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読み物・エッセイ  イタリア 音楽の旅
 
15 Gennaio 2004

第14回 「リゴレットRigoletto」の舞台となったマントヴァ

 マントヴァ - ロンバルディア州
Mantova − Lombardia

牧野 宣彦
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マントヴァは、ポー川の支流ミンチョ川Mincioの中州に開けた街だが、街の起源としては2つの物語がある。一つは、この街出身の古代ローマの詩人ヴェリギリウスVirgiloが書いたもので、この地に彼らの英雄オクノOCNOとエトルリア人が住んでいたという説とダンテの神曲の「地獄篇」でヴェルギリウスが語っているのは、ギリシャ神話のティレシアスの娘である占い師マントMantoが身を隠し、死ぬ地としてここを選び、街の名前はこのマントに由来している。

12世紀にアルベルト・ピエンティーノAlberto Pientinoによって大がかりな治水工事が行われ、現在見られるようなスペリオーレ湖Lago Superioreとインフェリオーレ湖Lago Inferioreを川でつなぎ、ポルト・カテナPorto Catenaを開港し、今日のような景観になった。14世紀にマントヴァを支配したのはゴンザーガ家でその支配は1707年まで約400年に渡っている。

歴代の領主は、芸術を振興した事で知られ、ピサネッロPisanello、バッティスタ・アルベルティBattista Alberti、ジョヴァン二・ベッリー二Giovanni Bellini、レオナルドLeonardo、ラファエッロの弟子のジュリオ・ロマーノGiulio Romanoなどが活躍し、多くの建築や絵画を残している。特にフランチェスコ2世の妻だったイザベッラ・デステIsabella d’Esteは、文化人として知られ、マンテーニャMantegnaティッツィアーノTizianoなどの芸術家を招いた。また、イタリアのオペラ創世期の最も偉大な作曲家モンテヴェルディMonteverdi(1567~1643)は、マントヴァ郊外のクレモナ出身だったが、彼がマントヴァの宮廷の楽長として活躍していた時代に「オルフェーオOrfeo」(1607)「アリアンナL‘Arianna」(1608)などを作曲し、フィレンツェで1597年に誕生したオペラはこの時代マントヴァがオペラの中心的な存在だった。またマントヴァは、ヴェルディの傑作「リゴレットRigoletto」の舞台となった街で、街にはリゴレットの家、スパラフィチーレの家などが現存している。

イタリアにはウンベルト・ボッシの率いる北部同盟という北部と南部を分離し、北部の豊かさを、北部だけで分かちあおうという急進的な政党があり、彼らはイタリアを南北に分割した際はマントヴァを首都に定めるとしている。これを見てもマントヴァは魅力溢れる街だといえる。

●テアトロ・シエンティフィコ Teatro Scientifico(Il Teatro Bibiena)
1769年に建築家のアントニオ・ビビエナ(1700-1774)が建設し、アッカデミア・フィラルモニカとしてオープンした。18世紀の最も美しい劇場といわれる。1770年1月10日夕方マントヴァに到着したモーツァルト父子はその日ハッセHasseのオペラ「デメートリオDemetrio」を観劇した。またモーツァルトはここで自作の10数曲のコンサートを開催し、演奏会は大成功に終わり、彼がここで演奏した事を示す記念碑が掲げられている。モーツァルトの父親レオポルドは妻に「アッカデミア・フィラルモニカをお前にも見せたいと思いました。私の人生の中でこのタイプでこれ以上美しい劇場は見たことはありません。・・・これはもう劇場ではなく、広間にロージェをつけたオペラハウスのようだ。」とその美しさを讃えている。現在は室内楽、コンサートなどが行われている。

※インフォメーション※
Societa della Muscia
Via Cesare Battista 9
46100 Mantova
Fax:0376 369314 Infoline:333 8398775
E-mail:davidebardini@bardiniassociati.it
HP:http://www.societadellamusica.it

●テアトロ・ソチアーレ Teatro Sociale
建築家のLuigi Canonica が1818年に着工し、1822年に開場した。ネオクラッシックの美しい劇場で初演されたのはメルカダンテMercadanteのオペラ「アルフォンソとエリーザAlfonso ed Elisa」であった。座席数は1100、ピランデッロなどの演劇が上演されているが、オペラの上演は少ない。シーズンは11月から6月。

※インフォメーション※
Teatro Scociale
Piazza Folengo 4 46100 Mantova
Tel/Fax:0376 36 2739

♪♪音楽にゆかりのある見どころ♪♪

●ドゥカーレ宮殿 Palazzo Ducale
マントヴァを14世紀から支配したゴンザーガ家の居城で、宮殿、サン・ジョルジョ城、サンタ・バルバラ教会の3つからなる。内部は美術館になっていて、特に夫妻の間Camera degli Sposiは、マンテーニャによるゴンザーガ家の人々の様々な表情を生き生きと描いたフレスコ画がある。また、ルーベンスは一時この宮廷の宮廷画家で彼の描いた「ゴンザーガ家の人々」もある。その他にジュリオ・ロマーノとその流派の画家達の描いた小人の間などの部屋がある。
サンタ・バルバラ教会は音楽を好んだゴンザーガ家の領主が建てたもので、16世紀には 宮廷礼拝堂所属と教会付属の二つの楽団があった。鏡の間Sala degli Specchiは、18世紀末に新古典様式に改造されたが、モンテヴェルディが自ら指揮して自作を演奏したホールで、1608年ここでフランチェスコ・ゴンザーガとサヴォイア家のマルゲリータの結婚式に際して、彼のオペラ「アリアンナArianna」が上演され、大成功を収めた。

●エルベ広場 Piazza Elbe
マントヴァの中心で朝市が立つ。広場の南端には、11世紀に建設されたサン・ロレンツォ 円形堂Rotondan di San Lorenzoは、ロマネスク様式の古い建物で、その中央に公会堂 Palazzo della Ragioneがある。回廊には古いカフェなど洒落た店が並ぶ。

●サンタンドレア教会 Basilica di S.Andrea
マントヴァのルネッサンス時代の代表的な建築で、1472年から1494年にかけてバッティスタ・アルベルティによって建てられた。クーポラはフィリッポ・ユバーラの設計による。
入り口の巨大なアーチが印象的である。内部にマンテーニャのお墓がある。

●ドゥオーモ Duomo
ロマネスク様式の鐘楼と右の側壁にゴシック様式の一部を持つ中世の建築物。内部は一部ジュリオ・ロマーノが改装した。

●アンドレア・マンテーニャの家 Casa del Mantegna Tel:0376 360506
マンテーニャは1431年に生まれ、ヴェネツィア派の画家として活躍したが、1506年マントヴァで死去している。この家は1476年に建設されたもので展覧会などが開催される。

●テ宮殿 Palazzo Te
ゴンザーガ家のフェデリコ2世が愛妾の為に建てたといわれている。町の外れにあるユニークな別荘。広大な中庭があり、内部はジュリオ・ロマーノとその流派の画家達が描いた。
プシュケーの間Sala di Psicheと巨人の間Sala dei Gigantiはイタリアマニエリスムス 絵画の傑作といわれている。

  

♪♪リゴレットの舞台の街♪♪

ヴェルディ中期の傑作「リゴレットRigoletto」は、ヴィクトル・ユーゴーの戯曲「王は楽しむ」が原作になっている。この戯曲は1832年11月にパリで初演され、王に対する不敬の故 たった一日で上演禁止になったという問題のある悲劇だった。ヴェルディは1850年ごろヴェネツィアのフェニーチェ座とオペラ作曲の契約を交わした。当時のヴェネツィアはハプスブルク家のフランツ・ヨーゼフの支配下にあったが、他のイタリア都市と較べるとまだ自由な雰囲気が残っていた。しかしヴェネツィアを当時支配していたオーストリアのゴルツゴフスキー将軍は、このオペラの上演を禁止した。その後会合がもたれ、舞台をフランスからマントヴァ、登場人物フランソワ1世はマントヴァ公爵に、トリブーレをリゴレットに変更して上演される事が決定した。ヴェルディが何故オペラの舞台となった街をマントヴァに変更したのか、これはルネッサンス時代のマントヴァにマテロという悪名高い道化がいたといわれる。本来このオペラはマントヴァとは何の関係もないはずだが、現実にリゴレットの家やスパラフィチーレの館などが存在しているのが、いかにもイタリアらしい。

★リゴレットの家 Casa di Rigoretto
第一幕第2場の舞台になっている。ドゥオーモの裏手に位置し、中庭にはリゴレットのブロンズ像があり、ヴェローナ県の史跡名所に指定されている。現在は個人の所有のため中には入れないが、中庭にあるリゴレット像は見える。

★スパラフィチーレの家 Casa di Sparafucile
マントヴァの旧市街からサン・ジョルジョ橋Ponte San Giorgioを渡りふりかえると、水の彼方に蜃気楼のような古都が見える。ひときわ高く聳えるサンタンドレア教会のクーポラ、煉瓦色の古い町並みが織りなす風景は素晴らしい。この橋はパドヴァやオステリア街道からマントヴァへ入る入口になっているので交通量が激しい。その橋のすぐ後ろの藪の中にオペラ第3幕の舞台となる殺し屋スパラフィチーレの館がある。オペラではここで、マントヴァ公爵が有名なテノールのアリア「女心の歌La donna e mobile」を歌う。


マントヴァ ・データ
  

■お薦めホテル
★San Lorenzo 街の中心にある4ツ星ホテル、クラッシックな内装、31室。
Piazza Concordia 14 Tel:0376 220500 Fax:0376 327194
E-mail:hotel@hotelsanlorenzo.it
★Rechigi 街の中心にある4ツ星ホテル、雰囲気、内装は現代的、56室。
Via Calvi 30 Tel:0376 320781 Fax:0376 220291
★Apollo hotel 駅の近くの3ツ星ホテル
Via Don Leoni 17 Tel:0376 328114 Fax:0376 221120
★Mantegna 港の近くにある便利なホテル,42室
Via Fabio Filzi 10/b Tel:0376 328019 Fax:0376 368564 E-mail:info@hotelmantegna.it

■お薦めレストラン
☆Aquila Nigra マントヴァで一番のレストラン、肉、魚と両方ある。
Vicolo Bonacolsi Tel:0376 327180 Fax:0376 226490 E-mail:informazioni@aquilanigra.it
☆Grifone Bianco 伝統的な地方料理が味わえる
Piazza Elbe 6 Tel:0376 365423 Fax:0376 326590 E-mail:info@grifonebianco.it
☆L‘Ochina Bianca 経済的で、マントヴァの地方料理。
Via Fini 2 Tel:0376 323700 Fax:0376 327077
☆Centro Rampini 街の中心に位置する店で、伝統的な料理
Piazza Elbe 11 Tel:0376 366349 Fax:0376 321924
※読者の中にはイタリア最高の料理を食べてみたと思っている人がいるかもしれないのでマントヴァ郊外のレストランも紹介しよう。
☆Dal Pescatore ミシュランの3ツ星に輝くレストラン、マントヴァの地方料理
Canneto sull’Oglio Tel:0376 723001 Fax:0376 70304 E-mail:santini@dalpescatore.com







著者プロフィール

牧野宣彦(まきののぶひこ)


早大卒。1974年、旅行会社にて日本初のニューイヤー、スカラ座オペラツァーを企画。その後コンピュータ会社を経て、1998年よりイタリアに住み、現在ボローニャ在住。フリーのトラベルライターとして、イタリアの旅行、音楽、グルメ関係の執筆、写真撮影を行う。
著書
「イタリアのべストラン」(透土社):トスカーナとイタリアのベストレストラン、ワイナリーなどを紹介。イタリア料理の人気の秘密をフランス料理と比較して解説。「イタリア歴史的ホテル・レストラン・カフェ」(三修社):イタリア各地の歴史的な面白い場所を203箇所紹介。イタリアで一番面白いガイドブック。「イタリアオペラツァー」(あんず堂):イタリア30都市でのオペラ体験紀行。音楽史跡、劇場、博物館、オペラを聞くために便利なホテル、レストランなど面白い情報を紹介。

 





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