石畳を敷き詰めたローマの旧市街。散歩に出ると必ずと言ってよいほど新しい発見がある。通い慣れた道に建つ館の最上階にオオカミの彫刻を見つけて驚いたり、屋根を支える柱が、動物の足のようになっていることに気がついたり。一度ローマを訪れると、何度も足を運びたくなると言われるのは、こんな魅力の所以だろうか。
そんなローマも交通量は増す一方で、深刻なスモッグの問題をかかえている。街を歩いていたら、何だか鼻がむずがゆいのでティッシュでぬぐったところ、黒い鼻型ができていた。ローマ市では、空気の清浄化を図り、ナンバープレートを奇数と偶数の番号に分けて、週に一日ずつ、乗れない日を設定した。
そんな市内で、スモッグの心配もなく安心して散歩が楽しめる場所といえば、市内各所に点在する大きな公園のヴィラ。北部に位置するヴィラ・ボルゲーゼVilla Borgheseは、総面積8ヘクタールの公園で、16世紀にボルゲーゼ家の為に作られた。緑豊かな公園内は、中央に大きな池があり、たくさんの水鳥が集まる。
写真トップ:ローマ市内にあるとは思えない広さのボルゲーゼ公園 左下:機関車風バスが園内をめぐっている 右下:中央にある池では貸しボートもある
ある日のこと、犬を連れた人々が、皆、同じ方向へ歩いて行くので後に続くと、大きな広場に出た。犬の遊び場という看板が立ててある。ローマ市内は、犬の放し飼い禁止なので、愛犬家たちは困っているが、ここは、犬の為の場所らしい。様々な種類の犬達が、元気いっぱい駆け回っている。
ふと気づくと、大きな頭が私を見ている。近づいてみたら、なんと秋田犬だった。写真家のご主人、マルコさんに連れられたイサちゃんは、ローマ生まれで4才のメス。両親は、日本の秋田県に暮らすという。日本犬が、ローマのヴィラを庭代わりにしているなんて、なんと嬉しいことか。大人の手のひらをはみ出すほどの大きな松ぼっくりをくわえ、優雅に闊歩していた。
イタリアルネッサンスやバロックの作品が展示されるボルゲーゼ美術館や乗馬競技でも有名なボルゲーゼ公園。歩くのが苦手な人の為に、屋根付きの二人乗り自転車をレンタルしているし、ヴィラ内を走る機関車風のバスもある。木々が作る陰を日よけにして、お昼のパニーノを食べている人、ベンチに腰掛けサッカー談義に興じる人。新鮮な空気の中で、思い思いの時を過ごしていた。
写真左下:ポポロ広場
右下:アウグストス広場のレストラン
ボルゲーゼ公園は、周囲に幾つもの入り口があるが、アクセスに便利なのは、地下鉄A線のフラミニオFlaminio駅。大きなオベリスクと双子教会がシンボルのポポロ広場Piazza del Popoloのポポロ門を出ると左手に地下鉄の入り口がある。
公園散歩に飽きて、何所かでお昼をと思う時には、ポポロ広場からリペッタ通りVia di Ripettaに出て、アウグストス広場Piazza Augusto Imperatoreまで足を延ばす。ランチを食べさせるレストランが幾つもあるのでとても便利。たっぷり散歩して、乾いた喉に冷たいワインが心地よく流れていった。

■ボルゲーゼ公園までのアクセス
本文中にあるように、地下鉄A線のフラミニオ駅が便利です。ピンチョの丘Monte Pincioからボルゲーゼ公園へと入ります。
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