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14 December 2000


第三回 盗まれなかったヴァイオリン

石井 高


 

photo

盗まれなかったヴァイオリンと一緒に  


 

だいぶ前のことであった。 ある秋の夕方、人相のあまり良くない男が警察手帳をちらっと見せてずかずかと仕事場に入ってきた。事情がよくわからないまま、ぼくは署まで連行された。 何とぼくは窃盗の重要参考人だったのである。

事件はその前の晩起こった。ぼくの仕事場の隣の事務所が荒らされ、現金事務用品の 一切が盗まれた。たいした被害ではなかったが,彼らは損害1000万円と届けた。ところでこの犯行 現場に、数日前盗まれたばかりのぼくのショルダーバッグがありパスポートが入っていたのだ。これが犯人の忘れ物とされた。

この事件の1か月前ヴァイオリンの材料に使う、カエデ、モミの木を探しにユーゴスラビア、オーストリア、ドイツに旅をした。どんな山道にも踏み込めるように友人からスクーターを譲りうけた。 そして理想的な材料を探しあてた。そのため全財産はカエデとモミの木になった。10日間走りまわってくたくたに疲れきっていたがそれでも幸せな気持ちでくれもなクレモナに戻った。そして鍵のはずされていた仕事場の中に何もないことを発見したのである。

通報により3人の警察がきたが指紋取りも調査もしない。かえって戸締りの不備を責 めた。盗まれたのは貴方が悪いのであると言った。(後日,元ドロボーの友人アントニオは、ネジ回し1本でいとも簡単に鍵の開け方を実演してくれた。今は彼の忠告で5つの鍵がつけられている。)

パスポート入りのバッグはこの時盗まれた。カメラ、ラジオ、タイプライターなどがなくなっていた。 しかし何よりも悔しいのは,修理のために預かっていた名匠ストラディヴァリウスのラベルが貼ってあるヴァイオリンを持っていかれたことである。見れば一目で贋物とわかる3万円位のものであるが、本人は本物と思っている。正直に盗まれたことを話し彼の言う額、50万円を2年かけて返済したのである。幸いなことに彼はストラディヴァリウスの本物が少なくとも1億円以上することを知らなかったのだ。

仕事場の中にたった一つドロボーの忘れ物があった。1965年のぼくの第一作ヴァイオリンが壁にかけられたままになっていたのである。この一台を製作するために2年を費やした。初めての作品としては良く出来ていると誉められもし、自分としても気に入っていた。青春のほのかな思い出のある忘れられない作品である。ヴァイオリンの内部のラベルには石井高第一作品と書いてあるが,仕事に忙しいドロボーが中を覗くようなそんな暇なことをしただろうか。贋物の方により価値を認めたのだろうか。

今年、このヴァイオリンを参考作品として楽器博覧会に出品する。今見れば初歩の楽器である。しかし無視される程ひどいものであったろうか、またイタリアのドロボーの優しい思いやりであったろうか、皆さんの判断におまかせしたい。




 

著者プロフィール

石井 高 (いしい たかし)
1943年兵庫県に生まれる。クレモナの国立国際バイオリン製作学校卒業後1975年に「マエストロ・リウタイオ=楽器製作マイスター」となる。楽器製作や名器の修理鑑定の他、古楽器復元にも取り組む。著書「ヴァイオリン作り Il Liutaio」イタリア コンヴェーニョ社他。日本でも公演、演奏活動を行う。イタリア・バイオリン芸術協会会員。クレモナ在住。



 
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