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イタリア建築行脚へのINVITO
 
15 gennaio 2006

最終回「進み続ける街トリノ」




柳沢伸也&柳沢陽子



●国家統一の舞台となったトリノ
イタリア共和国の最初の首都がトリノであった事実はあまり知られていない。初代国王のヴィットリオ・エマニュエーレの本拠地であったトリノは、国家統一の舞台となり、華やかな歴史が繰り広げられた。
イタリアの諸都市は、たいてい中世かルネッサンスの街が骨格となっている。しかしトリノは古代ローマ時代に形成された碁盤目状の街路を基礎として,バロック時代に街並みが形成された珍しい都市である。
ポルティコに縁取られた大通りが、モニュメンタルな建築物をまっすぐに結び、アールヌーヴォー調の洒落たカフェが軒を連ねる。近代的でエレガントな雰囲気は、フランス国境に近いという地理的条件もあってか、異国の香りをも感じさせる。

●グァリーノ・グァリーニのバロック建築
最もバロックらしい外観を表しているのは、カリニャーノ宮Palazzo Carignano(1679-85)だろう。トリノを代表するバロックの建築家グァリーノ・グァリーニの作品である。巨大な外壁が波のようにうねり、何か巨大な塊が外に出ようとしているようなエネルギーに満ち溢れている。壁や装飾はすべてレンガで施され、素朴さと華麗さが両立している。バルコニーは、広場に面した舞台のようにも見える。都市を劇場と見立てたバロック時代らしい演出である。
グァリーノ・グァリーニは、僧職につきながら、建築、数学、哲学、天文学を学んだ。その学問の集大成ともいえるのが、サン・ロレンツォ教会Chiesa di San Lorenzoの円蓋(1668-87)だ。下から見上げると、8本のアーチが交差しながら美しい幾何学模様を描いている。グァリーニは彫刻や装飾を極力減らし、純粋な幾何学で崇高な空間をつくりあげた。透過する光は、万華鏡のような模様で人々を魅了してやまない。

写真左:カリニャーノ宮、写真右:サン・ロレンツォ教会の円蓋

●映画博物館になったアントネッリアーナの塔
整然としたトリノの街並みの中で、異彩を放っているのがアントネッリアーナの塔Mole Antonellianaだ。ずんぐりとした巨大な屋根の上から天高くまっすぐ伸びる尖塔は、トリノのシンボルともいえる。アレッサンドロ・アントネッリによるこの塔は、元々、ユダヤ教の礼拝堂として建てられたものだ。その形は明らかにキリスト教の教会と異なっている。
1862年から27年の歳月をかけて組石造の限界に挑み、築き上げられた高さは実に163m。バルセロナのサグラダ・ファミリア(完成予定高さ170m)の着工が1883年,パリのエッフェル塔(鉄骨造,高さ350m)の完成は、奇しくもアントネッリアーナの塔と同じ1887年。同時代に世界各地で、高さへの挑戦が行われ、まったく異なる造形が生み出されたことは興味深い。
2000年、アントネッリアーナの塔は、国立の映画博物館に生まれ変わった。映像の歴史、映画スターの所有物や絵コンテなどのコレクションが展示され,懐かしい映像も楽しめるテーマパークとなっている。採光を押さえた大空間は,まさに映画博物館に打ってつけだ。また特筆すべきは、展望台へのエレベーターが、レールもない大空間を猛スピードで昇降するスリリングな体験だ。エレベーター頂上から見下ろす街の眺めも、また格別である。

写真左:アントネッリアーナの塔、写真右:トリノの街の一角

19世紀イタリア国王を輩出し、20世紀には自動車メーカーのフィアット社を中心に経済を牽引したトリノは、2006年冬季オリンピックの会場となる。イタリア国内外の様々な建築家による競技会場や選手村に加え、地下鉄や駐車場も整備された。『Torino always on the move』と標語に掲げたトリノが、オリンピック開幕後、どのような街の顔を見せてくれるのか楽しみである。


 
データ
Dati

■ アクセス
ミラノ・マルペンサ空港からバスで約2時間。
鉄道利用の場合は、ミラノ中央駅からユーロスターで約1時間半。

■ データ
国立映画博物館(アントネッリアーナの塔)
所在地:Via Montebello, 20 - 10124 Torino
公開時間:火〜金および日9:00〜20:00、土9:00〜23:00(月休)
電話: +39(国番号)+011-8138-560または561
FAX : +39(国番号)+011-8122-503
公式サイト:http://www.museonazionaledelcinema.org/
ツーリズモ・トリノの公式サイト:http://www.turismotorino.org/
トリノ・オリンピックの公式サイト:http://www.torino2006.org/


 
【著者プロフィール】

柳沢伸也(やなぎさわしんや)&柳沢陽子(やなぎさわ ようこ)

 

やなぎさわ建築設計室一級建築士事務所主宰(http://www.yanagisawa-archi.com/)。 2002年〜2005年、ミラノを拠点に、建築設計、建築・都市研究を行う。二人三脚で、各地を飛び回ったレポートは、HP「イタリア建築通信」 (http://www010.upp.so-net.ne.jp/architurismo/)をご参照ください。


    

 



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