JAPANITALY Travel On-line

 
読み物・エッセイバックナンバー
イタリア 音楽の旅
 
15 Gennaio 2003

第5回 イタリアで一番熱狂的オペラファンがいるパルマ

パルマ - エミリア-ロマーニャ州
Parma - Emilia Romagna

牧野 宣彦
photo


紀元前6世紀にエトルリア人によって建設されたパルマは、南北に流れるパルマ川を境に右岸と左岸に分かれている。右岸は紀元前183年にローマ帝国の植民地として発展した。中世にはロンバルディア同盟の自由都市として町は繁栄し、1545年からはファルネーゼ家 Farnese の下で華麗な文化の華が咲き、ピロッタ宮殿などが建設された。18世紀にはスペイン王子ブルボン家のフェリペがファルネーゼ家出身の母から公国を相続したため、フランス的文化の影響が見られる。19世紀に入りナポレオン失脚後、ナポレオンの2度目の妻でハプスブルク家の皇女マリー・ルイーズ (イタリア語で マリア・ルイージャ Maria Luigia) がパルマを支配した。彼女は、歴代の前任者の寛容な統治を継承し、人々から「愛される皇妃」と慕われた。19世紀後半から20世紀前半にかけて活躍した大指揮者アルトゥーロ・トスカニーニ Arturo Toscanini の生まれた地であり、近郊のレ・ロンコーレはジュゼッペ・ヴェルディ Giuseppe Verdi が1813年に生まれた場所である。パルマはまた、生ハム、チーズのパルミジャーノ・レッジャーノの産地として名高い。絵画においてもコレッジョ Correggio (1489〜1534)、パルミジャ二ーノ Parmigianino (1503〜1540)などの有名な画家を輩出し、市中の教会、美術館には彼らの作品を鑑賞することが出来る。

♪テアトロ・レージョ Teatro Regio♪

17世紀のパルマにはいくつかの劇場があり、テアトロ・ドゥカーレもその一つだった。カストラート歌手として有名なファリネッリなどが18世紀にはパルマの舞台で活躍していた。現在のテアトロ・レージョは1821年にパルマの大公女マリー・ルイーズが、建築家の二コラ・べットーリに建築を依頼し、1829年に完成した。こけら落としに劇場はロッシーニの作品を望んだが、彼の協力を得られなかったためにベッリー二のオペラ「ザイーラ」が上演された。その後1849年に現在のテアトロ・レージョに名前が変わり、1853年にはブルボン家のカルロ3世の命を受けジロラモ・マグナー二によって改築された。彼はヴェルディのオペラの舞台装置などを作った当時有名なデザイナーだった。テアトロ・レージョの長さは84m、幅37.5m、高さは30mある。美しいシャンデリアは「アストロ・ランプ」と呼ばれ、ラカリエ・パリジアンが製作した。直径4m、高さが4.5mあり、重さは1100kgもある。これは市庁舎に飾られていたものを1913年ヴェルディ生誕100周年の時に劇場に持ってきたものである。この年にはヴェルディの「ファルスタッフ」、「アイーダ」など7つの彼のオペラが上演された。1950年代にはマリア・カラス、その後マリオ・デル・モナコ、ベルゴンツィ、テバルディなどが活躍した。1970年代、80年代にはアルフレッド・クラウス、ホセ・カレイラス、カーティア・リッチャレッリ、ライナ・カバイヴァンスカなどがテアトロ・レージョの舞台を踏んでいる。去年と今年はヴェルディ年で、ドミンゴらを招いて行った大歌手のガラ・コンーサートなどイタリアで最も意欲的なヴェルディの作品が上演された。筆者がこの数年間テアトロ・レージョで観たヴェルディの作品だけでもクラウディオ・アバード指揮「シモン・ボッカネグラ」「仮面舞踏会」「アルツィーラ」「イル・トロヴァトーレ」「リゴレット」など沢山ある。

パルマは定期会員のオペラファンが多いのでチケットが取り難いことで知られるが、本年度のプログラムが発表されたので紹介します。今シーズの幕開けは2002年12月22日で、イルデブランド・ピツェッティ作曲の「大聖堂における殺人」が上演された。彼は地元パルマ出身の作曲家で、1958年3月1日にミラノのサンタンブロージョ教会で初演された。ベッリーニの「夢遊病の娘」:指揮ジェラルド・コルステン、2003年1/12、15、19。ビゼー「カルメン」:ジュリアン・レイノルズ指揮、2/18、20、23、25。ドニゼッティ「愛の妙薬」:アラン・グインガル指揮、3/26、28、30、4/02。ベートーベンの「荘厳ミサ曲」:アルド・チェッカート指揮、4/23。ヴェルディの「第一回十字軍のロンゴバルド人達」:指揮はブルーノ・カンパネッラ、デヴィア、ヴィンチェンツォ・ラ・スコラ、ペルトゥージなどの豪華キャスト、5/17、20、22、25。ドナート・レンツェッティ指揮「NEI LIETI CALICI」:5/23。エルナーニ、オテッロ、ラ・トラヴィアータなどから抜粋。ヴェルディ「ナブッコ」:ブルーノ・バルトレッティ指揮、タイトルロールはレオ・ヌッチ、6/14、17、19、22などがある。チケットはファックスでもインターネットでも申し込める。

◇インフォメーション
Teatro Regio チケットオフィス
住所:Via Garibaldi 16/A
電話:(国番号39)0521-218678  Fax:206156
インターネット:www.teatroregioparma.org
E-mail:ticket@teatroregioparma.org info@teatroregioparma.org


  
写真:牧野宣彦(劇場内部のみ)
上:テアトロ・レージョ内部
左:ドゥオモ鐘楼と洗礼堂
右:テアトロ・レージョ外観

♪♪音楽にゆかりのある見どころ♪♪

●トスカニーニの生家 Casa Natale di Arturo Toscanini
Via Borgo Tanzi 13  Tel:0521 285499
名指揮者アルトゥーロ・トスカニーニは1867年3月25日にパルマで生まれた。パルマ川に架かる橋ジュゼッペ・ヴェルディ橋の西側に彼の生まれた家がある。音楽の才能に恵まれた彼は、9歳の時からパルマ音楽院(現在のアルリ−ゴ・ボーイト音楽院)で9年間過ごす。そしてチェリストとしてスカラ座などで演奏を始める。1885年南米ブラジルのリオデジャネイロの「アイーダ」の公演の時、指揮者のブラジル人レオポルド・ミグェツの代役として急遽指揮台に上がり、18歳で衝撃のデビューをし、1898年からスカラ座の指揮者に就任した。トリノのテアトロ・レージョでプッチーニの「ラ・ボエーム」(1897年)を初演し、スカラ座で1926年「トゥーランドット」の初演などを指揮している。その後アメリカに渡り、メトロポリタン歌劇場、NBC交響楽団などを指揮し、ドイツのヴィルヘルム・フルトヴェングラーと並び、20世紀最大の指揮者といわれた。1957年1月16日にバスルームで脳血栓を起こし、90歳で世を去った。彼の家は1987年に修復され、博物館として公開されている。トスカニーニがスカラ座で「オテッロ」「ドン・カルロ」を指揮した時のポスター、指揮棒、肖像画、衣装などが展示され、3階はCDや記録映画などが収蔵されている。

●ヴェルディ記念碑 Monumento a Verdi
平和広場 Piazza della Pace にはパルティジャーノ記念碑とピロッタ宮殿の脇にヴェルディ記念碑が建っている。1913年ヴェルディ生誕100周年を記念して、ランベルト・クザーニによって建設され、当初は駅前広場に設置されたが、1947年に現在の場所に移された。ブロンズ製作はエットレ・シメネーゼ。背面にはヴェルディの生涯の重要な出来事が彫られ、中央には「ヴェルディ万歳 VIVA Verdi (Verdi の綴りが「イタリア国王ヴィットリオ・エマヌエーレ Vittorio Emanuele Re d'Italia」の頭文字であることから、イタリア統一運動の合言葉にされた)」とあり、カブールに説得され国会議員となったヴェルディが国王ヴィットリオ・エマヌエーレ2世に謁見し、握手をしている場面が表示されている。

●パガニーニの墓 Tomba di Paganini
(Cimitero della Villetta):Strada della Viletta
ジェノヴァで生まれた天才バイオリンニスト、ニコロ・パガニーニ Nicolò
Paganini
(1782〜1840)は、ニースで世を去るが、その安息地がなかなか見つからなかった。色々な説があるが、遺体はパルマ大公国のガイオーナに最初運ばれた。パガニーニは生前パルマ大公妃から聖ゲオルク修道会の騎士に任命されていて、この騎士修道会にパルマの聖母教会が所属していたからである。しかしパガニーニの息子は父の安息地をなおも探し続け、最終的に現在のヴィレッタ墓地に落ち着いたのは1896年で、およそ56年間彼の遺体はさ迷い続けたことになる。それは彼の演奏が悪魔的とさえ言われた超絶技巧を駆使し、当時の人々を魅了したので、人々がパガニーニを気味悪がって遺体を自分の町に置くのを拒否したことによる。

●ドゥオーモ Duomo
イタリアロマネスク建築の代表的教会。11世紀に建設され、1117年に地震で崩壊したために12世紀に全面的に改築された。この聖堂の最大の見ものはパルマ出身の画家コレッジョがクーポラに描いたフレスコ画「聖母の被昇天」で、亡くなった聖母マリアが雲海の彼方の天使達のいる光の中に昇って行く劇的な様子が描かれている。素晴らしい構図と美しい光が印象的な傑作である。他にはアンテーラミ Antelami の作による「十字架降下」(1178年)がある。この作品はヴェローナ産の赤い角礫石製で、背景には金属による象眼とサイン、および年代記が見られる。内陣には同じくアンテーラミ作の浮き彫りで飾られた司教座もある。

●マドンナ・デッラ・ステッカータ教会 Madonna della Steccata
テアトロ・レージョの斜め前にある教会。建てられたのは16世紀前半頃でザッカーニ父子の設計による。ここには地元の画家パルミジャニーノの壁画がある。1528年に楽団が創設され、ドゥオーモ、宮廷と並ぶ音楽活動の拠点となった。現在でも時々宗教音楽が演奏される。

●ピロッタ宮殿 Palazzo della Pilotta
1545年以降パルマを支配したファルネーゼ家が1583年から1622年にかけて建立した宮殿で、いまだに未完成。この宮殿の名前ピロッタは中庭で遊んだ「ペロータ」という球技に因むという。中に国立考古学博物館、国立絵画館、蔵書70万冊を所有する図書館などがある。この絵画館にはパルマの生んだコレッジョの主要なコレクションがあり、コレッジョの「聖ジロラモの聖母」「スカーラの聖母」「スープ皿の聖母」「聖母の戴冠式」「受胎告知」などがあり、パルミジャニーノの傑作「トルコの女奴隷」「自画像」などもある。その他カナレット、エル・グレコ、ホルバイン、レオナルド・ダ・ヴィンチのデッサンなど多くの有名画家の作品を所蔵する。

●ファルネーゼ劇場 Teatro Farnese
ピロッタ宮殿内にあるテアトロ・ファルネーゼは、ヴィチェンツァにあるテアトロ・オリンピコをモデルにして建設された木造の建物である。建設は1618年で、時の大公ラヌッチョ・ファルネーゼが建築家のバッティスタ・アレオッティに依頼し、1628年にオープンした。この時は エドワルド・ファルネーゼとマルゲリータ・デ・メディチの結婚祝典用に作曲されたモンテヴェルディのインテルメディオ(メルクリウスとマルス)が演奏された。第2次世界大戦で損傷を受けたが、1950年代に入り再建された。内部は典型的なルネッサンスの様式で、最近でも時々演奏会に利用されている。

●アルリゴ・ボーイト音楽院 Conservatorio di Musica A.Boito
1769年にブルボン家の王立執事ギョーム・デュ・ティヨによって王立声楽学校として創立されたが、1816年マリー・ルイーズが音楽院に改革した。1888年この学校の院長を務めたアルリゴ・ボーイトの名前を取って現在の名前になった。ご存知の通り彼は、ヴェルディの「オテッロ」「ファルスタッフ」の台本を書いた人である。この学校で学んだ人にはトスカニーニ、ソプラノのレナータ・テバルディ、テノールのフェルッチョ・タリアヴィー二、カルロ・ベルゴンツィなどがいる。

●パルマ・カルトジオ会修道院 Certosa di Parma
パルマの北東4キロにある1285年にカルトジオ会修道士によって建設された。2つの門の彼方にスタンダールの名作「パルムの僧院」の舞台となった教会が見える。スタンダールは実際にはこの教会を見ていないといわれるが、小説の主人公ファブリスが愛人クレリアや子供の死を悼み、身を隠すのがパルムの僧院パルマ・カルトジオ教会である。現在は看守学校に使われていて、門の入り口にパスポートを刑史に預けると中を案内してくれる。教会の内部は多くの画家達によって修復が繰り返されてきた。セバスティアーノ・ガレオッティ、フランチェスコ・ビビエーナの絵画などは素晴らしい。



パルマ・データ
エミリア・ロマーニャ州

■お薦めホテル
*パラス・ホテル・マリア・ルイージャ Palace Hotel Maria Luigia ☆☆☆☆ 駅からも劇場からも近い4ツ星ホテル
Viale Mentana 140  Tel:0521 281032 Fax:0521 231126
*パークホテル・スタンダール ☆☆☆☆ 劇場から近い4ツ星ホテル
Piazzetta Bodoni 3 Tel:0521 208057 Fax:0521 285655
*アストーリア・エグゼクティヴホテル Astoria Executive Hotel ☆☆☆ 駅に近く部屋も3ツ星にしてはよい
Via Trento 9 Tel:0521 272717 Fax:0521 272724
*トリノ Torino ☆☆☆  劇場から近くとても便利なホテル
Borgo Mazza 7    Tel:0521 281046  Fax:0521 230725
*サヴォイ Savoy ☆☆☆  ガリバルディ通りに面した便利のよいホテル
Via 20 Settembre 3/a Tel:0521 281101 Fax:0521 281103

■レストラン
*ラ・グレッピア La Greppia マンマの手作りのパスタがお薦め、劇場からも近い
Strada Garibaldi 39/a Tel:0521 23686 Fax:0521 221315
*イル・トロヴァトーレ IL Trovatore 劇場にも近く、室内はヴェルディのトロヴァトーレの絵画がある
Via Affo 2/A Tel:0521 236905 Fax:0521 236905
*カサブランカ Casablanca 魚介料理が美味しい。室内は映画のポスターが飾ってある
Via Marchesi 25A Tel:0521 993752 Fax:0521 993752
*パリッツィ Parizzi 洗練された料理が食べられる
Strada della Repubblica 71  Tel:0521 285952 Fax:0521 285027
*サン・バルナバ San Barnaba ホテルアストリア・エグゼクティヴのレストラン、味もよい
Via Trento 11   Tel:0521 270365 Fax:0521 272724






著者プロフィール

牧野宣彦(まきののぶひこ)
早大卒。1974年、旅行会社にて日本初のニューイヤー、スカラ座オペラツァーを企画。その後コンピュータ会社を経て、1998年よりイタリアに住み、現在ボローニャ在住。フリーのトラベルライターとして、イタリアの旅行、音楽、グルメ関係の執筆、写真撮影を行う。

<著書>
「イタリアのべストラン」(透土社):トスカーナとイタリアのベストレストラン、ワイナリーなどを紹介。イタリア料理の人気の秘密をフランス料理と比較して解説。「イタリア歴史的ホテル・レストラン・カフェ」(三修社):イタリア各地の歴史的な面白い場所を203箇所紹介。イタリアで一番面白いガイドブック。「イタリアオペラツァー」(あんず堂):イタリア30都市でのオペラ体験紀行。音楽史跡、劇場、博物館、オペラを聞くために便利なホテル、レストランなど面白い情報を紹介。

 





読み物・エッセイ バックナンバー イタリア 音楽の旅
このページのトップへHOME PAGEへ


 
http://www.japanitalytravel.com
©  JAPANITALY.COM srl - MILANO 2000 All rights reserved.