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イタリア建築行脚へのINVITO
 
14 ottobre 2005

第8回 「アグリジェントの神殿の谷」




柳沢伸也&柳沢陽子



●壮大なギリシア神殿群
地中海を見下ろす丘の上,広大な空を背景に,巨大な神殿が屹立する。
シチリア島の南西部に位置するアグリジェントには, 20以上もの古代ギリシア時代の神殿が現存する。

アグリジェントは,紀元前6世紀にギリシアの植民都市として築かれ,最盛期には約30万人もの人口を擁した大都市だった。 神殿群は市街地から3kmほど離れた場所に建設され,その一帯は現在も「神殿の谷」と呼ばれている。

市街地自体は,ほとんどの観光客が素通りしてしまうのだが,1997年ユネスコ世界遺産に登録された「神殿の谷」には,毎日ひっきりなしに大型バスや マイカーが集う。シチリアを代表する観光スポットのひとつだ。

考古学博物館には,多くの出土品が収蔵され,当時の高い文化をうかがい知ることができる。なかでも,吹き抜けのホールに展示された7.75メートルも の巨人像は圧巻だ。柱の一部として巨人像が支えた神殿は,崩れ去ってしまったが,その壮大なスケールは推して知るべしだ。

写真トップ:夕日を浴びる神殿
左下:柱だけ残る神殿、右下:紀元前5世紀建造のコンコルディア神殿
(写真撮影 柳沢陽子)

●建築美の追求
ギリシア神殿は,神の住まいだ。特別な儀式の時を除いて人間が中に入ることはなく,もっぱら外から眺める建物として造られため,神殿は建築美の追求に 全エネルギーが注がれた。
柱の直径・高さ・柱間,また建物全体の幅・高さ・奥行きには,秩序だった比例関係が用いられ,幾何学的な美が表れている。

ほぼ完全な形を残すコンコルディア神殿は,ギリシア建築の美学を伝える貴重な資料だ。
「聖なる道」をゆっくりと上がっていくと,どっしりと構えた神殿が近づいてくる。アプローチに対して斜めに配置されているのは,見る者に建物の奥行き 感を感じさせるためだという。
正面に6本,側面に13本ある重厚なドーリア式の柱には,細い溝が縦に掘られ,強い太陽の陽射しが,より質感を浮かび上がらせている。肉眼ではほとんど 分からないが,視覚的な安定感を増すため,柱にわずかな膨らみ(エンタシス)をつけたり,柱を内側に傾けたりと,さまざまな工夫が施されているのだ。

しかしなぜ,これほど巨大な建造物が,同じ場所にいくつも造られたのだろう。

神殿の建設には,気の遠くなるような労力と時間が必要であっただろう。かけられたエネルギーは計り知れない。
人間には潜在的に,「建築することへの欲求」があるのではないかと感じる。
ギリシア神殿の簡潔で幾何学的構成の中には,時空を越えた美しさが宿っていた。


 
データ
Dati

■ アクセス
電車:パレルモから電車で約2時間。

■ データ
神殿の谷:8:30〜19:00,Tel 09.2249.7341
州立考古学博物館:火〜金9:00〜19:30,土・日・月9:00〜13:30,Tel 09.2240.1565


 
【著者プロフィール】

柳沢伸也(やなぎさわしんや)&柳沢陽子(やなぎさわ ようこ)

 

ミラノを拠点に、建築設計、建築・都市研究を行う。共に一級建築士。二人三脚で、各地を飛び回っている。自身の HP「イタリア建築通信」( http://www010.upp.so-net.ne.jp/architurismo/ )で、建築行脚をレポート中。

 柳沢伸也:大手設計事務所勤務後、妻と共に独立を決意。趣味の剣道を通じ、イタリアでも文化交流を行っている。

柳沢陽子:地方自治体勤務後、夫と共に独立を決意。建築行脚が、いつのまにか食べ歩きの旅になっていることも。


    

 



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