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読み物・エッセイ  イタリア 音楽の旅
 
15 ottobre 2004

第20回 プッチーニがオペラ作曲家を決意した劇場 ピサ

ピサ−トスカーナ州

Pisa−Toscana



牧野 宣彦




斜塔で有名なピサは、人口10万足らずのティレ二ア海に面したトスカーナ州の街だが、古い歴史的遺産が沢山残っている。ピサの起源は古代ローマ時代に遡るといわれ、ローマはピサを北部イタリア、西地中海を支配するのに重要な港町として考えていた。

アルノ川とセルキオ川が合流して海に注ぐ地点に開けたピサは、ジャノヴァの艦隊と共にサルデー二アからアラブ勢力を一掃することに力を尽くした。そして11世紀から12世紀にかけてピサの国力が充実し、文化、芸術の絶頂期に当たり、ドゥオーモや主な教会などの主要な建物が建造された。政治的には皇帝派に属したピサは、海へ進出しようとするフィレンツェ、アペニン山脈の通行権を巡ってルッカ、またサルデー二アの領有権をジェノヴァなどと争い、戦乱に巻き込まれ、14世紀になると国力は次第に衰えて行った。しかし文化の面では残照が輝いていて、この時代にピサ大学が創設され,カンポサントなどが完成し、現在残っている主要な建物がこの時代に揃った。その後ピサは、フィレンツェの支配下に入ったが衰退は食い止められなかった。更に海岸線が後退した為に港は湿地になり、マラリアが発生し、ピサの人口は一時8000人にまで減少し、その後メディチ家のトスカーナ大公が干拓事業などを遂行して街は次第に活気を取り戻して行った。

ピサは有名な天文学者ガリレオ・ガリレイが生まれ、ルネッサンス画人伝の著者ヴァザーリの建築した建物などが残っている。また毎年6月17日にはピサの守護聖人聖ラ二エリの灯火祭Luminaria di S.Ranieriがあり、この日は市の中心を流れるアルノ川が豪華なイルミネーションで飾られる。

●ヴェルディ劇場 Il Teatro Verdi di Pisa
19世紀の初めピサにはテアトロ・ディ・ラヴィヴァーティTeatro dei Rawivatiがあったが、手狭になったので新劇場建設の機運が生まれた。しかしそれが具体化されるのは1864年になってからである。この年、市の新劇場建設促進委員会が設置され、フィレンツェの1652年に開場したテアトロ・ペルゴラTeatro Pergolaをモデルにした劇場の建設が決定した。その後建築家の選定が行われ、当時の著名な建築家テレマコ・ブオナジューティTelemaco Buonajuti、ジュゼッペ・カペリー二Giuseppe Cappelliniなど多くの建築家が候補に上がったが、最終的にカターニアのテアトロ・マッシモ・ベッリー二劇場Teatro Massimo Belliniを建設したアンドレア・スカラAndrea Scalaが計画に参画し、1867年11月12日ロッシーニの「ウィリアム・テル Guglielmo Tell」で開場した。

名作「マダマ・バタフライMadama Butterfly」を作曲したオペラ作曲家のジャコモ・プッチーニGiacomo Pucciniは、1858年ルッカの代々続く音楽家の家に生まれ、ルッカの大聖堂Duomoのオルガ二ストになるべく教育されていたが、彼が18歳の時、ヴェルディの「アイーダAida」がピサの劇場で上演され、プッチーニは約20キロ離れたピサに来て「アイーダ」を見て感激、オペラの作曲家になる事を決意したといわれている。

今シーズンのオペラのスケジュールが発表されているので紹介します。
★プッチーニ作曲「マダマ・バタフライMadama Butterfly」 2004 10/02,03
★ロッシーニ作曲「チェネレントラ Cenerentola」 10/23,24
★ピアノコンチェルト ピアノ:Bruno Canino 指揮:Jonathan Webb
  ロッシーニ、ストラヴィンスキー、レスピーギなどの作品  11/10
★ヘンデル作曲「Acis and Galatea」 12/03,4,5,
★ポンキエッリ作曲「ジョコンダ La Gioconda」2005 2/12,13
★ドメ二コ・チマローザ作曲「秘密の結婚 Il Matrimonio Segreto」3/19,20
★ロックオペラ「Joseph」 4/15,16,17

♪♪チケットオフィス♪♪ Biglietteria del Teatro di Pisa
Via Plestro 40 56127 Pisa
Tel:050 212216
インフォメショーション:Tel:050 941111 Fax:050 941158
http://www.teatrodipisa.pi.it

● ドゥオーモ Duomo
カンポ・ディ・ミラコリCampo dei Miracoli(広場の奇跡)といわれる程ドゥオーモのある広場にはロマネスク様式の美しい建物が集結しているが、その中心をなすのがドゥオーモDuomo。1064年ブスケットBuschetto が着手し、12世紀にラインナルドRainnaldoがファサードを完成した。この大聖堂の建設者ブスケットは古代ローマの建築を模範として建物を造り、墓も古代ローマ風に造られている。
内部にはイタリアゴシックの代表的な彫刻であるジョヴァンニ・ピサーノGiovanni Pisanoが製作した説教壇がある。親廊の中央には通称「ガリレオのランプ」と呼ばれるランプが垂れ下がっている。ロレンツォが設計し、1586年にヴィンチェエンツォ・ポッセンティがブロンズで製作したもので、ピサで生れたガリレオはこのランプの振動を見て振り子の等時性を発見したといわれるが、真実はそれ以前に発見したと考えられている。その他内部には、ソドマ、ベッカーフミ、ジョヴァンニ・アントニオ・ソリアーニ、アンドレア・デル・サルトなどシェナ派の画家たちが描いた宗教画が随所に見られ、壮観である。アンドレア・デル・サルトの「聖アニエゼ」は、レオナルド風の構図の美しい絵画で、この絵を見た英国の詩人ロバート・ブラウニングはこのエピソードを本にして捧げている。また神聖ローマ帝国の皇帝だったハインリッヒ7世の墓があり、これは彫刻家のジョヴァンニ・ピサーノが製作した。他にドメ二コ・ギルランダイオの描いた「2人の天使」などの作品がある。ドゥオーモ博物館がドゥオーモ広場の東端にあり、そこには11世紀から16世紀に製作された彫刻の名品が展示されている。

●洗礼堂 Battistero
1152年にディオティサルヴィDiotisalviによって着工され、その後13世紀にジョヴァンニ・ピサーノなどが建築に参加、14世紀後半チェッリーノ・ディ・ネーゼにより完成した
ロマネスク様式を代表する建造物。正面にはジョヴァンニ・ピサーノ作の「聖母子」の複製の浮き彫りがある。(オリジナルはドゥオーモ博物館に収蔵されている。)イタリアにある洗礼堂は8角形のものが多いが、この洗礼堂はイタリアで唯一の円形洗礼堂でもある。内部には二コラ・ピサーノの製作した「最後の審判」「奉献」「磔刑」などの作品がある。

●カンポ・サント(墓地) Camposanto
1278年にジョヴァンニ・シモーネによって着工された記念墓地で、ピサ出身の著名人や功労者が葬られている。1944年アメリカ軍によって爆撃され、天井に描かれていた貴重なフレスコ画が消失したが、その後殆ど元の通りに修復された。ここは、スウェーデン女王クリスティナ、小説家のテオフィール・ゴーチェなど多くの芸術家に創作のインスピレーションを与えた事で知られる。ハンガリーの作曲家フランツ・リストはピサの無名の画家が描いたフレスコ画「死の勝利」を見て突然インスピレーションが沸き、「死の舞踏Totentanz」を作曲したといわれている。

「死の勝利」 (写真右上)
狩猟をしていた3人の貴公子が帰りに隠者から棺に入った3つの死体を見せられる。棺の死体の中は腐敗し、悪臭を放ち蛇が乗っている自分達の死体だった。場所から覗き込む貴公子たちの驚きの表情、腐臭に鼻をつまむという地獄絵図が描かれている。

●カヴァリエーリ広場 Piazza dei Cavalieri
中世には自由市政の重要な議題を討議する場所だったこの広場はルネッサンスの時代にヴァザーリが改築したカヴァリエーリ教会、カヴァリエーリ館などの建物があり、そこには現在ナポレオンが1810年に創設した高等師範学校が入っている。他にやはりヴァザーリが手直しした建物オロロジオ館Palazzo dell'Orologioがある。この建物の一部はダンテが「神曲、地獄篇」に書いたムーダの塔Torre della Mudaで、他にコッレージョ・デル・プテアーノ館Palazzo del Collegio Puteanoが立っている。


●鐘楼 Campanile
西暦1173年ボナンノ・ピサーノとグリエルモによって建設が始められた有名 なピサの斜塔。この建物は、ピサの軟弱な地盤のために1185年ごろには既 に傾斜が始まったといわれている。現在4.31メートルという異例な傾斜のままの建物は世界に一つしかない。294段ある螺旋階段が塔の上54メートルまで続いている。
この頂上でガリレオが物体を落下させる実験を行い、重量に関係なく、いかなる物体も重力の加速度は同じである事を主張しました。斜塔には美しい菱形模様,アーチなどが見られる。

●サン・マッテオ国立博物館 Museo Nazionale di S.Matteo
サン・マッテオ・ベネディクト会修道院の一部に1949年に開場した国立博物館。ピサを代表する彫刻家アンドレア・ピサーノと二コラ・ピサーノなどピサの彫刻が収められている。他にサンタ・カテリーナ教会の為にシモーネ・マルティーニが描いた多翼祭壇画「聖母子と諸聖人」、マサッチョが描いた「聖パウロ」の絵やニノ・ピサーノ作「マドンナ・デル・ラッテ」(乳の聖母)、ドナテッロ作「聖ルッソリオ」の胸像などの傑作が展示されている。

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★カフェ・ウッセロ Caffe dell'Ussero
14世紀に建設されたピサの大学は名門として知られ、ガリレオ・ガリレイ、ノーベル物理学賞を受賞したエンリコ・フェルミ、無線電信器を発明したマルコーニ、現在ではチャンピ大統領などの俊才を送り出したが、その大学の近くに学生達の溜まり場のカフェがある。内部はピサの大学の有名な卒業生の肖像画が飾られ、14世紀に建設された赤い館(PalazzoAgostino)内にある店は、1794年に創業し、一時映画館などになったが、美味しいジェラート、カフェを味わう事が出来る。英国の詩人ラスキン、イタリア共和国大統領ジョヴァンニ・グロンキなどの著名人が訪れている。
住所:Palazzo Agostini Lungano Pacinotti 27 56100 Pisa Tel:050 581100



ピサデータ

■お薦めホテル
★Jolly Hotel Cavalieri : 駅前にある4ツ星ホテル
Piazza della Stazione 2 56081 Pisa Tel:050 43290 E-mail:pisa@jollyhotels.it

★Royal Victoria Hotel :3ツ星の1837年創業の歴史的ホテル、ディッケンズ、ラスキン、ピランデッロ、アレクサンドル・デューマ、高松宮などが宿泊した。
Lungarno Pacinotti 12 Tel:050 940111 E-mail:mail@royalvictoria.it

★Grand Hotel Duomo :ドゥオーモに近くて便利
Via Santa Maria 94 56126 Pisa Tel:050 561894

★Leonardo :街の中心にある3ツ星ホテル
Via Tavoleria 17 56126 Pisa Tel:050 579946 E-mail:hotelleonardo@csinfo.it

お薦めレストラン
☆Osteria del Porton Rosso :魚介料理が美味しい。市の中心にある。
Via Porton Rosso 11 Tel:050 580566

☆Da Bruno :家庭的なレストラン。トスカーナ、ピサの家庭料理。
Via Bianchi 12 Tel:050 560818

☆Le Clessidra : トスカーナ料理、サント・ステーファノ教会の近く。
Via Santa Cecillia 34 Tel:050 540160

☆Osteria dei Cavalieri : 大学の近くにある大衆的なレストラン。
Via San Frediano 15 Tel:050 580858



著者プロフィール

牧野宣彦(まきののぶひこ)


早大卒。1974年、旅行会社にて日本初のニューイヤー、スカラ座オペラツァーを企画。その後コンピュータ会社を経て、1998年よりイタリアに住み、現在ボローニャ在住。フリーのトラベルライターとして、イタリアの旅行、音楽、グルメ関係の執筆、写真撮影を行う。
著書
「イタリアのべストラン」(透土社):トスカーナとイタリアのベストレストラン、ワイナリーなどを紹介。イタリア料理の人気の秘密をフランス料理と比較して解説。「イタリア歴史的ホテル・レストラン・カフェ」(三修社):イタリア各地の歴史的な面白い場所を203箇所紹介。イタリアで一番面白いガイドブック。「イタリアオペラツァー」(あんず堂):イタリア30都市でのオペラ体験紀行。音楽史跡、劇場、博物館、オペラを聞くために便利なホテル、レストランなど面白い情報を紹介。

☆★講座「イタリア大紀行」のお知らせ☆★
今年のイタリアは去年ほど暑くなかったが、私はヴェローナの音楽祭、ペーザロのロッシーニ音楽祭、トリエステの「オペレッタフェスティバル」などを訪れました。その他、ゲーテにテーマを絞り、旅行して来ました。
ゲーテの書いた「イタリア紀行」は今でも作家の深い洞察力と幅広い知識などが読み取れ、イタリアの紀行文では今尚一番素晴らしい書物だと思います。
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