り場で購入。
電話:06-802411
FAX:(国番号39)06-80241-211
Email:info@musicaperroma.it
HP:http://www.musicaperroma.it

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【著者プロフィール】

柳沢伸也(やなぎさわしんや)&柳沢陽子(やなぎさわ ようこ)

 

ミラノを拠点に、建築設計、建築・都市研究を行う。共に一級建築士。二人三脚で、各地を飛び回っている。自身のHP「イタリア建築通信」(http://www010.upp.so-net.ne.jp/architurismo/)で、建築行脚をレポート中。

 柳沢伸也:大手設計事務所勤務後、妻と共に独立を決意。趣味の剣道を通じ、イタリアでも文化交流を行っている。

柳沢陽子:地方自治体勤務後、夫と共に独立を決意。建築行脚が、いつのまにか食べ歩きの旅になっていることも。


    

 



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