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イタリア 音楽の旅
 
15 Ottobre 2003

第11回 プッチーニのラ・ボエームが初演された
テアトロ・レージョ


 トリノ − ピエモンテ州
Torino −Piemonte

牧野 宣彦
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トリノはフィアットに代表される工業都市という印象が強いが、散策してみると、素晴らしい回廊があり、老舗のカフェ、パスティチェリアが軒を並べ、緑も多く私の好きな街の一つだ。現在のイタリア共和国は19世紀にトリノを中心に起こったリソルジメントRisorgimentoに負うところが大きい。統一前のイタリアは、ハプスブルク家が北部、南部はスペインなどによって複雑に分割され、外国人が支配していた。この時、立ち上がってイタリア統一を主張したのが、カヴール、ガリバルディなどであり、1861年にイタリア統一が実現すると一時イタリア王国の首都になった。

音楽ではオペラ「クリストフォロ・コロンボCristoforo Colombo」を書いたアルベルト・フランケッティAlberto Franchetti、鋼のような声を持つと言われ、オテロOtello の初演の時タイトルロールを歌ったテノールのタマーニョTamagno、名バス歌手のイタロ・ターヨ、名バイオリンニトのアッカルドもトリノで生まれている。

♪テアトロ・レ-ジョ Teatro Regio♪

トリノのオペラの歴史は、1611年に王宮内の宮廷劇場で上演されたディンディアのザリズーラLa Zalizuraに始まる。その後1730年カルロ・エマヌエル3世が建築家のフィリッポ・ジュヴァッラFilippo Juvarraに、新しい劇場の建設を委託した。彼の死後建築家のべネデット・アルフィエリBenedetto Alfieriが1738年に2500席ある優雅な劇場を建て、1740年12月26日にフランチェスコ・フェオFrancesco FeoのアルサーチェAlsaceで開場した。当時はグルッピ、ヨンメッリ、チマローザ、パイジェッロなどの作品が上演された。1790年から1814年ごろはテアトロ・ナツィオナーレ、テアトロ・インペリアルなど数回改名された。1895年から1898年まではトスカニーニが音楽監督に就任した。1893年プッチーニのマノン・レスコーManon Lescautが初演され、1896年にはラ・ボエームがトスカニーニの指揮で初演されている。19世紀に改築された劇場はナポリのサン・カルロ劇場をモデルにしたネオクラッシックの美しい劇場であったが、1936年に火災で焼失した。それ以来オペラの公演はヴィットリオ・エマヌエーレ劇場とモーダ劇場で行われていたが、1965年になって建築家のカルロ・モリ―ノCarlo Mollinoとマルチェロ・ザべラー二・ロッシMarcello Zavelani Rossiによって現在の現代的な無味乾燥な劇場が出来、そのこけら落としにヴェルディのシチリア島の夕べの祈りI Vespri Sicilianiが、マリア・カラスとジュゼッペ・ディ・ステーファノという黄金キャストによって上演され、話題となった。2003年から2004年のシーズンのプログラムが発表されているので紹介します。

幕開きは2003年10月7日、ヴェルディのシモン・ボッカネグラSimon Boccanegraで指揮はロベルト・アッバード、シモンがホアン・ポンズ、アメリアがバーバラ・フリットーリ、アンドレアがアンドレア・パピというキャストで、トリノの劇場のオリジナルな新演出、
10/07,08,09,11,12,14,16,18,19,21,22,26。次にペーザロのロッシーニ劇場のプロダクションと同じロッシーニのセミラーミデSemiramideで指揮はリッカルド・フリッツァ、
11/18,19,20,22,23,25,26,27,30。オフェンバックの「地獄のオルフェ(天国と地獄)Orfeo all’inferno,演出はランベルト・プジェッリ、指揮はジュゼッペ・グラッツィオリ、
12/16,17,18,20,21,23,27,28,30,31,プッチーニの西部の娘La fanciulla del West、指揮は ステヴェン・メルクリオ、ロスアンジェルスで上演された演出。
1/23,24,25,27,28,29,30,31,2/01,03,04。モーツァルトのフィガロの結婚Le nozze di Figaro
指揮はステファン・アントン・レック、演出はマリオ・モ二チェッリ、2/24,25,26,28,29,3/02,
03,05,06,07。プロコフィエフの修道院での結婚Matrimonio al conventoでプロダクションはサンクト・ぺテルスブルクのマリンスキー劇場のもので3/17,21,23,24,26,28。同じくマリンスキー劇場のバレエ火の鳥、シェラザードなど、Chopiniana,Sheherazade,L’uccello di fuoco、4/01,02,03,04,06,07。白鳥の湖Il lago dei cigni 4/15,16,17(昼、夜2回)18。ファリャ、ストラヴィンスキー、チャイコフスキーなどの音楽によるバレエ(Jewels)、4/21,22,23(昼、夜2回)、24。イタリアの現代作曲家二―ノ・ロータのフィレンツェの麦わら帽子Il cappello di paglia di Firenze、5/18,20,23,25,27,30。シーズンの最後はヴェルディの仮面舞踏会Un ballo in maschera,指揮がカルロ・リッツィ、演出がロレンツォ・モリアーニ、リッカルドがヴィンチェンツォ・ラ・スコーラ、レナートがマエストリなど。
6/22,23,25,26,27,29,30,7/01,02,03,04,06。以上のような興味深い公演がある。

★インフォメーション★
Fondazione Teatro Regio di Torino
Piazza Castello,215 10124 Torino
Biglietteria
Tel:(39) 011 8815241 8815242 8815270 Fax:011 8815214
www.teatroregio.torino.it
E-mail:biglietteria@teatroregio.torino.it

  

♪♪音楽にゆかりのある見どころ♪♪

● 王宮 Palazzo Reale
1660年に建てられたもので1865年までサヴォイア家の王宮であった。内部には多くの部屋があり、17世紀から19世紀にかけての豪華な家具、調度品、絵画などで飾られ,一見の価値がある。時間がない時はここだけ訪れるとよい。はさみの階段Scala delle forbiciと呼ばれる玄関の大広間から階上に上がる階段はフィリッポ・ユヴァッラによる装飾が美しい。彼はまたガビネット・チネーゼGabinetto Chinese(中国風小部屋)という部屋の装飾も行っている。宮殿の背後にはフランス式王宮庭園が広がっている。王宮の前は大きな広場になっていて催し物が開催される。

● カリニャーノ宮殿 Palazzo Carignano
17世紀に活躍した建築家グアリーノ・グアリー二が1679年から1685年にかけて建設した壮麗な宮殿で、サヴォイア家の分家であるカリニャーノ家の住まいだった為にイタリアの歴史上重要な出来事があった。サヴォイア王カルロ・アルベルトの子で、初代イタリア国王ヴィットリオ・エマヌエル2世が1829年ここで生まれている。また1861年にイタリア王国成立の宣言が行われた場所である。現在は国立リソルジメント博物館になっていて、カヴールの書斎などが復元されている。写真、書類、記念品などが見られる。またトリノがイタリアの首都だった最後にピエモンテ議会が開催された部屋は当時のまま保存されている。

●マダマ宮殿 Palazzo Madama
カステッロ広場の中心に建つ宮殿、トリノの歴史と共に歩んできたモニュメント。1585年ここでカルロ・エマヌエーレ1世とスペイン王女カタリーナの婚礼の際に、大広間でグアリー二の牧歌劇忠実な羊飼いIl pastor fidoが上演されている。17世紀には王室の令夫人Madama Reale すなわちヴィットリオ・アメデオ1世未亡人で、カルロ・エマヌエーレ2世の摂政であったマリー・クリスティの住居になったことからマダマ宮殿といわれている。

現在は修復中だが市立古典美術館になっている。中世初期から19世紀までのピエモンテの絵画を中心に作品が展示されている。アントネッロ・ダ・メッシ―ナの「男の肖像」ポントルモ作「聖ミカエル」などの作品がある。

●サバウダ美術館 Galleria Sabauda
科学アカデミー宮殿にはサバウダ美術館3階とエジプト博物館2階がある。サバウダ美術館は、1832年カルロ・アルベルト王がサヴォイア家のコレクションをマダマ宮殿で公開していたことに始まった。ヴァン・ダイク、ヴェロネーゼ、メムリンク,ポライオーロ、ファン・デル・ワイデンなどの作品があり、充実している。その中ではピエモンテの画家ベロット
Bellottoの描いたトリノに流れるポー川の風景を描いた2枚の絵が素晴らしかった。

●サン・ロレンツォ教会 Chiesa di San Lorenzo
1668年から80年にかけて建築家のグアリー二によって建設された教会で、トリノで一番美しい教会といわれている。クーポラは個性的で美しく、王宮前の広場から優雅な姿を見る事ができる。

●ドゥオーモ Duomo
内部が3廊式の1498年に建てられたルネッサンス時代の教会。内部にシンドネ礼拝堂Cappella della S.Sindone がある。中央にはベルトラ作のきらびやかな祭壇があり、その中の箱にシンドネと呼ばれる聖骸布が納められている。これは長さ4.1メートル、幅1.4メートルのエジプト産の一枚の布で、キリストの遺骸を包んだといわれ、その体の跡が布の残っているという。最近ではあまり公開されない。いつだったか日本のテレビでこの布が本当にキリストの体を包んだものなのか鑑定した番組があり、それによるとそのような痕跡は見出せなかったという。

●映画博物館 Il Museo del Cinema
映画の創世記である20世紀初頭から現代に至る膨大な映画の資料が展示されている。無声映画や映画の発明者ルミエール兄弟の作った映写機など貴重な展示が多い。マリリン・モンローのコーナーには彼女の身につけていた下着まで展示している。日本の映画スターのプロマイドなどもあり、一世を風靡した名スターたちの作品に再会で来るので、映画に関心のある方には魅力ある場所である。

●プッチーニの家 La casa di Puccini
プッチーニはトリノとゆかりが深い。彼の最初の成功を収めた「マノン・レスコーManon Lescaut」、ボヘミアン達の生活を描いた「ラ・ボエーム」もトリノのテアトロ・レージョで初演されている。
その彼が最初にトリノを訪れ滞在した家がサン・アゴスティーノ教会の脇のVia Santa Agostino 15番地にある。そこにはプッチーニが1884年6月24日から7月6日までここに滞在した事が書かれている碑がある。プッチーニはアゴスティーノ教会でオルガンも弾いたといわれている。

★イタリア一のトリノのカフェ文化
トリノはオーストリアから独立を目指してイタリアで最も激しいリソルジメントの運動が行われた場所である。その為人が出会うカフェが発達した。特にトリノには、有名人が訪れた歴史的カフェが多い。これらのホテル、レストラン、カフェに訪れた文学者、音楽家はイタリアだけでなく、世界各国にまたがり、トリノという街がそれらの人にいかに愛されていたか知る事ができる。

○ Caffe Bicerin  Piazza della Consolata 5 Tel:011 4369325
1763年創業のトリノで一番古いカフェ。プッチーニが度々訪れ、オペラ ラ・ボエームのモデルになったカフェといわれている。飲み物も美味しくこの店のビッチェリン、チョコレート、ザヴァイオーネなどは絶品。他にカヴール,アレキサンドル・デューマなども訪れている。

○Caffe Gelateria Fiorio Via Po 8 Tel:011 8173225
1780年創業のカフェで、ポルティコのある素敵なポー通りにある。この店には、ドイツの哲学者であるニーチェがよくアイスクリームを食べに来たという。アイスクリームは美味しいと評判。

○Caffe Elena Piazza Vittrio Veneto 5 Tel:011 8123341
「美しい夏」「月とかがり火」などの作品を残したチェザーレ・パヴェーゼCesare Paveseが常連だったといわれる1900年頃創業したカフェ。簡単な軽食、ワインなども飲める。

☆トリノには他にも1828年創業のサン・カルロSan Carlo、1907年創業のムラッサーノMulassano、1870年創業のプラッティPlatti、1903年創業のトリノTorino、1875年創業のバラッティ&ミラノBaratti&Milanoなど有名人が訪れたカフェは沢山あるが、興味のある方は拙著「イタリア歴史的ホテル・レストラン・カフェ」増補版(三修社)を参照下さい。


トリノ ・データ
   ピエモンテ州

■お薦めホテル
*Turin Palace Hotel エリーザべト皇妃が泊まった駅前にある4ツ星ホテル。快適で便利。
Via Sacchi 8 10128 Torino Tel:011 5625511 palace@thi.it Fax:011 5612187
*Jolly Hotel Principi di Piemonte 街の中心にある豪華なホテル
Via Gobetti 15 10123 Torino Tel:011 5577111 Fax:011 560270
torino_principidipiemonte@jollyhotels.it
*G・H・Sitea マリア・カラス、G・ディ・ステーファノの泊まったホテル、劇場に近い。
Via Carlo Alberto 35 10123 Torino Tel:011 5170171 sitea@thi.it Fax:011 548090
*Jolly Hotel Ligure 駅前のローマ広場にある4ツ星ホテル。便利で快適。
 Piazza Carlo Felice 10123 Torino Tel:011 55641 Fax:011 535438
torino_ligure@jollyhotels.it
* Genio 駅前の便利な4ツ星ホテル。
Corso Vittorio Emanuele II 47 10125 Torino Tel:011 6505771
hotel.genio@hotelres.it Fax:011 6508264

■お薦め歴史的レストラン
* Del Cambio プッチーニ、カサノヴァが訪れた歴史的レストラン。創業1757年。
Piazza Carignano 2 10123 Tel:011 543760 cambio@thi.it Fax:011 535282
* San Giorgio 1884年創業のレストラン。ポー川の夜景を見ながら食事が出来る。
  Vile.E.miillo 6 Parco Valentino 10126 Torino Tel:011 6692131 
* Marco Polo 魚介料理が美味しいレストラン
Via Marco Polo 38 10129 Torino Tel:011 500096 Fax:011 50842266
* Il58 魚介料理の美味しい手頃なレストラン
Via San Secondo 58 10128 Torino Tel:011 505566 Fax:011 505566
* C’era una volta ピエモンテ料理、料金も安い。
Corso Vittorio Emanuele II 41 Torino Tel:011 6504589 Fax:011 6505774




著者プロフィール

牧野宣彦(まきののぶひこ)


早大卒。1974年、旅行会社にて日本初のニューイヤー、スカラ座オペラツァーを企画。その後コンピュータ会社を経て、1998年よりイタリアに住み、現在ボローニャ在住。フリーのトラベルライターとして、イタリアの旅行、音楽、グルメ関係の執筆、写真撮影を行う。
著書
「イタリアのべストラン」(透土社):トスカーナとイタリアのベストレストラン、ワイナリーなどを紹介。イタリア料理の人気の秘密をフランス料理と比較して解説。「イタリア歴史的ホテル・レストラン・カフェ」(三修社):イタリア各地の歴史的な面白い場所を203箇所紹介。イタリアで一番面白いガイドブック。「イタリアオペラツァー」(あんず堂):イタリア30都市でのオペラ体験紀行。音楽史跡、劇場、博物館、オペラを聞くために便利なホテル、レストランなど面白い情報を紹介。

 





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