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イタリア建築行脚へのINVITO
 
15 gennaio 2005

第4回 「イタリアの硬貨に描かれた城/カステル・デル・モンテ」





柳沢伸也&柳沢陽子


●1セント硬貨に描かれた世界遺産
イタリアの5セント,2セント,1セント硬貨には,それぞれ北部,中部,南部を代表する建築物が描かれている。ローマのコロッセオ,トリノのアントネッリアーナの塔,そしてプーリア州にあるカステル・デル・モンテだ。
アンドリアという小さなまちから,ひたすらオリーブ畑が続く道を18kmほど南下すると,小高い丘の頂上に聳えるカステル・デル・モンテが見えてくる。1996年に登録された,イタリアの世界遺産のひとつである。巨大で幾何学的な形態は,素朴な田園風景の中に際だっており,まるで不時着したUFOを思わせる。

●要塞の機能を持たない城
「山上の城」を意味するカステル・デル・モンテは,13世紀に神聖ローマ皇帝フェデリコU世(フリードリッヒU世)によって建設された。
プーリア州だけでも200以上の城を建設したフェデリコU世だが,彼が最後に建設したこのカステル・デル・モンテは,他の城とは様々な面で相違点が見出せる。
当時の城は砦を兼ねるため,軍事機能を備えるのが常であったが,この城には,堀,銃眼,厩,兵舎等の機能はおろか,厨房すら見あたらない。同じ大きさの扇形の部屋が,1階と2階に8つずつぐるりと並んでいるだけだ。幾何学的に整然と並んだ部屋を,順繰りにたどっていくうち,自分が今どこにいるのか見失い,目眩のような感覚を覚えた。

(撮影 柳沢陽子)


●こだわりの数字"8"
"8"の数字に徹底的にこだわってデザインされている点も興味深い。8角形の中庭を内包する8角形の平面から構成され,それを8角形の8本の塔がぐるりと囲む。柱頭飾りには8枚の葉,扉飾りには8つの花・・・といった具合だ。
"8"は,キリスト教の世界において,新たなる創造(誕生)を意味する特別な数字である。またフェデリコU世は,イスラム文化に興味を持ち,キリスト教の国王でありながらエルサレム王に戴冠された事実もあることから,イスラム教寺院の形態を引用したのではないかとも言われている。

●天文学や数学との関連
城の形態は,天文学や数学の理論から割り出されていることも確認されている。春分と秋分の正午には,建物の影が8角形の中庭の一辺にピタリと重なり,ユリウス暦で8番目の月にあたる10月の8日には,一直線の光が南西の部屋の高窓と中庭側の低窓を結ぶのである。黄金比があてはまる正面玄関のプロポーションもまた,数学的理論の所産だ。

●憶測が飛びかう用途
自然に囲まれているこの城は,狩猟用の拠点として建設されたという説が有力だ。しかし,それだけでは説明がつかない部分が多い。なぜ厨房がないのか,なぜ幾何学や天文学にここまでこだわっているのか。そのため,城の目的については,様々な憶測が飛び交う。錬金術の研究所であったとか,テンプル騎士団と協働し,キリストの聖遺物を隠していたのだとか。ピラミッドの数学的な翻訳であるという仮説も,近年出されたと聞く。
1260年,フェデリコU世の王朝の滅亡後,城は主に牢獄として使用された。その後使用者がいなくなると山賊の住みかとなり,第2次世界大戦中には,軍事基地にも転用された。荒廃を極めていた城は,戦後プーリア州の所有となり,ようやく見学できる姿にまで修復された。
カステル・デル・モンテは,ルネッサンスの200年ほど前に,すでに科学的な探求が行われていたことを示す貴重な資料である。古典建築を思わせる純粋な幾何学的な形態は,ロマネスク時代にあって異彩を放っている。
人間の科学的探求心と創造性が結びついたこの城は,様々な謎を残したまま,我々の興味を駆り立ててやまない。


 
データ
Dati

■ アクセス
鉄道:バーリからバーリ・ノルド線でアンドリア駅まで約1時間
アンドリア駅から,夏のみ1日数本のバスが出ている。レンタカーあるいはタクシーがお薦め。

■ データ
所在地: プーリア州バーリ県アンドリア郊外
公開時間: 4〜9月 9:00〜20:00
10〜3月 9:00〜13:00

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【著者プロフィール】

柳沢伸也(やなぎさわしんや)&柳沢陽子(やなぎさわ ようこ)

 

ミラノを拠点に、建築設計、建築・都市研究を行う。共に一級建築士。二人三脚で、各地を飛び回っている。自身のHP「イタリア建築通信」(http://www010.upp.so-net.ne.jp/architurismo/)で、建築行脚をレポート中。

 柳沢伸也:大手設計事務所勤務後、妻と共に独立を決意。趣味の剣道を通じ、イタリアでも文化交流を行っている。

柳沢陽子:地方自治体勤務後、夫と共に独立を決意。建築行脚が、いつのまにか食べ歩きの旅になっていることも。


    

 



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